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トリの柔らか煮込み
トリの柔らか煮込み5
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アリシャの頭を上げ、強引にスプーンに乗せた気つけ薬を飲ませていく。すると次第にアリシャの表情に変化が現れた。この気つけ薬、実は恐ろしく苦いので普通の人間ならば口に入れられた途端に吐き出すようなものなのだ。
「反応したな」
レオがアリシャの表情を見て、険しかった表情を僅かに緩めた。その後は糖蜜を水に溶かしたものに切り替えて、何度も口に流し入れてやっていた。
「水分もとれたし、少し様子を見ても大丈夫だろう」
レオはアリシャの長持ちに使った器を置き、丸太に腰を下ろして固唾を呑んで見守っていた二人の顔を交互に見た。
「ここに来る途中エドに話は聞いた。エドに突進してきた猪から、エドを守るように突風が吹いたと言ったな?」
「そうです。それで猪は死にました。凄まじい風だったんで」
「それなのに、お前は傷一つ負っておらぬ。エドよ、お前の見解を話してみてくれ」
「魔法以外ないと思う。あんなの自然の力じゃない」
レオとエドのやりとりにドクが「魔法、か……」と呟いた。
レオは長いヒゲをしごきながら大きなため息を吐いた。
「私の考えはこうだ。アリシャの能力は防御だろう。力のコントロールが出来ず、咄嗟に暴走させたからまるで攻撃の力みたいになったが、アリシャからしたらエドを守りたい一心で最大限まで力を使ってしまったのだろうな、無意識に」
腕組をして聞いていたドクが「レオ様に同意です」と言い、続ける。
「回復には出来そうもないことだし、攻撃の主はスルシュア王国に既におりますからね。残るは防御しかない」
「前から少しアリシャの事で気になっておったのだが、アリシャは知り合いをみんな失った割に比較的元気に振る舞っていただろう? しかし、今は力を使ったお陰で本来の苦しみが目覚めてしまっているのだと思う。ようは防御の力で自らの心をも守っていたのだろうな」
エドはアリシャの苦しむ姿を思い出して拳を握りしめた。
自分を守る為に悪夢のような体験を思い出させてしまったのだと思うと、可哀想な事をしたと思った。あの時、どう動いたら二人とも無傷でやり過ごせたのか、状況を思い出そうとしていた。
「しかし……皮肉なものですなぁ。回復の元を去った我らのところに防御の主が来るとは」
ドクがしみじみと言い、レオがアリシャを見つめたままヒゲをいじる。
「神が回復の暴走を止めるためにアリシャを我らのところへ導いたのだろうよ」
思い出すのに夢中になっていたエドが、レオの言い方で気になって口を挟んだ。
「それはアリシャをここから追い出したりしないと言うことなのか?」
エドの口の聞き方が気に入らないドクに「お前! レオ様には敬意を払え」と、叱られた。
「いい。気にするでない。アリシャがここに来たのは神のご意思だ。多少知識のある我らが無垢な防御の主をサポートしていこう。それが平穏な日々を守る礎になるのだ」
レオの口が「今度こそ」と動いていた。
「単純に考えればこの村は偉大な力で守られることになるし、良いことじゃないか。防御は他の二つと違って、派手じゃないしな。良い、良い。そっとアリシャを守っていきましょーや」
「力の暴走をコントロールすれば誰かに知られる事もないであろうしな。アリシャには自分の力を自覚し上手く取り扱えるようになってもらおう」
「ってぇことは、皆には言わない方向ですか? 知ってる人数が少なければ少ないほど──」
「いや、村にいる者には伝えておこう。力が暴走した時始めて知ると恐怖を感じるかもしれん。これは防御の力であって攻撃の力ではないとわかっていた方がいいだろう」
レオが立ち上がる。そっとアリシャの額に手を置いて熱はないと言った。
「リアナに様子を見てやってくれと言っておいてくれ。夕飯の時に私が皆に説明する」
ドクも立ち上がり帽子を被った。
「リアナが夕飯を作ると言うから丁度いい。時々様子を見てやってくれというくらいで大丈夫ですよね?」
「それでいい。身体に傷を負ったわけではないし、心の傷も魔力の回復と共に和らぐだろう。寝てれば万事よくなる」
