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肉のパン包みフリッターガーリック風味
肉のパン包みフリッターガーリック風味11
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「あの、始めましてエド」
「いや、会ってるぞ。お前は気を失ってたがな。馬が一人で歩いているから貰ってやろうとしたら、背にアリシャがくっついていた」
「エド、言い方! 女のコには優しく」
また怒られたエドは肩を上げる。そんな仕草はドクやウィンにそっくりだ。角度といい掌の返し方といい。
「まぁ、いいや。死んでるのかと思ったけど生きてたし……ここに住むならそれなりに歓迎するよ」
「あんた、もう少し言い方ってものが──」
最後にココをもう一度撫でてから立ち上がり、まだ怒り足らないレゼナからさっさと退散してしまった。
「イヤだわ……悪かったわアリシャ」
ため息を吐きながら運んできた物をテーブルへと置いた。
「同じ様に育てたのにね。あれで優しいところもないわけではないのよ。とにかく口が悪いから……」
カゴから壺を出し、パン種、蜂蜜、と説明も合間にしてくれる。
「私を助けてくれたのはエドなんですね」
アリシャもカゴから中身を出すのを手伝った。
「エドがここに連れてくるまであなたは意識がなくてね。熱も出してしまっていたからうわ言も呟いていたって」
それはレオからも聞かされてなかったので初耳だった。目が覚めた時には熱もなかったし、ただ眠りこけていたのだと思っていた。
アリシャが取り出した布を見て「それ、エプロン。付けちゃって」と、手を止めずにレゼナが勧めた。アリシャは礼を述べてからエプロンをつける。
「さあ、じゃあアリシャには食事の準備に取り掛かって貰いましょう。私は息子たちに言ってもう少し快適に食事が出来るようにするわね」
あとそこ。と、レゼナは北の扉跡を指差す。扉は入っておらず板で塞いであるのだ。
「そこの扉も順に直しましょう。井戸は直ぐそこだもの。正面の入口を回るよりこっちの方が早いから。掃除している間に一杯だけ汲んできたわ」
部屋の隅に手桶があることには気がついていた。
「ありがとうございます。明日から自分で汲みますから」
「何個か手桶を準備しなきゃね。じゃあ、行くわね」
空になったカゴを抱えると、アリシャの頬に手を添えて「楽しみよ。夕飯まで待ちきれないわ」微笑んで、足元で尻尾を振っているココにも触れて出ていった。
「頑張らなきゃね、ココ」
話しかけるもココは満足そうに手を舐めてアリシャに顔も向けなかった。
「もぉ、次は私がご飯をあげるからちゃんと懐いてよね」
苦笑しながらため息を吐くと、腕まくりをして部屋の隅で手を洗った。期待してもらっていると思うと緊張するが、やるしかない。
(まずはパンの下準備。それから残り物のパンを使って……どうしよう? とにかくパンを練りながら考えよう)
パンの練って発酵させる間に、アリシャは思い付いた料理を使ってみることにした。
レゼナの作ったパンは塩分不足の上に水分が飛んでしまっていた。だから、少しだけ水に浸し水分を含ませてから引き上げると、台の上でナイフの柄を使ってトントンと引き伸ばしていく。
倍ほどの大きさになったところで塩漬けの肉をスライスしたものを生地の上に置いた。塩漬けの肉はそれだけでかなりしょっぱいのでそこにもらってきたチーズも乗せて、クルクルと巻いていく。端は下の生地にナイフで押し付けるようにしたらしっかりと止まってくれた。
これを何個も繰り返し、一人二本ずつ行き渡るように作れたので取り敢えず置いておいて、今度はニンニクに取り掛かる。
皮を向いてスライスし、脂の中に落としてカリッとなるまで揚げてから、器に移して叩いて砕いた。ガーリックの香りが揚げられたことにより香ばしく変化して、これだけでアリシャの腹が急激に空腹を訴える。
ニンニクが用意できると、玉ねぎの皮を剥いて輪っかになるように切っていく。玉ねぎのせいで涙がポロポロこぼれ落ちてくるのをココは不思議そうに首を傾げていた。
次に貰ってきた卵を二つ割ると、白身と黄身に分ける。白身をよく泡立ててから黄身と残っていたミルク、壺から塩を摘んで入れて混ぜた。
(揚げたての方が美味しいけれど……)
