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肉のパン包みフリッターガーリック風味
肉のパン包みフリッターガーリック風味10
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アリシャは涙をゴシゴシ拭って、言われた五百銅貨を数えて渡した。エプロン姿のレゼナはそれを受け取りポケットに落とし込んだ。
「確かに受け取りました。あ、パン種を持ってくるわね。あと水。この炉なら火事にならないでしょうから、ちょっとくらい離れても平気よ。アリシャも走っていって運びたいものを食料庫からとっていらっしゃいな」
確かにさっきの鍋もこちらに運びたいし、先程見た塩漬け肉も今夜使いたいと思っていた。それにラードも必要だ。
「あのじゃあ走って行ってきます」
「私も器を運ばなきゃね。そうそう、私のお古のエプロンあげるわね。汚れているからもうお払い箱にして、解いて布巾にするつもりだったの。古くて悪いけど」
「とても助かります。服が汚れるのは困りますから」
そうよね。と、返事をすると口でブツブツ唱えながら持ってくるものを復唱しだす。
「先に走って行ってきますね」
炉が頑丈な石造りだとしても、不安は拭えないのでココを掬い上げて駆け出した。
「転ばないでよ、アリシャ」
元気よく返事をし、アリシャは下りたがるココをしっかり抱え直して走っていった。
まだ冷たい春風がアリシャの髪を時々攫っていくが、アリシャは抱えたココの温かさでへっちゃらだった。レオが話していた通り、今はとにかく目が回りそうなほど忙しくしている方がいい。悲しみや寂しさを感じないほど仕事に没頭しようと駆けていく。
アリシャが再び宿屋に戻ると料理部屋で大きな音がした。驚いて飛んでいくと、テーブルを一人でガタガタと移動させてる男性がいた。
「あの……?」
アリシャの声に振り返った男はとても若く、屋内に居てもわかるほどの透き通るような茶色の目をしていた。
「あ、アリシャだな? 生きてたかぁ。てか、生き延びたかー」
鼻筋の通った美しい男だと思ったのに、口が悪い。呆気にとられていると、男はアリシャに背を向け、再びテーブルを動かす。
「重いのに一人で運べとか、俺のことなんだと思ってるんだ!」
ちょっと面食らっていたが、重いのもあり、アリシャは運んできた物を炉の近くに置く。丁度後から追いかけて来たココが部屋の中に入ってきた。あろうことが尻尾をブンブン振り、アリシャを素通りし男の元へ駆けていく。
「ん? 子犬か。ちょっと待ってな」
男はよっと掛け声を掛けてテーブルを持ち上げて炉の隣、空いていたスペースの壁につけた。それから屈んでココを撫でてやる。
「よしよし、まだ甘えたいよなぁ。これ、アリシャの犬なのか?」
「そ、そうよ」
(さっきまであんなに私に甘えていたのに、ココったら。薄情だわ)
男の見た目の良さが犬にも理解出来るのだろうかと訝しがる。ココは雌だし、もしかすると……わかるのではないだろうか。
「腹ペコだな、さては」
撫でるのを止め、一度立ち上がると肩から斜めに掛けていたバッグを漁り、干し肉を取り出した。男はそれを口に咥えて噛みちぎると、口の中でもぐもぐと柔らかくなるまで噛んで自分の掌に出した。再びしゃがむと立ち上がって掌を覗こうとするココが手の中を見える所まで下ろして与えていた。
ココの興奮ぶりは相当なものだった。尻尾を激しく振ったまま、手を使い時には肉を振り回したりして果敢に挑んでいく。
「子犬はとにかく腹を空かせてるからな。座らせる方法知ってるか?」
犬を飼ったこともないし、ただ撫でさせて貰ったことくらいしかないアリシャには全くわからなかった。
「わからないわ……」
男はココにあげた肉を取り上げてしまう。肉に夢中なココは肉を取り返そうとぴょんぴょん跳ねている。
「見ててみ」
そう言うと男はココの頭の真上に肉を掲げた。跳んでいては見えないので、ココは跳ぶのを止めて肉を一心に見つめている。
「『座れ』だ。わかるか? 『座れ』」
男はココの目に語りかけながら、肉の位置は変えず、左手でココの腰を下へ押す。ココは自然と座り、肉からは目を離さない。
「いい子だ。おっと『座れ』」
焦れて立ち上がりそうになったココの腰をもう一度押して座らせてから、やっと肉を返してやっていた。
「食い物をやるたびに繰り返せば覚える。なぁ、チビすけ」
美味いか。と話しかけながらココを撫でていた。ココにはとても優しく語りかける。溶けるような笑顔も付けて。その反面、アリシャに顔を向けるとこうだ。
「なんだその間抜け顔」
そこへ大荷物を抱えて来たレゼナが「エド! 女のコにはもっと優しく!」と、叱りつけた。
(やはり、エドなのね。ウィンは優しくて親切なのに、弟の方は正反対!)
