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熱々干しぶどうとリンゴのパイ
熱々干しぶどうとリンゴのパイ3
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リンゴと洋ナシの木が並ぶ場所までやってきた。既にドクとレゼナが脚立をたてて作業していた。その二人の間を行ったり来たりするリアナとユーリ。二人は大人並みには働けないが雑用係としてかなり重宝がられていた。
それにしても真っ赤なリンゴも、下膨れした愉快な形の洋ナシもそれはそれは凄い量だった。どちらも摘み取られた分だけでも山になっている。それでも木々にはまだまだたわわに実がぶら下がっていた。
「アリシャー! 待っていたわ。そっちの山から完熟して日持ちしないものと、虫食いとか傷ものを選別してちょうだい。全部あげるわ」
レゼナは寛大にもそう叫ぶが、アリシャは貰えるものが大量にあることを知っていた。どんなに気をつけていても果実の収穫には傷ものが出てしまう。半分かそれ以上傷ものの可能すらあるのだ。
「レゼナさん、それはダメです。お支払いしますから!」
えーと渋るレゼナの横から、手を止めたドクが二人の会話に加わった。
「そうだぞ、レゼナ。どの村人にも公平に売買しなきゃならん。よし、傷ものなんかを全部で百銅貨でどうだ?」
てのひらサイズのベリーパイが十銅貨になる。十個で元が取れる計算だ。しかし、予想ではパイにしたら千個は余裕で作れるだろう。
「五百銅貨。いえ、八百お支払いします!」
レゼナは「五百よ。五百にしましょう」と、アリシャではなくドクを見て値段を決めた。これはドクに文句はないでしょうという意味だったらしい。
二人が納得してくれたので五百銅貨で途方もない量のリンゴと洋ナシを手に入れることになった。これから暖炉代を払わなければならないアリシャにとって、かなり有り難いものだが、全部加工することを考えると目眩がした。
とにかく傷ものと完熟しているものを選別して、カゴに入れていく。後から来たエドが山になったものを一つ抱えて、次は荷車を引いたスリを連れてくると言うので快諾した。斜面を下りていくエドを見送ると、自分用のだけを手前に取り出し始めた。
「凄い量ね、アリシャ。何を作るの?」
新たな山を築きながらリアナが聞いてきた。
「パイでしょ。ジャムでしょ。コンポートも作るわ」
「楽しみ! レゼナさんは残ったものの半分は食料庫に入れて、あとはリンゴ酒にするんだって」
そこにやはり山を大きくしにきたユーリが加わる。
「リンゴ酒って何が美味いんだろ? 苦くて喉がクワーって焼けたみたいになるじゃないか」
リアナはユーリに「あらぁお子様ね。リンゴ酒は美味しいのよ?」と勝ち誇ってみせる。
アリシャはリアナがリンゴ酒を口にして、酷い顔をしていたのを見たことがあったので笑いを噛み殺した。ちょっと背伸びしたい時がアリシャにもあったことを思い出したりもしていた。
「いいから、いいから。手を休めていたら日が暮れちゃうでしょ。お賃金を頂いているんだから働いて働いて」
二人は小競り合いをしながら作業に戻っていった。アリシャも気が遠くなるような選別をして、気持ちが萎える保存作業をしなければならない。
持ち帰った果実は全て洗って、痛んだ部分と芯を取り除いていく。そこから煮込んだりするのだから一日では到底おわらない。それなのに、アリシャの受け持ったリンゴたちは刻々と痛んでいくのだ。
(まずはジャム。次に大きめに切ったコンポート。次にパイね)
しばらくすると一度荷を置きに行ってくれたエドが、荷車をつけたスリとアヴリルを連れて斜面を上がってきた。
「アヴリル。どうしたの?」
身重のアヴリルが上がってきたのには理由があるのだと思って問うと、アヴリルは手伝いをすると言う。
「え! だって……大丈夫なの? ボリスは寝てた方がいいって──」
「ボリスは心配性なのよ。それにレゼナさんから少しは動いたほうが赤ちゃんの為になるって教えて貰ったの」
脚立の上から「そうよー。走ったり転んだりしなければ動いていた方がいいのよ」と、レゼナが叫ぶ。
「選別ならそんなに動かないしやれるわ。是非やらせて。そうしたらアリシャは料理に進めるじゃない?」
それはそうなのだが、ボリス程ではないがアリシャも心配性なのかもしれない。手伝ってもらって何かあったらと思うと気が気でない。
悩んでいると荷台にリンゴを積んでいたエドが「やらしてやれよ。可哀想だろ」と口を挟んできた。
まるで意地悪をしてやらせてあげてないみたいな言い方にアリシャはムッとした。
「もちろん、出来るなら……って、本当に大丈夫? 私は出産の経験がないからわからないけど、アヴリルが平気なら喜んでやってもらいたいわ」
苛立ちからツンケン言ってしまったのを途中から恥じて、態度を軟化させた。すると、アヴリルの表情が晴れ渡って「嬉しい、やらせて!」と元気に答えた。
それならと、アリシャはどんな基準でリンゴと洋ナシを選んでいたのかアヴリルに伝えた。アヴリルが直ぐに要領を飲み込み、引き受けてくれたお陰でアリシャはスリの荷台に荷物を積み終えたエドと共に斜面を下りていくことになった。
「良かったろ? アヴリルに頼んで」
麦畑の間を歩き始めると、開口一番エドがそう言い放った。それがまたアリシャの癇に障る。
「私だって頼めるなら頼むわ。アヴリルの事が心配だったから迷ったのよ!」
「ほんとか? 嘘くせえ」