どのタイミングで集まって食事をするのかまだアリシャにはわからず、待たせるよりは直ぐに口にできた方が良いだろうと考えて肉入りパンに卵の衣を付けて揚げ焼きにしていった。
プクプクと脂の中で焼かれていくパン。こんがり秋色になったところで器にあげる。
「なんか美味そうな匂いがするな」
丸太を短く切ったものを肩に乗せて運んできたエドが鼻をクンクンさせて入ってきた。
「それはなに?」
揚げている時は手が離せないアリシャはチラリと丸太に視線を投げてから問う。
「スツールの代わり。テーブルもないし、こっちで食おうって話になって──ここ置くぞ?」
どこに置くのか確認もせずにアリシャは首を縦に振る。
「見ろよー」
「だって料理を使ってるのに!」
後から移動してくれとか言うなよと文句をつけながら、アリシャに並ぶ。
「これなに?」
エドはアリシャの作っているものが気になって鍋を覗き込む。
「脂が跳ねたらやけどするから」
「一個食いたい」
「多めにはないの。レゼナさんの残りのパンを使ったから、数はぎりぎり」
「えー、母さんのパンかよ。なおさら味見してやるから」
もー。と、言いながらアリシャは揚げたてのを一つ器に取って上から砕いたガーリックを散らしエドに押し付けた。
「私の分を一つ分けてあげるから、ちゃんと感想教えてよね。味が濃いとか薄いとか。調整するから」
エドは指で一度は触ったが、かなり熱かったらしく、腰にさしてある食事用のナイフに切り替えて口に運んだ。
脂を含んだパンはエドに噛まれるとジュワと脂を滲ませる。
「うわ! 何これ美味いな! ん。チーズと肉か……うめぇー」
一口食べるごとに美味しいと言うので、アリシャはエドが急に好きになった。作った物を褒められるのは無条件に嬉しかった。
「しょっぱくない? 塩は落としたけど洗わなかったの」
「ちょいしょっぱいけど、それはいつも母さんの無味なパンを食ってるからで、これくらいは普通だな」
直ぐに一本食べ切ると「一人二本?」と、残りを数えていた。
「うん」
「美味いからってのもあるけど、足らないな」
「そう? パンは一度の食事で何個食べるの?」
「俺たちは三。母さんとレオさんは二枚」
確かにそんなに食べるなら、この量では足りそうもない。
「そかぁ。結構食べるのね。じゃあ何かもう少し作るわ」
「いや、会ってるぞ。お前は気を失ってたがな。馬が一人で歩いているから貰ってやろうとしたら、背にアリシャがくっついていた」
「エド、言い方! 女のコには優しく」
また怒られたエドは肩を上げる。そんな仕草はドクやウィンにそっくりだ。角度といい掌の返し方といい。
「まぁ、いいや。死んでるのかと思ったけど生きてたし……ここに住むならそれなりに歓迎するよ」
「あんた、もう少し言い方ってものが──」
最後にココをもう一度撫でてから立ち上がり、まだ怒り足らないレゼナからさっさと退散してしまった。
「イヤだわ……悪かったわアリシャ」
ため息を吐きながら運んできた物をテーブルへと置いた。
「同じ様に育てたのにね。あれで優しいところもないわけではないのよ。とにかく口が悪いから……」
カゴから壺を出し、パン種、蜂蜜、と説明も合間にしてくれる。
「私を助けてくれたのはエドなんですね」
アリシャもカゴから中身を出すのを手伝った。
「エドがここに連れてくるまであなたは意識がなくてね。熱も出してしまっていたからうわ言も呟いていたって」
それはレオからも聞かされてなかったので初耳だった。目が覚めた時には熱もなかったし、ただ眠りこけていたのだと思っていた。
アリシャが取り出した布を見て「それ、エプロン。付けちゃって」と、手を止めずにレゼナが勧めた。アリシャは礼を述べてからエプロンをつける。
「さあ、じゃあアリシャには食事の準備に取り掛かって貰いましょう。私は息子たちに言ってもう少し快適に食事が出来るようにするわね」
あとそこ。と、レゼナは北の扉跡を指差す。扉は入っておらず板で塞いであるのだ。
「そこの扉も順に直しましょう。井戸は直ぐそこだもの。正面の入口を回るよりこっちの方が早いから。掃除している間に一杯だけ汲んできたわ」
部屋の隅に手桶があることには気がついていた。
「ありがとうございます。明日から自分で汲みますから」
「何個か手桶を準備しなきゃね。じゃあ、行くわね」
空になったカゴを抱えると、アリシャの頬に手を添えて「楽しみよ。夕飯まで待ちきれないわ」微笑んで、足元で尻尾を振っているココにも触れて出ていった。
