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第一章 死んでないが死にかけた
第14話 後悔先に立たず!?
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陽が西に傾く頃、診療所は当日の業務を終え片付けが始まっていた。
オレはその頃になってようやく眠りから目覚め、レティと共に診療所の別フロアにある応接間に通されていた。
「それじゃあ包み隠さず、すべて話してもらいますよ」
先生の表情は至って真剣だった。
隠すのは返って良心が咎めるというもの、オレとレティは顔を見合わせる。
レティから話す必要はない、レティはオレの勝手な都合に突き合わせた結果、巻き込まれたようなものだ。
「レティさん、オレから話させてください」
レティはしばしの間ためらっていたが賛同するように頷いた。
オレはそれを確認すると聖堂に行ったこと、その途中で起きたことを説明した。
終始サイラス先生は難しい顔で、事の経緯を説明しながらもオレは段々メンタルゲージを削られていき、最終的にはほぼ小声だった。
説明している内に、徐々に頭が冷えてきて、自分がやらかした事の重大さに気付いたからだ。
「……というわけです」
恐ろしくてサイラス先生の顔が見られない。
バベルデュラーに行くことを決めたのはレティの意志ではある。
けれどその決断をさせることになったのは、オレに付いてきたせいだ。
彼女を危険に巻き込んだ事を、サイラス先生はけして許してくれないだろう。
「申し訳ありませんでした!!」
オレは床に座ると頭を地面に擦り付けた。
安易に聖堂に行けば何とかなるなんて、馬鹿な行動を取ったせいだ。
「ワイトが彷徨くような危険な場所に行かせる羽目になってしまい、お詫びのしようもありません!!」
(ああ、クソ!! オレは大バカ野郎だ!! まだゲーム感覚が抜けてなかったけど今のオレにとってはこれは現実なんだ!! ここではNPCなんかじゃなくて、意思を持った人達が存在してるんだ!! ゲームとは違うんだよ!!)
目の前に自分がいたなら、思い切り殴っただろう。
心の中で自分を何度も罵倒していた時だった。
「あの……何か勘違いしているようですが、レティのレベルであればバベルテュラーにいるモンスターくらい瞬殺ですよ」
シュンサツ……言葉の意味を即時に脳内で変換できず、オレは顔を上げて固まった。
(シュンサツ……瞬撮……? いや、違うな。瞬殺か……)
なるほど、瞬殺できる程の腕前なのか。
それは相当に戦闘経験を積んで……。
「……はッ!? いやいやいやワイトってそこその中級クラスのモンスターですよね!? それでこそレベルで言うと70くらいの……!! それが瞬殺ってどんな経験積んできたんですか!?」
各種スキルは実践あってこそ伸びていくものだ。
さらに伸びれば伸びるほど、より難しいことにチャレンジしなければ停滞する仕組みになっている。
「それこそ血の滲むような努力です。君も街に出て聖堂に共に行ったのならもう知ったのでしょう。彼女が聖女候補であることを。詳しい事情は話せませんが、彼女は私の元で診療の手伝いをしています。その合間にたった一人で己の能力を磨いていたんです。大怪我を負って帰ってきた事も一度や二度ではありません」
(あ……)
なる程、とようやく納得がいく。
あんなモンスターが彷徨くような場所で奇跡的に出会えたのは、そういう理由があったのだ。
聖女としての務めを完全に放棄したわけではなく、そこには様々な葛藤があったんじゃなかろうか。
オレはレティの浮かない横顔を見ながらそう感じた。
「それにしても驚いたのは君の行動ですよ。その識別符を付けた人達は当然ながら衆目を浴びることになります。それを外そうとは考えなかったんですか?」
「……外すと、きっと悪い結果に繋がるんでしょう?」
サイラス先生はこれを渡した時に何も言わなかった。
外してはいけないとも、外して良いとも。
その不自然さにオレは彼からの何らかの意図を感じた。
「その通りです。その首輪は個人を特定できる者となっていて、魔力喪失病の方達にのみ、厄介な仕掛けが施されています。一度外してしまうと二度と装着できない上に、私達からの支援も受け付けられなくなってしまいます」
「そんな……私達って……何でですか?」
サイラス先生ですらこの識別符を外した人達を見捨てるというのか。
