賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第41話 変わらない距離、変わった立場

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 セシリアは、くすっと笑った。

「立ち話もなんだし、
 どこかで話そうか?」

 ルークは少し考え、

「……一階の食堂で......」

 そう言いかけたところで、
 セシリアが首を傾げる。

「え? ルークの部屋でいいじゃない」

「……え、いや……でも……」

 歯切れの悪い返事。

 セシリアは、じっとルークを見つめた。

「……なに?」

「私に見られたくないものでも、あるの?」

「いや、そんなことは……」

 言葉を濁すルークに、
 セシリアはにこりと笑う。

「じゃあ、決まりね」

「部屋で話しましょ」

「……わかった」

 観念したように頷き、
 三人は部屋へ向かった。



 扉を開けた瞬間、
 セシリアは部屋の中を見回した。

 そして――
 すぐに、違和感に気づく。

「……あれ?」

「なんで、ミアの荷物がここにあるの?」

「自分の部屋に置けばいいじゃん」

 ルークは、額にじわりと汗を滲ませる。

「……えっと……」

 セシリアは、にっこりと微笑んだまま、
 核心を突く。

「まさか……一緒の部屋?」

「……そんなわけ、ないよね?」

「……そうだよね」

 ルークは、必死に頷いた。

「じゃあ、ミアの部屋はどこ?」

「……えっと……どこだったかな……?」

 誤魔化すように視線を逸らす。

 その瞬間、
 セシリアはミアを見る。

 ミアは、ぷいっと目を逸らした。

「……はぁ」

 セシリアは、大きくため息を吐いた。

「やっぱり、一緒の部屋だったのね」

「……ごめん」

 ルークが、素直に頭を下げる。

 セシリアは、少しむくれた。

 すると、ミアが慌てて前に出る。

「ち、違うの!」

「私が、ルークと一緒の部屋がいいって言ったの!」

「一人じゃ、ちょっと怖かったし……」

 セシリアは、ミアを見てから、
 ルークを見る。

「はぁ……そういうことなら」

「ちゃんと、そう言えばいいのに」

 そして、肩をすくめた。

「……まぁ、いいわ」

 そう言って、柔らかく微笑む。

「二人とも――
 合格、おめでとう」

「ありがとう」

「……ありがとう、ございます」

 ミアも、ぺこりと頭を下げた。



「それで?」

 セシリアは、すぐに話題を切り替える。

「学園長に呼ばれたんでしょ?」

「何の話だったの?」

 ルークは、頷いた。

「……無詠唱魔法の、研究を」

「作って欲しいって」

 その言葉に、
 セシリアの目が、ぱっと輝く。

「すごいじゃない!」

「研究を作れるのは、
 成績優秀者だけよ?」

「……へぇ」

「それで、顧問は?」

「……アイン先生」

「……あぁ、あれか」

 あっさりした反応。

「……あれって?」

 ルークが首を傾げる。

「だってさ」

「無詠唱、教えろ教えろって
 うるさいんだもん」

「ルークに教えてもらったものだし」

「勝手に人に教れないでしょ?」

 そして、胸を張る。

「教えるなら、
 ルークの方が、絶対いいもん」

「……そっか」

 ルークは、少し照れながら言った。

「……ありがとう」



 ふと、ルークは思い出した。

「……そういえば」

「さっき……」

「……会長って、呼ばれてた」

「なんの、会長?」

 セシリアは、一瞬きょとんとし――
 次の瞬間、誇らしげに笑った。

「私?」

「学園の――
 生徒会長」

「……え」

「……ええ!?」

 ルークとミアは、揃って驚く。

 セシリアは、嬉しそうに胸を張った。

「頑張ったんだから」

「……すごいね」

「頑張ったんだね」

「約束だったからね」

 セシリアは、少しだけ照れながら言う。

「……ルークに」

「強くなるって」



 少し間を置いて、
 セシリアは小さな声で言った。

「……ねぇ、ルーク」

「……ぎゅって、してほしい」

 ルークは、迷わず一歩近づき、
 セシリアを抱き寄せる。

 ぎゅっ。

 セシリアも、腕を回した。

「……ありがとう」

 そう言って、そっと離れる。



「……ねぇ」

「私も、その研究に入っていい?」

 ルークは少し考え、

「……分からないけど」

「……アイン先生に、聞いてみる」

「……でも」

「生徒会長もあるし大変じゃない?」

 セシリアは、胸を張る。

「大丈夫!」



 三人は、それぞれの成果を話し始めた。

「……わたし」

「上級と、合成魔法、できるようになったよ」

「ミアも、頑張ったね」

「……お姉ちゃんは?」

「上級は問題ないわ」

「合成は……少しだけ」

「詠唱もないし、
 イメージだけじゃ難しくて」

「……じゃあ」

「……今度一緒にやろ」

「……うん!」

 嬉しそうに頷くセシリア。



 その時――

 ――コンコン。

 ノックの音が響いた。

 扉を開けると、
 そこにはエミリが立っていた。

「……こんなところまで?」

 セシリアが言う。

「会長が会議を抜け出すからです」

 冷静な返答。

「だって……」

「ルークと話したかったんだもん……」

 口を尖らせるセシリア。

「議題はほぼ終わりました」

「後は、会長の仕事です」

 エミリは、手を取る。

「行きますよ」

「……またね!」

「入学式で会おう!」

 そう言い残し、
 セシリアは引きずられていった。

 扉が閉まる。



 静かになった部屋で、
 ルークとミアは顔を見合わせた。

「……大変そうだね」

「……でも」

 二人は、同時に小さく笑った。

 変わらない距離。
 変わった立場。

 それでも、
 また一緒に歩いていける。

 そんな確信が、
 静かに胸に残っていた。
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