賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第34話 上級の壁

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 翌朝。

 空はよく晴れており、
 春の風が穏やかに吹いていた。

 ルーク、リリア、ミアの三人は、
 村から少し離れた場所へと向かっていた。

 そこは、開けた平原だった。
 周囲に人家はなく、
 多少の衝撃や爆音があっても問題にならない。

「……ここなら、だいじょうぶ」

 ルークは、周囲を見渡してそう言った。

 ミアは、緊張した面持ちでごくりと喉を鳴らす。

「……いよいよ、上級魔法だね」

「ええ」

 リリアは頷き、
 少し離れた位置から二人を見守る。

「何かあったら、すぐ止めるわ」

 その言葉に、
 ミアは少し安心したように肩の力を抜いた。



「……まずは、ぼくがやる」

 ルークは一歩前に出た。

 小さな身体だが、
 立ち姿には迷いがない。

 まず、詠唱。

 静かな声で、
 正確に、淀みなく。

 魔力が集まり、
 空気が震える。

「――上級魔法
 《エクスプロージョン》」

 次の瞬間。

 指定した地点で、
 凄まじい爆発が起きた。

 地面が抉れ、
 衝撃波が周囲に広がる。

 ミアは思わず目を見開いた。

「……すご……」

 リリアも、内心で息を呑む。

(詠唱付きで、これ……)

 だが、ルークはそこで終わらなかった。

 同じ位置に向けて、
 今度は詠唱を省く。

 ――無詠唱。

 一切の言葉なく、
 ただ魔力を解き放つ。

 次の瞬間。

 先ほどと、
 まったく同じ規模の爆発が起きた。

 威力も、精度も、
 詠唱付きと変わらない。

「……かわらない、でしょ」

 ルークは、淡々と言った。

 ミアは、思わず拳を握る。

(……あれを、わたしが)



「……じゃあ、つぎ」

 ルークはミアを振り返った。

「まずは……えいしょう、つき」

「うん……!」

 ミアは深く息を吸い、
 集中する。

 中級までなら、
 何度も成功してきた。

(大丈夫……)

 詠唱を始める。

 だが――。

 魔力は集まったものの、
 最後まで形にならず。

 不発。

 何も起きなかった。

「……え?」

 ミアは目を瞬かせる。

「……なんで……」

 肩が、わずかに震えた。

 ルークは、すぐに状況を見極める。

「……まりょく、たりない」

「もっと、だして、いい」

「……こわく、ない?」

「……だいじょうぶ」

 ミアは、唇を噛みしめ――
 頷いた。

 再び魔力を巡らせる。

 今度は、
 先ほどよりも多く。

 身体の奥から、
 一気に引き出す。

「――っ!」

 放たれた魔法は――
 発動した。

 だが。

 狙った地点から、
 大きく逸れた方向へ。

 次の瞬間。

 轟音と共に、大爆発。

 地面が砕け、
 無数の石片が空を舞った。

「……っ!」

 ルークは即座に動いた。

「――しょうへき!」

 瞬時に展開された障壁が、
 三人を包み込む。

 石が、
 雨のように降り注ぐ。

 だが、
 すべて弾かれた。

 数秒後、
 爆風が収まり、静寂が戻る。

「……だいじょうぶ?」

 ルークが振り返る。

 ミアは、
 青ざめた顔で頷いた。

「……うん……」

 だが、
 声が震えている。



 その後も、何度か試した。

 だが――
 出力が足りなかったり、
 逆に多すぎたり。

 狙いが定まらず、
 成功には至らない。

 最後には、
 ミアの目に涙が浮かんでいた。

「……やっぱり……」

「……むずかしい……」

 俯くミアの頭に、
 ルークはそっと手を置いた。

「……だいじょうぶ」

 優しい声。

「……きょう、はじめて」

「できなくて、あたりまえ」

 ミアは、
 目をこすりながら顔を上げる。

「……ほんと?」

「……ほんと」

 ルークは、はっきりと頷いた。

「……あせらなくて、いい」

「じかん、かけよう」

 リリアも、一歩近づいた。

「そうね」

 穏やかに、微笑む。

「ミアなら、できるわ」

「今日できなかったからって、
 何も変わらない」

 その言葉に、
 ミアの胸が少しだけ軽くなる。

「……うん」

 涙を拭い、
 小さく頷いた。



 上級魔法は、
 確かに高い壁だった。

 だが――
 越えられない壁ではない。

 ルークは、
 ミアの背中を見ながら思う。

(……ちゃんと、のぼれる)

(……ゆっくり、で、いい)

 空には、
 変わらず穏やかな青が広がっていた。

 その下で、
 また一つ、確かな一歩が刻まれていた。
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