じゃあオレが何の考えも無しにこれを外していたらどうなっていたことだろう。
想像すらしなかった事実にオレは戦慄した。
「助けられない理由。それは──」
オレはその頃になってようやく眠りから目覚め、レティと共に診療所の別フロアにある応接間に通されていた。
「それじゃあ包み隠さず、すべて話してもらいますよ」
先生の表情は至って真剣だった。
隠すのは返って良心が咎めるというもの、オレとレティは顔を見合わせる。
レティから話す必要はない、レティはオレの勝手な都合に突き合わせた結果、巻き込まれたようなものだ。
「レティさん、オレから話させてください」
レティはしばしの間ためらっていたが賛同するように頷いた。
オレはそれを確認すると聖堂に行ったこと、その途中で起きたことを説明した。
終始サイラス先生は難しい顔で、事の経緯を説明しながらもオレは段々メンタルゲージを削られていき、最終的にはほぼ小声だった。
説明している内に、徐々に頭が冷えてきて、自分がやらかした事の重大さに気付いたからだ。
「……というわけです」
恐ろしくてサイラス先生の顔が見られない。
バベルデュラーに行くことを決めたのはレティの意志ではある。
けれどその決断をさせることになったのは、オレに付いてきたせいだ。
彼女を危険に巻き込んだ事を、サイラス先生はけして許してくれないだろう。
「申し訳ありませんでした!!」
オレは床に座ると頭を地面に擦り付けた。
安易に聖堂に行けば何とかなるなんて、馬鹿な行動を取ったせいだ。
「ワイトが彷徨くような危険な場所に行かせる羽目になってしまい、お詫びのしようもありません!!」
(ああ、クソ!! オレは大バカ野郎だ!! まだゲーム感覚が抜けてなかったけど今のオレにとってはこれは現実なんだ!! ここではNPCなんかじゃなくて、意思を持った人達が存在してるんだ!! ゲームとは違うんだよ!!)
目の前に自分がいたなら、思い切り殴っただろう。
心の中で自分を何度も罵倒していた時だった。
「あの……何か勘違いしているようですが、レティのレベルであればバベルテュラーにいるモンスターくらい瞬殺ですよ」
シュンサツ……言葉の意味を即時に脳内で変換できず、オレは顔を上げて固まった。
(シュンサツ……瞬撮……? いや、違うな。瞬殺か……)
なるほど、瞬殺できる程の腕前なのか。
それは相当に戦闘経験を積んで……。
「……はッ!? いやいやいやワイトってそこその中級クラスのモンスターですよね!? それでこそレベルで言うと70くらいの……!! それが瞬殺ってどんな経験積んできたんですか!?」
各種スキルは実践あってこそ伸びていくものだ。
さらに伸びれば伸びるほど、より難しいことにチャレンジしなければ停滞する仕組みになっている。
「それこそ血の滲むような努力です。君も街に出て聖堂に共に行ったのならもう知ったのでしょう。彼女が聖女候補であることを。詳しい事情は話せませんが、彼女は私の元で診療の手伝いをしています。その合間にたった一人で己の能力を磨いていたんです。大怪我を負って帰ってきた事も一度や二度ではありません」
(あ……)
なる程、とようやく納得がいく。
あんなモンスターが彷徨くような場所で奇跡的に出会えたのは、そういう理由があったのだ。
聖女としての務めを完全に放棄したわけではなく、そこには様々な葛藤があったんじゃなかろうか。
オレはレティの浮かない横顔を見ながらそう感じた。
「それにしても驚いたのは君の行動ですよ。その識別符を付けた人達は当然ながら衆目を浴びることになります。それを外そうとは考えなかったんですか?」
「……外すと、きっと悪い結果に繋がるんでしょう?」
サイラス先生はこれを渡した時に何も言わなかった。
外してはいけないとも、外して良いとも。
その不自然さにオレは彼からの何らかの意図を感じた。
「その通りです。その首輪は個人を特定できる者となっていて、魔力喪失病の方達にのみ、厄介な仕掛けが施されています。一度外してしまうと二度と装着できない上に、私達からの支援も受け付けられなくなってしまいます」
「そんな……私達って……何でですか?」
サイラス先生ですらこの識別符を外した人達を見捨てるというのか。
じゃあオレが何の考えも無しにこれを外していたらどうなっていたことだろう。
想像すらしなかった事実にオレは戦慄した。
「助けられない理由。それは──」
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