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第32話 届いた手紙、繋がる想い
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ある日の昼下がり。
ハルネ村は、いつもと変わらない穏やかな空気に包まれていた。
ルークとミアは、村外れの訓練場で魔法の基礎訓練を終え、
今は木陰で休憩していた。
「……ふぅ」
ミアが額の汗を拭いながら、地面に座り込む。
「今日も結構やったね」
「……うん」
ルークは短く答えながら、水筒を差し出した。
その時だった。
村の入り口の方から、
慌ただしい足音が聞こえてくる。
「ルークー! ミアー!」
声の主は、リリアだった。
手に、一通の封筒を持っている。
「……なに?」
ルークが立ち上がると、
リリアは少し息を整えながら言った。
「手紙よ」
「王都から」
その瞬間、
ミアの目が大きく開かれた。
「えっ……!」
「もしかして……!」
リリアは、にっこりと笑う。
「ええ」
「セシリアからよ」
*
家に戻り、
三人はテーブルを囲んだ。
ルークは、リリアから手紙を受け取る。
少しだけ、
封を切る手が慎重になる。
中から現れたのは、
丁寧な文字で書かれた便箋だった。
――セシリアの字だ。
ルークは、ゆっくりと読み上げる。
「……えっと」
少し拙いながらも、
一語一語を確かめるように。
「『ルークへ』」
ミアは、身を乗り出す。
「『無事に、王立魔法学園に合格しました』」
「……やっぱり!」
ミアが思わず声を上げる。
リリアも、ほっと息を吐いた。
「……よかった」
ルークは、続きを読む。
「『試験は、正直とても緊張しました』」
「『でも、ルークに教えてもらったことを思い出して』」
「『その通りにやったら、ちゃんと通じました』」
ミアは、ルークを見る。
「……ルークの教え、王都でも通用したんだね」
「……うん」
ルークは、少し照れたように視線を逸らす。
手紙は、続く。
「『それから……』」
「『少し、驚くことがありました』」
リリアが、静かに続きを促す。
ルークは、文字を追った。
「『合格発表のあと、学園長に呼ばれました』」
その一文に、
部屋の空気が、少し引き締まる。
「『学園長は、私が書いた答案と、無詠唱魔法に興味を持ったみたいです』」
「『いろいろ聞かれて、正直に答えました』」
ミアが、目を丸くする。
「……正直に?」
「『正直に』って書いてあるよ」
ルークは、そのまま読み進める。
「『ルークのことも、話しました』」
ルークの指が、わずかに止まる。
「『学園長は、とても驚いていました』」
「『そして……』」
ごくり、と喉を鳴らす音。
「『ルークに、一度会ってみたいと言っていました』」
ミアが、思わず声を上げる。
「ええっ!?」
リリアも、驚いたように眉を上げる。
ルークは、少し考えるように黙り込んだ。
手紙には、こう続いていた。
「『でも、私は断りました』」
「『ルークはまだ五歳だし、無理に呼ぶ必要はないって』」
「『十歳になったら学園に来るからいいよって伝えました』」
リリアは、ゆっくりと頷く。
「……セシリアらしいわね」
ミアも、少し安心したように息を吐いた。
「うん……」
ルークは、また読み進める。
「『だから今は、私が頑張ります』」
「『ルークが来た時に、ちゃんとお姉ちゃんでいられるように』」
「『約束、忘れてません』」
最後の一文。
「『ルークも、無理しすぎないで』」
「『また、手紙を書きます』」
「『セシリアより』」
*
手紙を読み終え、
しばらくの間、誰も言葉を発さなかった。
最初に口を開いたのは、ミアだった。
「……リアねぇ、ちゃんとやってるんだね」
「……うん」
ルークは、静かに頷く。
リリアは、ルークの頭にそっと手を置いた。
「学園長が興味を持つほど、
あなたの教えは、特別だったってことね」
「……でも」
ルークは、小さく首を振る。
「……いまは、まだ」
「……その通りよ」
リリアは、優しく微笑んだ。
「焦る必要はないわ」
「今は、ここでやるべきことをやりましょう」
*
その夜。
ルークは、自分の部屋で、
もう一度、手紙を読み返していた。
(……がんばる、って)
(……やくそく、まもってる)
胸の奥が、少し温かくなる。
窓の外には、星空。
(……ぼくも)
(……ちゃんと、まつ)
学園長が自分に興味を持っていること。
それは、少しだけ不思議で、少しだけ遠い話だった。
今は――
目の前のことを、積み重ねるだけだ。
ルークは、手紙を大切に畳み、
枕元に置いた。