「意味分かんない! なんで嘘くさいになるの? エドだってよくわかんないくせに」
地団駄を踏みたくなるのを我慢したが、思わず荷台を叩いてしまってビリビリと腕が痺れた。もちろんスリも驚いて振り返るし、散々だ。
それにしても真っ赤なリンゴも、下膨れした愉快な形の洋ナシもそれはそれは凄い量だった。どちらも摘み取られた分だけでも山になっている。それでも木々にはまだまだたわわに実がぶら下がっていた。
「アリシャー! 待っていたわ。そっちの山から完熟して日持ちしないものと、虫食いとか傷ものを選別してちょうだい。全部あげるわ」
レゼナは寛大にもそう叫ぶが、アリシャは貰えるものが大量にあることを知っていた。どんなに気をつけていても果実の収穫には傷ものが出てしまう。半分かそれ以上傷ものの可能すらあるのだ。
「レゼナさん、それはダメです。お支払いしますから!」
えーと渋るレゼナの横から、手を止めたドクが二人の会話に加わった。
「そうだぞ、レゼナ。どの村人にも公平に売買しなきゃならん。よし、傷ものなんかを全部で百銅貨でどうだ?」
てのひらサイズのベリーパイが十銅貨になる。十個で元が取れる計算だ。しかし、予想ではパイにしたら千個は余裕で作れるだろう。
「五百銅貨。いえ、八百お支払いします!」
レゼナは「五百よ。五百にしましょう」と、アリシャではなくドクを見て値段を決めた。これはドクに文句はないでしょうという意味だったらしい。
二人が納得してくれたので五百銅貨で途方もない量のリンゴと洋ナシを手に入れることになった。これから暖炉代を払わなければならないアリシャにとって、かなり有り難いものだが、全部加工することを考えると目眩がした。
とにかく傷ものと完熟しているものを選別して、カゴに入れていく。後から来たエドが山になったものを一つ抱えて、次は荷車を引いたスリを連れてくると言うので快諾した。斜面を下りていくエドを見送ると、自分用のだけを手前に取り出し始めた。
「凄い量ね、アリシャ。何を作るの?」
新たな山を築きながらリアナが聞いてきた。
「パイでしょ。ジャムでしょ。コンポートも作るわ」
「楽しみ! レゼナさんは残ったものの半分は食料庫に入れて、あとはリンゴ酒にするんだって」
そこにやはり山を大きくしにきたユーリが加わる。
「リンゴ酒って何が美味いんだろ? 苦くて喉がクワーって焼けたみたいになるじゃないか」
リアナはユーリに「あらぁお子様ね。リンゴ酒は美味しいのよ?」と勝ち誇ってみせる。
アリシャはリアナがリンゴ酒を口にして、酷い顔をしていたのを見たことがあったので笑いを噛み殺した。ちょっと背伸びしたい時がアリシャにもあったことを思い出したりもしていた。
「いいから、いいから。手を休めていたら日が暮れちゃうでしょ。お賃金を頂いているんだから働いて働いて」
二人は小競り合いをしながら作業に戻っていった。アリシャも気が遠くなるような選別をして、気持ちが萎える保存作業をしなければならない。
持ち帰った果実は全て洗って、痛んだ部分と芯を取り除いていく。そこから煮込んだりするのだから一日では到底おわらない。それなのに、アリシャの受け持ったリンゴたちは刻々と痛んでいくのだ。
(まずはジャム。次に大きめに切ったコンポート。次にパイね)
しばらくすると一度荷を置きに行ってくれたエドが、荷車をつけたスリとアヴリルを連れて斜面を上がってきた。
「アヴリル。どうしたの?」
身重のアヴリルが上がってきたのには理由があるのだと思って問うと、アヴリルは手伝いをすると言う。
「え! だって……大丈夫なの? ボリスは寝てた方がいいって──」
「ボリスは心配性なのよ。それにレゼナさんから少しは動いたほうが赤ちゃんの為になるって教えて貰ったの」
脚立の上から「そうよー。走ったり転んだりしなければ動いていた方がいいのよ」と、レゼナが叫ぶ。
「選別ならそんなに動かないしやれるわ。是非やらせて。そうしたらアリシャは料理に進めるじゃない?」
それはそうなのだが、ボリス程ではないがアリシャも心配性なのかもしれない。手伝ってもらって何かあったらと思うと気が気でない。
悩んでいると荷台にリンゴを積んでいたエドが「やらしてやれよ。可哀想だろ」と口を挟んできた。
まるで意地悪をしてやらせてあげてないみたいな言い方にアリシャはムッとした。
「もちろん、出来るなら……って、本当に大丈夫? 私は出産の経験がないからわからないけど、アヴリルが平気なら喜んでやってもらいたいわ」
苛立ちからツンケン言ってしまったのを途中から恥じて、態度を軟化させた。すると、アヴリルの表情が晴れ渡って「嬉しい、やらせて!」と元気に答えた。
それならと、アリシャはどんな基準でリンゴと洋ナシを選んでいたのかアヴリルに伝えた。アヴリルが直ぐに要領を飲み込み、引き受けてくれたお陰でアリシャはスリの荷台に荷物を積み終えたエドと共に斜面を下りていくことになった。
「良かったろ? アヴリルに頼んで」
麦畑の間を歩き始めると、開口一番エドがそう言い放った。それがまたアリシャの癇に障る。
「私だって頼めるなら頼むわ。アヴリルの事が心配だったから迷ったのよ!」
「ほんとか? 嘘くせえ」
「意味分かんない! なんで嘘くさいになるの? エドだってよくわかんないくせに」
地団駄を踏みたくなるのを我慢したが、思わず荷台を叩いてしまってビリビリと腕が痺れた。もちろんスリも驚いて振り返るし、散々だ。
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