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第一章 死んでないが死にかけた
第16話 試練への準備を始めよう
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バベルテュラーは恐らく一日での往復は難しい。
最低二日を要する、ということは明日には明後日には出れるように支度を進めなければいけない。
「バベルデュラーに行く、私の診療所で働いている治癒師を一人付れていくといいでしょう。その子に君が必要な薬も預けておきます」
「ありがとうございます」
「それから冒険者ギルドに寄って、道中に片付けられそうな任務を幾つか引き受けていくと良いでしょう。そうすれば後で報酬が貰えますし」
そうか、元の世界の感覚が抜けないせいで頭に無かったけど、確かにそうすれば一石二鳥だ。
「もう一つ。あそこは人が寄り付かなくなって、どうなっているか分かりません。もしかすると魔法を無効化するようなモンスターもいるかもしれないので、念のため冒険者に同行してもらえば安心かもしれません」
「そうですね。夕方になってそろそろ戻ってる人が増えてるかもだし、ちょっと行ってきます」
今から冒険者ギルドに行くのか。
さっきみたいにレティに嫌な思いをさせてしまうだろうから、オレはここに残っていた方がいいだろう。
何をしておくべきか考えていると、レティがオレの手を引いて歩き始めた。
(えっ、オレを連れて行くの、マジで?)
それは大丈夫なんだろうか。
あんな冒険者の憩いの場(酒場と繋がってる)とこに、オレみたいな厄介なのを連れて行ったら交渉決裂したりするんじゃなかろうか。
「もう暗くなり始めてるからほとんどの人は家に戻ってるよ。それにギルドで一緒に行ってくれる人を探して、君を紹介しなきゃでしょ?」
「あー……その、オレ、また声に出てました?」
「ううん。でも困った顔してるからそうかなって」
その通りだよ、レティの足手まといになりなくないんだ。
でもそんな思いは、最初からレティにはなかった。
彼女はそんなことを考える人じゃないからだ。
「お願いします」
オレはレティの意志を汲み取ってうなずく。
前作とは違う形で踏み入れる冒険者ギルド。
愉快で豪快で腕っぷしの強い戦士や、魔法使い、錬金術師、色んな職業の冒険者に会える場所は、今のオレを受け入れてくれるのだろうか。
不安や興奮で心臓はバクバクだ。
サイラス先生に見送られながら、オレ達は診療所を後にした。
「うわあ……」
外に出たオレが感嘆の声を漏らしたのも無理はないだろう。
オレンジからバイオレットへと変わる空のグラデーションの美しさ。
幻想的でいつまでも眺めていたくなる。
確かこういうのはマジックアワーと呼ばれる現象だ。
「綺麗だね。いつもは夕飯の手伝いをしてるから見れないんだけど、君がいるおかげでこんな素敵な空を見ることができたよ」
レティはお世辞とかではなく、本心から語ってくれているのだろうけども、さっきからオレの心の琴線に刺さりまくりだ。
本当に泣くぞ、いいのか。
「オレも、こんな素敵な空をレティさんと見れて良かったです。一生の思い出にします」
この世界で初めて誰かと見た夕暮れはとんでもなく綺麗で、そして特別な思い出となった。
「えー、何だか照れちゃうな」
えへへ、とレティが頬を染めて笑う。
綺麗なブロンドの髪が風に揺れて、淡い光に染まっている。
その景色も微笑むレティも現実のものと思えないくらい美しかった。
(もったいない……!!)
本来ならすかさずスクリーンショットを撮っているところだ。
ゲームでは色んな場所や人のスクリーンショットを撮るの醍醐味の一つだ。
せめてデジカメとかスマホがあれば写真を撮らせてもらったのに。
この美しい光景がこの一時しか見れないなんて実に残念で仕方なかった。
歩いているうちにも日はどんどん沈み、少し離れた冒険者ギルドに辿り着く頃には完全に夜になっていた。
ギルドはとても大きく、コテージのような外観だった。
扉を開けると賑わいが外にまで漏れ出してくる。
部屋は二つに仕切られており、サルーンドアの向こうからは笑い声と食事、酒の匂いが漂ってくる。
どうやら向こうには酒場が用意されているようだ。
レティが冒険者ギルドの受付に向かうと、受付にいた男女がはつらつとした表情で出迎える。
「こんばんは、レティさん!」
「こんな夜遅くに来るなんて珍しいじゃないか、どうかしたのか?」
女性の方は20代くらいで、栗色の髪をポニーテールに結っており、褐色の肌とトパーズのような黄金色の瞳が特徴的で、耳は尖っている。
身体にフィットするノースリーブのワンピースを着用していて、エキゾチックな雰囲気をまとっている。
どうやら女性の方はダークエルフのようだ。
そしてもう一人の男性はモサモサの某野獣のような髪型と頭に犬のような耳が生えていて、体格も良くて背も大きい。
けれどけして威圧感はなく、柔和な笑顔を浮かべていて親しみやすそうな雰囲気だ。
民族的な衣装と幾つもの木彫りの腕輪を嵌めている。
こちらはおそらく人狼ではなかろうか。
「あの、明日ちょっとバベルデュラーに行こうと思っててその道行で消化できそうな依頼を受けたいんです。あと念のため、物理攻撃が得意な剣士の方に同行してほしいかなって」
「分かりました。ちょっと確認しますね」
受付の女性が手をかざすと、どこからともなく依頼が書かれていると思われる紙が現れ、渦を描くように宙を舞う。
ゲームで見た光景に感動し、オレは口を開けたままその光景を見上げた。
最低二日を要する、ということは明日には明後日には出れるように支度を進めなければいけない。
「バベルデュラーに行く、私の診療所で働いている治癒師を一人付れていくといいでしょう。その子に君が必要な薬も預けておきます」
「ありがとうございます」
「それから冒険者ギルドに寄って、道中に片付けられそうな任務を幾つか引き受けていくと良いでしょう。そうすれば後で報酬が貰えますし」
そうか、元の世界の感覚が抜けないせいで頭に無かったけど、確かにそうすれば一石二鳥だ。
「もう一つ。あそこは人が寄り付かなくなって、どうなっているか分かりません。もしかすると魔法を無効化するようなモンスターもいるかもしれないので、念のため冒険者に同行してもらえば安心かもしれません」
「そうですね。夕方になってそろそろ戻ってる人が増えてるかもだし、ちょっと行ってきます」
今から冒険者ギルドに行くのか。
さっきみたいにレティに嫌な思いをさせてしまうだろうから、オレはここに残っていた方がいいだろう。
何をしておくべきか考えていると、レティがオレの手を引いて歩き始めた。
(えっ、オレを連れて行くの、マジで?)