離れていても、
想いは、確かにつながっている。
それを感じながら、
静かに目を閉じた。
ハルネ村は、いつもと変わらない穏やかな空気に包まれていた。
ルークとミアは、村外れの訓練場で魔法の基礎訓練を終え、
今は木陰で休憩していた。
「……ふぅ」
ミアが額の汗を拭いながら、地面に座り込む。
「今日も結構やったね」
「……うん」
ルークは短く答えながら、水筒を差し出した。
その時だった。
村の入り口の方から、
慌ただしい足音が聞こえてくる。
「ルークー! ミアー!」
声の主は、リリアだった。
手に、一通の封筒を持っている。
「……なに?」
ルークが立ち上がると、
リリアは少し息を整えながら言った。
「手紙よ」
「王都から」
その瞬間、
ミアの目が大きく開かれた。
「えっ……!」
「もしかして……!」
リリアは、にっこりと笑う。
「ええ」
「セシリアからよ」
*
家に戻り、
三人はテーブルを囲んだ。
ルークは、リリアから手紙を受け取る。
少しだけ、
封を切る手が慎重になる。
中から現れたのは、
丁寧な文字で書かれた便箋だった。
――セシリアの字だ。
ルークは、ゆっくりと読み上げる。
「……えっと」
少し拙いながらも、
一語一語を確かめるように。
「『ルークへ』」
ミアは、身を乗り出す。
「『無事に、王立魔法学園に合格しました』」
「……やっぱり!」
ミアが思わず声を上げる。
リリアも、ほっと息を吐いた。
「……よかった」
ルークは、続きを読む。
「『試験は、正直とても緊張しました』」
「『でも、ルークに教えてもらったことを思い出して』」
「『その通りにやったら、ちゃんと通じました』」
ミアは、ルークを見る。
「……ルークの教え、王都でも通用したんだね」
「……うん」
ルークは、少し照れたように視線を逸らす。
手紙は、続く。
「『それから……』」
「『少し、驚くことがありました』」
リリアが、静かに続きを促す。
ルークは、文字を追った。
「『合格発表のあと、学園長に呼ばれました』」
その一文に、
部屋の空気が、少し引き締まる。
「『学園長は、私が書いた答案と、無詠唱魔法に興味を持ったみたいです』」
「『いろいろ聞かれて、正直に答えました』」
ミアが、目を丸くする。
「……正直に?」
「『正直に』って書いてあるよ」
ルークは、そのまま読み進める。
「『ルークのことも、話しました』」
ルークの指が、わずかに止まる。
「『学園長は、とても驚いていました』」
「『そして……』」
ごくり、と喉を鳴らす音。
「『ルークに、一度会ってみたいと言っていました』」
ミアが、思わず声を上げる。
「ええっ!?」
リリアも、驚いたように眉を上げる。
ルークは、少し考えるように黙り込んだ。
手紙には、こう続いていた。
「『でも、私は断りました』」
「『ルークはまだ五歳だし、無理に呼ぶ必要はないって』」
「『十歳になったら学園に来るからいいよって伝えました』」
リリアは、ゆっくりと頷く。
「……セシリアらしいわね」
ミアも、少し安心したように息を吐いた。
「うん……」
ルークは、また読み進める。
「『だから今は、私が頑張ります』」
「『ルークが来た時に、ちゃんとお姉ちゃんでいられるように』」
「『約束、忘れてません』」
最後の一文。
「『ルークも、無理しすぎないで』」
「『また、手紙を書きます』」
「『セシリアより』」
*
手紙を読み終え、
しばらくの間、誰も言葉を発さなかった。
最初に口を開いたのは、ミアだった。
「……リアねぇ、ちゃんとやってるんだね」
「……うん」
ルークは、静かに頷く。
リリアは、ルークの頭にそっと手を置いた。
「学園長が興味を持つほど、
あなたの教えは、特別だったってことね」
「……でも」
ルークは、小さく首を振る。
「……いまは、まだ」
「……その通りよ」
リリアは、優しく微笑んだ。
「焦る必要はないわ」
「今は、ここでやるべきことをやりましょう」
*
その夜。
ルークは、自分の部屋で、
もう一度、手紙を読み返していた。
(……がんばる、って)
(……やくそく、まもってる)
胸の奥が、少し温かくなる。
窓の外には、星空。
(……ぼくも)
(……ちゃんと、まつ)
学園長が自分に興味を持っていること。
それは、少しだけ不思議で、少しだけ遠い話だった。
今は――
目の前のことを、積み重ねるだけだ。
ルークは、手紙を大切に畳み、
枕元に置いた。
離れていても、
想いは、確かにつながっている。
それを感じながら、
静かに目を閉じた。
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