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チキンソテー、レモンソース添え
チキンソテー、レモンソース添え3
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「ウィンが結婚するときにエドが自分のせいで結婚を焦るなんて許さないって言ったんでしょう?」
そこまで話すとアリシャは食料庫にカゴを置いて出て来た。次は黄色のレモンが山程入ったカゴを持ったウィンが扉まで来て「これ最後、ありがとね」と食料庫に入っていく。そして出て来ると麦わら帽子を押し上げて額を掻いた。
「やっぱり忘れてなかったか」
「ええ、ずっと気になってたの」
ウィンは迷う仕草を見せたが、結局は腕を組んで食料庫の外壁に寄りかかった。
「よくある話だよ。エドはさ、実はドクとレゼナの本当の子供じゃないんだ」
それは想像した答えの中には入っていなかった。驚きを隠せないアリシャにウィンは優しく下がった目で笑いかけた。
「驚くか、まぁそうだよね。僕たちは家族だと思っているしそう接してきたから。でもエドはいつだってどこか遠慮してるんだ。僕の目を気にして二人に甘えることもなかったし、とにかく実子の僕に申し訳ないって思ってるのが伝わってくるんだよね」
ウィンは壁に寄りかかったまま、足元の土を蹴り話を続けていく。
「そんなんだから、段々ギクシャクしちゃってね。それをレゼナが悲しんでいるのもわかってて……で、僕はいつしかやたらと家を出たいと思うようになっていたんだ」
ウィンは寄り掛かるのをやめ、帽子を被り直した。
「アヴリルの事は、今は心から愛しているし結婚したことに後悔はないんだ。あの頃も好きだったけど今は愛してる。だから、結婚を急いだのは運命だったと思っているんだ。エドがもし僕のことで気にかけているなら、そう言ってくれ。背中を押してくれて感謝してるし、やっともう一度兄弟としてやり直せるような気がするって」
「エドとはその事を話したことはないの。でも話す機会に恵まれたら伝えておくわね」
ウィンは優しく下がった目を更に下げて「本当に聞かなかったことにしてくれてたんだね」と微笑んだ。
「我慢できずにこうして聞いてしまったけどね」
アリシャも微笑み返すと、ウィンはいいんだと許してくれた。
「手伝わせて悪かったね。うちの話したがりの奥さんには一応内緒にしておいてくれよ。リリーといい店をやる人は話が好きで困るよ」
ホントねと笑うと、ウィンは荷車を掴み引きながら「エドは扱いにくいけど良い奴だからさ、よろしくね」と去っていった。
ウィンは本当にドクに似ている。しかし、振り返って見ればレゼナとエドは親子である思い込みから似てると思っていた節があった。じっくり二人の顔を思い浮かべれば違う所ばかりだ。
虫食いのレモンをウィンが何個もくれたのでそれを持って料理部屋に入っていった。炉の横にあるテーブルには確かに肉が届けられていて、テーブルの足元にはドクから届く野菜のカゴが置いてあった。
カゴを漁り始めると音で気が付いたココが喜び勇んで駆けてきてカゴを覗く。
「あなたが好きなものは入っていないんじゃないかしら?」
間引いた可愛らしい人参を取り出してココに見せると尻尾を振る。お次に洋ナシを取り上げてこれもココに嗅がせるとやはり尻尾を振る。
「なんにでも尻尾を振るのね」
呆れて言ったアリシャにも喜んで尻尾をブンブン振り回すのだから、ココにとっては呼吸するのと同じことなのかもしれない。
取り敢えず、今夜のメニューはチキンソテーに決めた。アヒルの肉を食べやすいサイズに切って塩を振っておく。これは暫くこのまま染み込ませておいてレモンを丁寧に洗っていく。
「アリシャ、お客さんだよ」
戸口に来て声を掛けてくれたボリスにお礼をいい、手を洗って広間に出た。
そこには若い女が立っていて熱心にボリスとエドの働きを見つめていた。付け袖にレースがふんだんに使われていて、豪華な服を身に纏っている。
「いらっしゃいませ。お泊りでよろしかったですか?」
振り返ったその人は黒とも茶色ともいえる長い髪を揺らしアリシャを見た。広間は暗いが女性の瞳の色がブルーなのはよくわかった。
「ええ、一番いい部屋にして」
一番と言われても部屋は大部屋か個室しかない。
「個室で一泊二百五十銅貨で夕食が付きます」
「どの部屋?」
アリシャが三つある個室の一番東側の部屋に案内するとその人はフンと鼻を鳴らす。
「もうちょっとマシかと思ったわ。宿屋はここしかないのよね?」
「半日ほど歩くともう少し大きな村があって──」
手を振ってそれ以上聞く必要もないとばかりに話を遮った。
「お金は先払いです」
アリシャは客とはいえ、なんだかこの人と話しているのが苦痛に感じ始めていた。
「幾らだったかしら?」
アリシャが値段を言ったのはたった今なのに、聞いていなかったらしい。
「一泊食事付き二百五十銅貨です」
もう一度伝えると、女性は巾着を探り銀貨を一枚出し、ポイッと投げた。アリシャは慌てて手を出し受け止めた。
「暫く世話になるから釣りはいらないわ」
はぁと腑抜けた返事をして、受け取った金を自分のポシェットに入れた。