「頑張らなきゃね、ココ」
話しかけるもココは満足そうに手を舐めてアリシャに顔も向けなかった。
「もぉ、次は私がご飯をあげるからちゃんと懐いてよね」
苦笑しながらため息を吐くと、腕まくりをして部屋の隅で手を洗った。期待してもらっていると思うと緊張するが、やるしかない。
(まずはパンの下準備。それから残り物のパンを使って……どうしよう? とにかくパンを練りながら考えよう)
パンの練って発酵させる間に、アリシャは思い付いた料理を使ってみることにした。
レゼナの作ったパンは塩分不足の上に水分が飛んでしまっていた。だから、少しだけ水に浸し水分を含ませてから引き上げると、台の上でナイフの柄を使ってトントンと引き伸ばしていく。
倍ほどの大きさになったところで塩漬けの肉をスライスしたものを生地の上に置いた。塩漬けの肉はそれだけでかなりしょっぱいのでそこにもらってきたチーズも乗せて、クルクルと巻いていく。端は下の生地にナイフで押し付けるようにしたらしっかりと止まってくれた。
これを何個も繰り返し、一人二本ずつ行き渡るように作れたので取り敢えず置いておいて、今度はニンニクに取り掛かる。
皮を向いてスライスし、脂の中に落としてカリッとなるまで揚げてから、器に移して叩いて砕いた。ガーリックの香りが揚げられたことにより香ばしく変化して、これだけでアリシャの腹が急激に空腹を訴える。
ニンニクが用意できると、玉ねぎの皮を剥いて輪っかになるように切っていく。玉ねぎのせいで涙がポロポロこぼれ落ちてくるのをココは不思議そうに首を傾げていた。
次に貰ってきた卵を二つ割ると、白身と黄身に分ける。白身をよく泡立ててから黄身と残っていたミルク、壺から塩を摘んで入れて混ぜた。
(揚げたての方が美味しいけれど……)
どのタイミングで集まって食事をするのかまだアリシャにはわからず、待たせるよりは直ぐに口にできた方が良いだろうと考えて肉入りパンに卵の衣を付けて揚げ焼きにしていった。
プクプクと脂の中で焼かれていくパン。こんがり秋色になったところで器にあげる。
「なんか美味そうな匂いがするな」
丸太を短く切ったものを肩に乗せて運んできたエドが鼻をクンクンさせて入ってきた。
「それはなに?」
揚げている時は手が離せないアリシャはチラリと丸太に視線を投げてから問う。
「スツールの代わり。テーブルもないし、こっちで食おうって話になって──ここ置くぞ?」
どこに置くのか確認もせずにアリシャは首を縦に振る。
「見ろよー」
「だって料理を使ってるのに!」
後から移動してくれとか言うなよと文句をつけながら、アリシャに並ぶ。
「これなに?」
エドはアリシャの作っているものが気になって鍋を覗き込む。
「脂が跳ねたらやけどするから」
「一個食いたい」
「多めにはないの。レゼナさんの残りのパンを使ったから、数はぎりぎり」
「えー、母さんのパンかよ。なおさら味見してやるから」
もー。と、言いながらアリシャは揚げたてのを一つ器に取って上から砕いたガーリックを散らしエドに押し付けた。
「私の分を一つ分けてあげるから、ちゃんと感想教えてよね。味が濃いとか薄いとか。調整するから」
エドは指で一度は触ったが、かなり熱かったらしく、腰にさしてある食事用のナイフに切り替えて口に運んだ。
脂を含んだパンはエドに噛まれるとジュワと脂を滲ませる。
「うわ! 何これ美味いな! ん。チーズと肉か……うめぇー」
一口食べるごとに美味しいと言うので、アリシャはエドが急に好きになった。作った物を褒められるのは無条件に嬉しかった。
「しょっぱくない? 塩は落としたけど洗わなかったの」
「ちょいしょっぱいけど、それはいつも母さんの無味なパンを食ってるからで、これくらいは普通だな」
直ぐに一本食べ切ると「一人二本?」と、残りを数えていた。
「うん」
「美味いからってのもあるけど、足らないな」
「そう? パンは一度の食事で何個食べるの?」
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確かにそんなに食べるなら、この量では足りそうもない。
「そかぁ。結構食べるのね。じゃあ何かもう少し作るわ」
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