それは大丈夫なんだろうか。
あんな冒険者の憩いの場(酒場と繋がってる)とこに、オレみたいな厄介なのを連れて行ったら交渉決裂したりするんじゃなかろうか。
「もう暗くなり始めてるからほとんどの人は家に戻ってるよ。それにギルドで一緒に行ってくれる人を探して、君を紹介しなきゃでしょ?」
「あー……その、オレ、また声に出てました?」
「ううん。でも困った顔してるからそうかなって」
その通りだよ、レティの足手まといになりなくないんだ。
でもそんな思いは、最初からレティにはなかった。
彼女はそんなことを考える人じゃないからだ。
「お願いします」
オレはレティの意志を汲み取ってうなずく。
前作とは違う形で踏み入れる冒険者ギルド。
愉快で豪快で腕っぷしの強い戦士や、魔法使い、錬金術師、色んな職業の冒険者に会える場所は、今のオレを受け入れてくれるのだろうか。
不安や興奮で心臓はバクバクだ。
サイラス先生に見送られながら、オレ達は診療所を後にした。
「うわあ……」
外に出たオレが感嘆の声を漏らしたのも無理はないだろう。
オレンジからバイオレットへと変わる空のグラデーションの美しさ。
幻想的でいつまでも眺めていたくなる。
確かこういうのはマジックアワーと呼ばれる現象だ。
「綺麗だね。いつもは夕飯の手伝いをしてるから見れないんだけど、君がいるおかげでこんな素敵な空を見ることができたよ」
レティはお世辞とかではなく、本心から語ってくれているのだろうけども、さっきからオレの心の琴線に刺さりまくりだ。
本当に泣くぞ、いいのか。
「オレも、こんな素敵な空をレティさんと見れて良かったです。一生の思い出にします」
この世界で初めて誰かと見た夕暮れはとんでもなく綺麗で、そして特別な思い出となった。
「えー、何だか照れちゃうな」
えへへ、とレティが頬を染めて笑う。
綺麗なブロンドの髪が風に揺れて、淡い光に染まっている。
その景色も微笑むレティも現実のものと思えないくらい美しかった。
(もったいない……!!)
本来ならすかさずスクリーンショットを撮っているところだ。
ゲームでは色んな場所や人のスクリーンショットを撮るの醍醐味の一つだ。
せめてデジカメとかスマホがあれば写真を撮らせてもらったのに。
この美しい光景がこの一時しか見れないなんて実に残念で仕方なかった。
歩いているうちにも日はどんどん沈み、少し離れた冒険者ギルドに辿り着く頃には完全に夜になっていた。
ギルドはとても大きく、コテージのような外観だった。
扉を開けると賑わいが外にまで漏れ出してくる。
部屋は二つに仕切られており、サルーンドアの向こうからは笑い声と食事、酒の匂いが漂ってくる。
どうやら向こうには酒場が用意されているようだ。
レティが冒険者ギルドの受付に向かうと、受付にいた男女がはつらつとした表情で出迎える。
「こんばんは、レティさん!」
「こんな夜遅くに来るなんて珍しいじゃないか、どうかしたのか?」
女性の方は20代くらいで、栗色の髪をポニーテールに結っており、褐色の肌とトパーズのような黄金色の瞳が特徴的で、耳は尖っている。
身体にフィットするノースリーブのワンピースを着用していて、エキゾチックな雰囲気をまとっている。
どうやら女性の方はダークエルフのようだ。
そしてもう一人の男性はモサモサの某野獣のような髪型と頭に犬のような耳が生えていて、体格も良くて背も大きい。
けれどけして威圧感はなく、柔和な笑顔を浮かべていて親しみやすそうな雰囲気だ。
民族的な衣装と幾つもの木彫りの腕輪を嵌めている。
こちらはおそらく人狼ではなかろうか。
「あの、明日ちょっとバベルデュラーに行こうと思っててその道行で消化できそうな依頼を受けたいんです。あと念のため、物理攻撃が得意な剣士の方に同行してほしいかなって」
「分かりました。ちょっと確認しますね」
受付の女性が手をかざすと、どこからともなく依頼が書かれていると思われる紙が現れ、渦を描くように宙を舞う。
ゲームで見た光景に感動し、オレは口を開けたままその光景を見上げた。
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