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トロリ秋の恵みのカルツォーネ
トロリ秋の恵みのカルツォーネ2
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「エドのこと?」
飛び出したキノコを拾うとカゴに投げ入れてユーリが唐突にエドを出す。不意打ちにアリシャが動きを止める。
「なんで、エドなの?」
「アリシャとエドはそういう仲なんだってリアナが言ってた。そういう仲ってなんのことだよ、わかんない」
「ち、違うから。エドとはそういう仲じゃないってば」
「だからそういう仲って何さ。あ、あそこにヤマドリダケ見っけ」
自分で切り出しておいて、子供らしい心変わりをみせ、キノコ狩りに戻ってしまった。確かに走っていったところにヤマドリダケが見えている。
(リアナには言っておかなきゃ。エドとはなんでもないんだし、そんなことが他の大人の耳に届いたら困るもの。エド本人なんかに言われたら……)
想像しただけでアリシャは赤面して、隠すために俯いた。
(困る、困る。やだやだ恥ずかしい)
そんな事を考えていたからなのか、弓を担いだエドと村の入口でばったり出くわした時、無駄に余計なことを考えないように必死だった。空なんか仰ぎ見て「何やってんだ?」とエドに怪訝そうに言われてしまった。
「いや、あの、空が……綺麗? だなぁと」
「はぁ?」
エドの反応はもっともだ。今日は薄暗い曇天なのだから。アリシャは咳払いをしてから隣にいるユーリに先に行っててほしいと伝えた。ユーリも不思議そうな顔をしたが、とりあえずここは言うことを聞いてキノコ入のカゴを運んでいった。
「えっと……それで弓を担いでどこに?」
「キノコ狩りにな」
「ウソだー」
エドは肩を上げて「じゃあ聞くなよ。お前どうかしてるぞ?」と、アリシャの横を通り過ぎようとした。
「狩り! か、狩りなら私も行きましょうか? また猪が突進してきたら──」
エドの右眉がクイッと持ち上がる。
「まだ力をコントロールできない癖によくいうよ。俺は一人の方が安全にやれる。お前が居ると集中出来ない」
断られると思っていてもなんだか悲しかった。それが伝わったのか「そういう顔はやめろ」と言われる始末。
「俺で暇つぶしをするな。ボリスがいるだろ?」
「あ、ボリス! どうしてボリスを誘わないの? 忙しいから?」
二人は狩り仲間らしいし、とにかくこの間のこともありアリシャは一人で狩りに行かないで欲しかった。
「それが見当たらないんだよなぁ。ま、旅人が狼をこの近くで見たって言うからそれをやるだけだし、一人でやれるけど」
「それならやはり私が──」
エドは片手でアリシャを追い払う仕草をした。
「やめとけ、やめとけ。また暴走したら困るだろ。それに野宿だ、連れてけねぇよ」
ぐうの音も出ない。胸の前で握り締めた拳に力がこもる。心配だからといってついていくのはどう考えても逆効果だった。足手まといにしかならない。
「ボリスを見たら……エドは狩りに行ったと伝えるわね」
あわよくば後を追って狩りに行ってくれれば心強い。
「いいって。……あんまりボリスに肩入れすんなよ」
引っ掛かりを覚えて「肩入れ?」とオウム返しをするが、エドはいつものように核心には触れずに手を振って出掛けてしまった。
エドは狩りには慣れているらしい。確かに弓を引く姿は様になっているし、二の腕や肩周りの筋肉は息を呑むほど美しい。訓練の賜物なのだろう。エドを信じ、自分の我儘を押さえ付けて見送った。ただ今夜は長い夜になる予感がしていた。
その予感が予想とは違った理由で的中することになろうとは……。
エドを見送った後、料理部屋に行くとキノコのカゴだけ置かれていてユーリの姿はなかった。大方、誰かに違う仕事を貰い精を出しているのだろう。後でキノコ狩りの手伝いのお礼を渡さなければと、アリシャはいつも下げているポーチの中を漁ったが生憎銀貨しか入っていなかった。
銅貨のやり取りは億劫だとリリーに言われ、最近は売上を記録してくれていて、銀貨に届くと精算ということになっていた。これはアリシャの品物の評判が良い事と、リリーとの信頼関係が構築できた証だからアリシャにとって嬉しい事柄だったが、こんな風に手間賃を渡したい時は困るのだ。
(収納箱から出さなきゃね。忘れないうちに用意しよう)
アリシャは自室にある鍵付きの収納箱に銅貨を取りにいった。
(え……?)
