異世界転生したけどそんな都合よく最強にはなれませんでした!?前途多難の駆け出し冒険者

蒼桜月薔薇

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第一章 死んでないが死にかけた

第17話 ギルドにおいては

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 舞っていた紙の幾つかが、渦からはみ出して受付の女性の手元へと落ちる。
 ゲームでは演出だったものが、今は実際の魔法となって眼の前で動いていて、オレの顔は感動に緩み切っていた。

「何だ、初めて見るって顔だな」
「あっ、はい! 不思議だな、と思って……」

 いきなり人狼っぽい方の男性に声を掛けられてオレは背筋を伸ばした。
 男性は弾けるように笑い、オレに手を指し伸べる。

「自己紹介しとくか。オレは人狼ワーウルフのハッカイ、隣りにいるのがダークエルフのエレインだ。よろしくな!」
「オレはマティスです。よろしくお願いします」

 自分の手より遥かに大きい手を握り返し、オレも挨拶を返す。
 もっと煙たがられると思っていたのに予想を覆す反応で、オレは面食らっていた。
 何故だろう、この反応は不快でないにしろ疑問を感じずにはいられなかった。

「あっ、あの……こういう場所にオレなんかが出入りしたらダメだったりしますか?」

 レティはエレインさんと依頼の紙を見ながら話し込んでいる。
 その隙にこっそりとハッカイさんに探りを入れてみることにした。
 もし、我慢してくれているのだとすればなるべく目立たずレティの陰に隠れていようかなんて考えていたのだが──。

「そんなワケ無いだろう。中にはそういう冒険者もいるかもしれんが、ギルド協会は公明正大を理念に掲げていてな、職員にはそんなヤツはおらんよ」
「魔術師協会の人や聖職者の人達は違うんですか?」

 あえて子供の無邪気さを装って聞いてみる。
 この嫌なチョーカーを作ったのは魔術師協会だし、聖堂では疎ましく思われたようだ、
 どこまでが自分達を受け入れてくれるのか、少しでも情報を得たい。

「ああ……アイツらは魔力や神聖力至上主義だからな。気にするな、魔力はどれだけあるかではなく、“何のために”“誰のために”“どう使うか”が大事なんだ。冒険者達はそのことをよく心得ておるよ」
「そうなんですね……」

 皆が皆、病気の人を疎ましく思っているのでないと分かり、安堵して溜息を漏らす。
 すると頭をぐしゃぐしゃと大きな手が撫で回してくる。

「子供でありながら悟ったような顔をしているのは置かれている環境のせいか。今はどこで暮らしてるのかね」
「その……サイラス先生のとこでお世話になってます」
「そうか。レティとサイラス殿は良い人だ。困ったら下手に遠慮せず子供らしく頼られよ。その方が二人もきっと喜ばれるだろう。無論、困ったらオレ達にも頼るがいい。可能な限りお前の力になるぞ」

 なんと心強い言葉だろうか。
 魔法が使えないので討伐系の依頼は出来ないが、それ以外の収集等であれば、安全な領域さえ越えなければ何とかなりそうだ。
 そしてここでようやく気付いた。

(もしや、この知識自体がオレの場合はチートなのでは……!?)

 最新の知識はないにしろ、前作でやり込んだのもあって様々な情報を持っている。
 それらを活かし伸ばせるだけの土台は十分に備わっているということだ。
 お陰でまた新たな目標を見出せた。
 それが上手くいくかは分からないけれど、チャレンジあるのみだ。

「お待たせ、マティス君」

 複数枚の依頼書を持っていることから、幾つか手頃な依頼を受けたようだ。
 どんな依頼を受けたのだろう、興味本位で聞いてみる事にした。

「ちなみにどんな依頼なんですか?」
「バイオレットスライム討伐10ゴールドと、ミミック討伐15ゴールド、それからワイトの討伐100ゴールドだよ」

(まぁ内容的にそんなもんか……)

 依頼の内容が初級レベルのせいもあり、報酬がかなり低価格だ。
 まあ道中のついでということなのだろう、そう思っているとレティは嘆息した。

「ギルドに所属する人の階級が高くなると、報酬の少ない依頼は割りに合わなくなっていつまでも残っちゃうんだよね。生活が掛かってるから仕方ないけど、こういうのは誰かがやってあげなきゃ。依頼を出した人の問題が解決しないでしょう?」
「レティさんには本当に感謝しています。誰もが敬遠するような依頼を進んで引き取って下さるので、とても助かっているんですよ」

 エレインさんは頬に手を当て、和やかに微笑む。

(そうか……それ、オレもやってたかも……)

 任務は何でもかんでも好きなだけ受けられるわけじゃない。
 引き受ければ達成期限が設定されるし、そうなれば必然的に今の自分のレベルに沿った報酬が高い任務を優先的に消化していくのが当たり前になっていく。
 でもそれはゲーム上だからであって、実際に起きている問題となると話が別だ。

 何となく罪悪感が疼くのはゲームがゲームでは無くなってしまったからだろう。
 報酬が安いとか効率が悪い仕事だからといって受け手が現れないのは、依頼者にとっては苦悩の種でしかない。
 そんな仕事を率先して引き受けているレティは、どんな辣腕の冒険者達よりも尊敬に値する。

(オレも……ゲームだからとか何だとか思ってたらダメだ。今はここがオレにとっての現実なんだ。もっも色んなことに目を向けないと)

 レティの姿勢を見てオレは身が引き締まる思いだった。
 
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