薄々、この村にいるということはドクの家の次男であることに勘付いていた。ただ、あまりにも長男のウィンと雰囲気が異なるし、顔立ちもウィンとは違い狼みたいにキリっと締まっていた。ウィンの顔は草食動物みたいにおっとりとしている。
「確かに受け取りました。あ、パン種を持ってくるわね。あと水。この炉なら火事にならないでしょうから、ちょっとくらい離れても平気よ。アリシャも走っていって運びたいものを食料庫からとっていらっしゃいな」
確かにさっきの鍋もこちらに運びたいし、先程見た塩漬け肉も今夜使いたいと思っていた。それにラードも必要だ。
「あのじゃあ走って行ってきます」
「私も器を運ばなきゃね。そうそう、私のお古のエプロンあげるわね。汚れているからもうお払い箱にして、解いて布巾にするつもりだったの。古くて悪いけど」
「とても助かります。服が汚れるのは困りますから」
そうよね。と、返事をすると口でブツブツ唱えながら持ってくるものを復唱しだす。
「先に走って行ってきますね」
炉が頑丈な石造りだとしても、不安は拭えないのでココを掬い上げて駆け出した。
「転ばないでよ、アリシャ」
元気よく返事をし、アリシャは下りたがるココをしっかり抱え直して走っていった。
まだ冷たい春風がアリシャの髪を時々攫っていくが、アリシャは抱えたココの温かさでへっちゃらだった。レオが話していた通り、今はとにかく目が回りそうなほど忙しくしている方がいい。悲しみや寂しさを感じないほど仕事に没頭しようと駆けていく。
アリシャが再び宿屋に戻ると料理部屋で大きな音がした。驚いて飛んでいくと、テーブルを一人でガタガタと移動させてる男性がいた。
「あの……?」
アリシャの声に振り返った男はとても若く、屋内に居てもわかるほどの透き通るような茶色の目をしていた。
「あ、アリシャだな? 生きてたかぁ。てか、生き延びたかー」
鼻筋の通った美しい男だと思ったのに、口が悪い。呆気にとられていると、男はアリシャに背を向け、再びテーブルを動かす。
「重いのに一人で運べとか、俺のことなんだと思ってるんだ!」
ちょっと面食らっていたが、重いのもあり、アリシャは運んできた物を炉の近くに置く。丁度後から追いかけて来たココが部屋の中に入ってきた。あろうことが尻尾をブンブン振り、アリシャを素通りし男の元へ駆けていく。
「ん? 子犬か。ちょっと待ってな」
男はよっと掛け声を掛けてテーブルを持ち上げて炉の隣、空いていたスペースの壁につけた。それから屈んでココを撫でてやる。
「よしよし、まだ甘えたいよなぁ。これ、アリシャの犬なのか?」
「そ、そうよ」
(さっきまであんなに私に甘えていたのに、ココったら。薄情だわ)
男の見た目の良さが犬にも理解出来るのだろうかと訝しがる。ココは雌だし、もしかすると……わかるのではないだろうか。
「腹ペコだな、さては」
撫でるのを止め、一度立ち上がると肩から斜めに掛けていたバッグを漁り、干し肉を取り出した。男はそれを口に咥えて噛みちぎると、口の中でもぐもぐと柔らかくなるまで噛んで自分の掌に出した。再びしゃがむと立ち上がって掌を覗こうとするココが手の中を見える所まで下ろして与えていた。
ココの興奮ぶりは相当なものだった。尻尾を激しく振ったまま、手を使い時には肉を振り回したりして果敢に挑んでいく。
「子犬はとにかく腹を空かせてるからな。座らせる方法知ってるか?」
犬を飼ったこともないし、ただ撫でさせて貰ったことくらいしかないアリシャには全くわからなかった。
「わからないわ……」
男はココにあげた肉を取り上げてしまう。肉に夢中なココは肉を取り返そうとぴょんぴょん跳ねている。
「見ててみ」
そう言うと男はココの頭の真上に肉を掲げた。跳んでいては見えないので、ココは跳ぶのを止めて肉を一心に見つめている。
「『座れ』だ。わかるか? 『座れ』」
男はココの目に語りかけながら、肉の位置は変えず、左手でココの腰を下へ押す。ココは自然と座り、肉からは目を離さない。
「いい子だ。おっと『座れ』」
焦れて立ち上がりそうになったココの腰をもう一度押して座らせてから、やっと肉を返してやっていた。
「食い物をやるたびに繰り返せば覚える。なぁ、チビすけ」
美味いか。と話しかけながらココを撫でていた。ココにはとても優しく語りかける。溶けるような笑顔も付けて。その反面、アリシャに顔を向けるとこうだ。
「なんだその間抜け顔」
そこへ大荷物を抱えて来たレゼナが「エド! 女のコにはもっと優しく!」と、叱りつけた。
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