部屋に入るとアリシャは口を思わず手で覆った。血の気が引き、悪い夢を見ている感覚に頭が真っ白になる。
収納箱の鍵が壊されて中身が散乱していたのだ。中身といってもアリシャの財産はシーツや下着、それに金だけだ。収納箱に駆け寄ると残っていたシーツを掻き分けた。
(ない、ない、私のお金……)
シーツを全て出して挟まったり隠れてしまっているのではないかと探してみるが、出てきたのは空の巾着のみ。
(そんな……もうすぐ個室用の掛け布団カバーの支払いをするつもりだったのに)
探す手が止まりぼう然とするアリシャの横からココが顔を出し、辺りを熱心に嗅ぎ回っている。
「誰か……私以外の人の臭いがするのね」
それが誰なのか知りたいが、ここ数日は宿屋に客は来ていないことを考えると、知るのが怖かった。村の人を疑いたくない。でも、金は返してほしい。アリシャはどうしたらいいのか一所懸命頭を働かせようとした。
「ココ……どうしよう。変に疑って、間違えたりしたら──」
アリシャが部屋に居なかったのは皆知っているし、アリシャと一緒にいたユーリすら盗み出す時間は十分にあった。
(でも、一人でなんとかするのは無理だわ……。泣き寝入り出来る金額でもないし)
三銀貨近くここに入っていたのだ。これはドクへ野菜の支払いをするにも必要な金だった。
アリシャは立ち上がり、一番近くに居るであろうレゼナを頼ることにした。誰一人として疑いたくないが事実、金は消えている。巾着だけあるならば盗まれた以外にないだろう。
飛び出したキノコを拾うとカゴに投げ入れてユーリが唐突にエドを出す。不意打ちにアリシャが動きを止める。
「なんで、エドなの?」
「アリシャとエドはそういう仲なんだってリアナが言ってた。そういう仲ってなんのことだよ、わかんない」
「ち、違うから。エドとはそういう仲じゃないってば」
「だからそういう仲って何さ。あ、あそこにヤマドリダケ見っけ」
自分で切り出しておいて、子供らしい心変わりをみせ、キノコ狩りに戻ってしまった。確かに走っていったところにヤマドリダケが見えている。
(リアナには言っておかなきゃ。エドとはなんでもないんだし、そんなことが他の大人の耳に届いたら困るもの。エド本人なんかに言われたら……)
想像しただけでアリシャは赤面して、隠すために俯いた。
(困る、困る。やだやだ恥ずかしい)
そんな事を考えていたからなのか、弓を担いだエドと村の入口でばったり出くわした時、無駄に余計なことを考えないように必死だった。空なんか仰ぎ見て「何やってんだ?」とエドに怪訝そうに言われてしまった。
「いや、あの、空が……綺麗? だなぁと」
「はぁ?」
エドの反応はもっともだ。今日は薄暗い曇天なのだから。アリシャは咳払いをしてから隣にいるユーリに先に行っててほしいと伝えた。ユーリも不思議そうな顔をしたが、とりあえずここは言うことを聞いてキノコ入のカゴを運んでいった。
「えっと……それで弓を担いでどこに?」
「キノコ狩りにな」
「ウソだー」
エドは肩を上げて「じゃあ聞くなよ。お前どうかしてるぞ?」と、アリシャの横を通り過ぎようとした。
「狩り! か、狩りなら私も行きましょうか? また猪が突進してきたら──」
エドの右眉がクイッと持ち上がる。
「まだ力をコントロールできない癖によくいうよ。俺は一人の方が安全にやれる。お前が居ると集中出来ない」
断られると思っていてもなんだか悲しかった。それが伝わったのか「そういう顔はやめろ」と言われる始末。
「俺で暇つぶしをするな。ボリスがいるだろ?」
「あ、ボリス! どうしてボリスを誘わないの? 忙しいから?」
二人は狩り仲間らしいし、とにかくこの間のこともありアリシャは一人で狩りに行かないで欲しかった。
「それが見当たらないんだよなぁ。ま、旅人が狼をこの近くで見たって言うからそれをやるだけだし、一人でやれるけど」
「それならやはり私が──」
エドは片手でアリシャを追い払う仕草をした。
「やめとけ、やめとけ。また暴走したら困るだろ。それに野宿だ、連れてけねぇよ」
ぐうの音も出ない。胸の前で握り締めた拳に力がこもる。心配だからといってついていくのはどう考えても逆効果だった。足手まといにしかならない。
「ボリスを見たら……エドは狩りに行ったと伝えるわね」
あわよくば後を追って狩りに行ってくれれば心強い。
「いいって。……あんまりボリスに肩入れすんなよ」
引っ掛かりを覚えて「肩入れ?」とオウム返しをするが、エドはいつものように核心には触れずに手を振って出掛けてしまった。
エドは狩りには慣れているらしい。確かに弓を引く姿は様になっているし、二の腕や肩周りの筋肉は息を呑むほど美しい。訓練の賜物なのだろう。エドを信じ、自分の我儘を押さえ付けて見送った。ただ今夜は長い夜になる予感がしていた。
その予感が予想とは違った理由で的中することになろうとは……。
エドを見送った後、料理部屋に行くとキノコのカゴだけ置かれていてユーリの姿はなかった。大方、誰かに違う仕事を貰い精を出しているのだろう。後でキノコ狩りの手伝いのお礼を渡さなければと、アリシャはいつも下げているポーチの中を漁ったが生憎銀貨しか入っていなかった。
銅貨のやり取りは億劫だとリリーに言われ、最近は売上を記録してくれていて、銀貨に届くと精算ということになっていた。これはアリシャの品物の評判が良い事と、リリーとの信頼関係が構築できた証だからアリシャにとって嬉しい事柄だったが、こんな風に手間賃を渡したい時は困るのだ。
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(え……?)
部屋に入るとアリシャは口を思わず手で覆った。血の気が引き、悪い夢を見ている感覚に頭が真っ白になる。
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(ない、ない、私のお金……)
シーツを全て出して挟まったり隠れてしまっているのではないかと探してみるが、出てきたのは空の巾着のみ。
(そんな……もうすぐ個室用の掛け布団カバーの支払いをするつもりだったのに)
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(でも、一人でなんとかするのは無理だわ……。泣き寝入り出来る金額でもないし)
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