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トロリ秋の恵みのカルツォーネ
トロリ秋の恵みのカルツォーネ3
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アリシャは手を合わせ、急いで神に祈りを捧げた。
(どうか、お金をみつけられますように。私が間違えた選択をしませんように、お導きください)
無惨な状態の部屋に目を瞑った。片付けたりするより、先に金を見つけなければならない。盗んだ人が遠くに逃げたり、巧妙な隠し場所に金を運ぶ前に、このことを周知してもらわねば。
アリシャは料理部屋に続く扉を閉め、まだ熱心に臭いを追っているココに声をかけた。
「悪いけど、ここでお留守番しててね。誰か来たら吠えるのよ。わかる? そう、良い子」
ココはアリシャの話を理解したかどうかはわからないが『ステイ』と言えば、その場に伏せをして従った。
今度は部屋を出て、いつも寝る時以外はかけない鍵を外からかけて、納屋へと駆け出していった。
納屋の手前にある家畜小屋もぐるりと廻ってみたがレゼナは居なかったので次に納屋へ行く。牛は藁を食みながらアリシャを見送り、スリは久しぶりのアリシャに歓迎して顔を伸ばしていた。
「スリごめん、後でね」
アリシャは息切れしながらスリに言い渡し、納屋へと駆け込んでいった。
「あら、どうしたの?」
レゼナは粉挽きをしているところだった。レゼナの声を聞いて、納屋の奥からウィンも顔を出してきた。
「レゼナさん。あの、あの……私の部屋からお金が……消えてて」
話に耳を傾けなが石臼を廻していたレゼナの手が止まる。ライ麦が粉になってパラパラと台に落ちていく。
「え! 鍵は? 鍵をしていたわよね?」
「収納箱の鍵は掛けてましたが、壊されていて……空の巾着はありましたけど」
「壊されて……それは大変じゃないか! 僕はレオさんたちを呼んでくる」
「そうね。私は家で縫い物をしているアヴリルと、鍛冶屋の調整をしているジャンを呼ぶわ。宿屋に皆で集まりましょう」
レゼナはエプロンで手を拭きながらアリシャのところにきて、ギュッと力を込めて抱き締めた。
「皆で解決できるわ。ね?」
アリシャは頷く。レゼナと交代しウィンもアリシャに軽くハグをする。元気だしてとそっと言い添えた。
「皆を呼んでくる」
二人が出ていく前にアリシャは先に戻ってもう一度金を探してみるように促されたので、そうすることにした。
(長閑で平和な時間が崩れていくみたいで……なんて悲しいの)
走りながら曇天の空を見上げていた。こんなことになるなんて心が痛いし辛かった。
灰色の雲から目を逸らせると、いつもはホッと出来る石造りの頑丈な宿屋に戻っていく。こんなに宿屋に戻りたくないと思うのは初めてのことだった。
直ぐに宿屋に皆集められたが、二人面子が欠けていた。神妙な面持ちで座るリアナが隣にいるユーリに「ボリスとエドが居ないわ」こそこそと告げていた。
夕刻前にも関わらずテーブルの上にはカンテラが乗せられていた。
「エドは森に行ったらしいがボリスの行方は誰か知らんか?」
レオの問いに真っ先に答えたのはアヴリルだった。幾分青ざめた顔で「ボリスはきっと板を取りにいったんだと思います」と言った。
「いやぁ、しかし今日は一度もこっちには来ておらんが……」
ナジは言いながら息子たちに問うような視線を送るが、二人とも見ていないと首を横に振った。
アリシャもエドからボリスの姿が見えないと聞かされていたが、ここではそれを言いたくなかった。エドが嘘を吐いていると思ってはいないが、アリシャがそれを皆に言うことでボリスの立場はますます良くなくなる。
(だって、ボリスだもの……そんなことするわけないわ……きっと)
でも、エドはボリスに肩入れするなと忠告してきた。アリシャの知らない裏の顔がボリスにはあるのだろうか。いや、それはない。疑いそうになる気持ちと葛藤していた。
「あのー」
皆の視線が声の主、ジョゼフに集まった。相変わらず感情の読み取れない人だ。兄が疑いをかけられている雰囲気にあっても、動揺もしているようには見えない。
「昼頃だったかなぁ。ボリスが宿屋から出て来たところで会いましたよ」
アリシャは瞼を下ろしてジョゼフを見ないことにした。本当は耳を覆って何も聞きたくないとすら考えていた。
「話はしたのか?」
レオに聞かれてジョゼフは「話ってほどではないですけど」と答えた。
「俺がどうした? と聞いたら『買い出しに行く用事が出来た』と。直ぐに戻るのか聞いたら、暫く戻らないかもしれないから皆にはよろしく伝えてくれと話してました」
(そんなのまるで……)
レオが深いため息を吐いてから立ち上がる。
「怪しいとしか言いようがないな。疑うより、今はなるべく早くボリスを探して話を聞こう」
アリシャもボリスを疑いたくなる。ただレオはまだボリスを信じ、話を聞こうと言ってくれたことにアリシャも気持ちを切り替えなくてはと思った。