なかなか立ち上がらないエドの肩をドクが叩いて急かす。
「ほら、アリシャは大丈夫だ。仕事に戻るぞ」
「あんなに泣いてたじゃないか。ホントに大丈夫なのか?」
ドクとレオが顔を見合わせてから、ドクがエドの肩に手を置いて肩を擦った。
「日々のアリシャは明るく元気な子だ。防御の力が戻れば再びああなるさ」
ドクの手が心配するなと言っていた。でも二人とも知らないのだ。本当に苦しんでいる時のアリシャを。
「力を使わなければアリシャは辛くないのか……」
呟いたエドに扉の方に行きかけていたレオが振り向いた。
「暴走しなければ問題ないはずだ。とにかく力のコントロールを本人がどうにか習得しなきゃならん」
「反応したな」
レオがアリシャの表情を見て、険しかった表情を僅かに緩めた。その後は糖蜜を水に溶かしたものに切り替えて、何度も口に流し入れてやっていた。
「水分もとれたし、少し様子を見ても大丈夫だろう」
レオはアリシャの長持ちに使った器を置き、丸太に腰を下ろして固唾を呑んで見守っていた二人の顔を交互に見た。
「ここに来る途中エドに話は聞いた。エドに突進してきた猪から、エドを守るように突風が吹いたと言ったな?」
「そうです。それで猪は死にました。凄まじい風だったんで」
「それなのに、お前は傷一つ負っておらぬ。エドよ、お前の見解を話してみてくれ」
「魔法以外ないと思う。あんなの自然の力じゃない」
レオとエドのやりとりにドクが「魔法、か……」と呟いた。
レオは長いヒゲをしごきながら大きなため息を吐いた。
「私の考えはこうだ。アリシャの能力は防御だろう。力のコントロールが出来ず、咄嗟に暴走させたからまるで攻撃の力みたいになったが、アリシャからしたらエドを守りたい一心で最大限まで力を使ってしまったのだろうな、無意識に」
腕組をして聞いていたドクが「レオ様に同意です」と言い、続ける。
「回復には出来そうもないことだし、攻撃の主はスルシュア王国に既におりますからね。残るは防御しかない」
「前から少しアリシャの事で気になっておったのだが、アリシャは知り合いをみんな失った割に比較的元気に振る舞っていただろう? しかし、今は力を使ったお陰で本来の苦しみが目覚めてしまっているのだと思う。ようは防御の力で自らの心をも守っていたのだろうな」
エドはアリシャの苦しむ姿を思い出して拳を握りしめた。
自分を守る為に悪夢のような体験を思い出させてしまったのだと思うと、可哀想な事をしたと思った。あの時、どう動いたら二人とも無傷でやり過ごせたのか、状況を思い出そうとしていた。
「しかし……皮肉なものですなぁ。回復の元を去った我らのところに防御の主が来るとは」
ドクがしみじみと言い、レオがアリシャを見つめたままヒゲをいじる。
「神が回復の暴走を止めるためにアリシャを我らのところへ導いたのだろうよ」
思い出すのに夢中になっていたエドが、レオの言い方で気になって口を挟んだ。
「それはアリシャをここから追い出したりしないと言うことなのか?」
エドの口の聞き方が気に入らないドクに「お前! レオ様には敬意を払え」と、叱られた。
「いい。気にするでない。アリシャがここに来たのは神のご意思だ。多少知識のある我らが無垢な防御の主をサポートしていこう。それが平穏な日々を守る礎になるのだ」
レオの口が「今度こそ」と動いていた。
「単純に考えればこの村は偉大な力で守られることになるし、良いことじゃないか。防御は他の二つと違って、派手じゃないしな。良い、良い。そっとアリシャを守っていきましょーや」
「力の暴走をコントロールすれば誰かに知られる事もないであろうしな。アリシャには自分の力を自覚し上手く取り扱えるようになってもらおう」
「ってぇことは、皆には言わない方向ですか? 知ってる人数が少なければ少ないほど──」
「いや、村にいる者には伝えておこう。力が暴走した時始めて知ると恐怖を感じるかもしれん。これは防御の力であって攻撃の力ではないとわかっていた方がいいだろう」
レオが立ち上がる。そっとアリシャの額に手を置いて熱はないと言った。
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