(そうよ。まだ決まった訳じゃないもの)
ドクが勢いよく立ち上がるとジャンに顔を向けた。
「ジャンはここで皆の連絡役をしてください。皆は何か気になることがあったらここに戻ってジャンに伝えるんだ。それとルクとユーリ兄弟はうちのエドを探して連れ帰ってくれ」
ウィンが「エドだってボリスと立場は一緒だから……」と暗い表情でボソボソと言った。
(どうか、お金をみつけられますように。私が間違えた選択をしませんように、お導きください)
無惨な状態の部屋に目を瞑った。片付けたりするより、先に金を見つけなければならない。盗んだ人が遠くに逃げたり、巧妙な隠し場所に金を運ぶ前に、このことを周知してもらわねば。
アリシャは料理部屋に続く扉を閉め、まだ熱心に臭いを追っているココに声をかけた。
「悪いけど、ここでお留守番しててね。誰か来たら吠えるのよ。わかる? そう、良い子」
ココはアリシャの話を理解したかどうかはわからないが『ステイ』と言えば、その場に伏せをして従った。
今度は部屋を出て、いつも寝る時以外はかけない鍵を外からかけて、納屋へと駆け出していった。
納屋の手前にある家畜小屋もぐるりと廻ってみたがレゼナは居なかったので次に納屋へ行く。牛は藁を食みながらアリシャを見送り、スリは久しぶりのアリシャに歓迎して顔を伸ばしていた。
「スリごめん、後でね」
アリシャは息切れしながらスリに言い渡し、納屋へと駆け込んでいった。
「あら、どうしたの?」
レゼナは粉挽きをしているところだった。レゼナの声を聞いて、納屋の奥からウィンも顔を出してきた。
「レゼナさん。あの、あの……私の部屋からお金が……消えてて」
話に耳を傾けなが石臼を廻していたレゼナの手が止まる。ライ麦が粉になってパラパラと台に落ちていく。
「え! 鍵は? 鍵をしていたわよね?」
「収納箱の鍵は掛けてましたが、壊されていて……空の巾着はありましたけど」
「壊されて……それは大変じゃないか! 僕はレオさんたちを呼んでくる」
「そうね。私は家で縫い物をしているアヴリルと、鍛冶屋の調整をしているジャンを呼ぶわ。宿屋に皆で集まりましょう」
レゼナはエプロンで手を拭きながらアリシャのところにきて、ギュッと力を込めて抱き締めた。
「皆で解決できるわ。ね?」
アリシャは頷く。レゼナと交代しウィンもアリシャに軽くハグをする。元気だしてとそっと言い添えた。
「皆を呼んでくる」
二人が出ていく前にアリシャは先に戻ってもう一度金を探してみるように促されたので、そうすることにした。
(長閑で平和な時間が崩れていくみたいで……なんて悲しいの)
走りながら曇天の空を見上げていた。こんなことになるなんて心が痛いし辛かった。
灰色の雲から目を逸らせると、いつもはホッと出来る石造りの頑丈な宿屋に戻っていく。こんなに宿屋に戻りたくないと思うのは初めてのことだった。
直ぐに宿屋に皆集められたが、二人面子が欠けていた。神妙な面持ちで座るリアナが隣にいるユーリに「ボリスとエドが居ないわ」こそこそと告げていた。
夕刻前にも関わらずテーブルの上にはカンテラが乗せられていた。
「エドは森に行ったらしいがボリスの行方は誰か知らんか?」
レオの問いに真っ先に答えたのはアヴリルだった。幾分青ざめた顔で「ボリスはきっと板を取りにいったんだと思います」と言った。
「いやぁ、しかし今日は一度もこっちには来ておらんが……」
ナジは言いながら息子たちに問うような視線を送るが、二人とも見ていないと首を横に振った。
アリシャもエドからボリスの姿が見えないと聞かされていたが、ここではそれを言いたくなかった。エドが嘘を吐いていると思ってはいないが、アリシャがそれを皆に言うことでボリスの立場はますます良くなくなる。
(だって、ボリスだもの……そんなことするわけないわ……きっと)
でも、エドはボリスに肩入れするなと忠告してきた。アリシャの知らない裏の顔がボリスにはあるのだろうか。いや、それはない。疑いそうになる気持ちと葛藤していた。
「あのー」
皆の視線が声の主、ジョゼフに集まった。相変わらず感情の読み取れない人だ。兄が疑いをかけられている雰囲気にあっても、動揺もしているようには見えない。
「昼頃だったかなぁ。ボリスが宿屋から出て来たところで会いましたよ」
アリシャは瞼を下ろしてジョゼフを見ないことにした。本当は耳を覆って何も聞きたくないとすら考えていた。
「話はしたのか?」
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アリシャもボリスを疑いたくなる。ただレオはまだボリスを信じ、話を聞こうと言ってくれたことにアリシャも気持ちを切り替えなくてはと思った。
(そうよ。まだ決まった訳じゃないもの)
ドクが勢いよく立ち上がるとジャンに顔を向けた。
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