「夕飯の時、お声がけしますね」
女性はツンと鼻を上げてスタスタと部屋に入っていった。とても華やかな雰囲気の人なのにあまりにトゲトゲしていて勿体と思ったアリシャだが、客に対して何かと思うのも無駄なので料理部屋に戻っていった。
(お供も連れないでどこから来たのかしら? それとも豪華なのは服だけ? いえ、個室に泊まるくらいだものきっとお金のある家の人よね)
アリシャはレモンの皮を剝いて半分に切ると、果汁を絞っていく。銀貨を投げて寄越したことを思い出すとギュッと手に力が入って良い感じに果汁が滴る。一緒に種も飛び出してくるのでそれは取り出して屑入れに投げ入れた。
そこまで話すとアリシャは食料庫にカゴを置いて出て来た。次は黄色のレモンが山程入ったカゴを持ったウィンが扉まで来て「これ最後、ありがとね」と食料庫に入っていく。そして出て来ると麦わら帽子を押し上げて額を掻いた。
「やっぱり忘れてなかったか」
「ええ、ずっと気になってたの」
ウィンは迷う仕草を見せたが、結局は腕を組んで食料庫の外壁に寄りかかった。
「よくある話だよ。エドはさ、実はドクとレゼナの本当の子供じゃないんだ」
それは想像した答えの中には入っていなかった。驚きを隠せないアリシャにウィンは優しく下がった目で笑いかけた。
「驚くか、まぁそうだよね。僕たちは家族だと思っているしそう接してきたから。でもエドはいつだってどこか遠慮してるんだ。僕の目を気にして二人に甘えることもなかったし、とにかく実子の僕に申し訳ないって思ってるのが伝わってくるんだよね」
ウィンは壁に寄りかかったまま、足元の土を蹴り話を続けていく。
「そんなんだから、段々ギクシャクしちゃってね。それをレゼナが悲しんでいるのもわかってて……で、僕はいつしかやたらと家を出たいと思うようになっていたんだ」
ウィンは寄り掛かるのをやめ、帽子を被り直した。
「アヴリルの事は、今は心から愛しているし結婚したことに後悔はないんだ。あの頃も好きだったけど今は愛してる。だから、結婚を急いだのは運命だったと思っているんだ。エドがもし僕のことで気にかけているなら、そう言ってくれ。背中を押してくれて感謝してるし、やっともう一度兄弟としてやり直せるような気がするって」
「エドとはその事を話したことはないの。でも話す機会に恵まれたら伝えておくわね」
ウィンは優しく下がった目を更に下げて「本当に聞かなかったことにしてくれてたんだね」と微笑んだ。
「我慢できずにこうして聞いてしまったけどね」
アリシャも微笑み返すと、ウィンはいいんだと許してくれた。
「手伝わせて悪かったね。うちの話したがりの奥さんには一応内緒にしておいてくれよ。リリーといい店をやる人は話が好きで困るよ」
ホントねと笑うと、ウィンは荷車を掴み引きながら「エドは扱いにくいけど良い奴だからさ、よろしくね」と去っていった。
ウィンは本当にドクに似ている。しかし、振り返って見ればレゼナとエドは親子である思い込みから似てると思っていた節があった。じっくり二人の顔を思い浮かべれば違う所ばかりだ。
虫食いのレモンをウィンが何個もくれたのでそれを持って料理部屋に入っていった。炉の横にあるテーブルには確かに肉が届けられていて、テーブルの足元にはドクから届く野菜のカゴが置いてあった。
カゴを漁り始めると音で気が付いたココが喜び勇んで駆けてきてカゴを覗く。
「あなたが好きなものは入っていないんじゃないかしら?」
間引いた可愛らしい人参を取り出してココに見せると尻尾を振る。お次に洋ナシを取り上げてこれもココに嗅がせるとやはり尻尾を振る。
「なんにでも尻尾を振るのね」
呆れて言ったアリシャにも喜んで尻尾をブンブン振り回すのだから、ココにとっては呼吸するのと同じことなのかもしれない。
取り敢えず、今夜のメニューはチキンソテーに決めた。アヒルの肉を食べやすいサイズに切って塩を振っておく。これは暫くこのまま染み込ませておいてレモンを丁寧に洗っていく。
「アリシャ、お客さんだよ」
戸口に来て声を掛けてくれたボリスにお礼をいい、手を洗って広間に出た。
そこには若い女が立っていて熱心にボリスとエドの働きを見つめていた。付け袖にレースがふんだんに使われていて、豪華な服を身に纏っている。
「いらっしゃいませ。お泊りでよろしかったですか?」
振り返ったその人は黒とも茶色ともいえる長い髪を揺らしアリシャを見た。広間は暗いが女性の瞳の色がブルーなのはよくわかった。
「ええ、一番いい部屋にして」
一番と言われても部屋は大部屋か個室しかない。
「個室で一泊二百五十銅貨で夕食が付きます」
「どの部屋?」
アリシャが三つある個室の一番東側の部屋に案内するとその人はフンと鼻を鳴らす。
「もうちょっとマシかと思ったわ。宿屋はここしかないのよね?」
「半日ほど歩くともう少し大きな村があって──」
手を振ってそれ以上聞く必要もないとばかりに話を遮った。
「お金は先払いです」
アリシャは客とはいえ、なんだかこの人と話しているのが苦痛に感じ始めていた。
「幾らだったかしら?」
アリシャが値段を言ったのはたった今なのに、聞いていなかったらしい。
「一泊食事付き二百五十銅貨です」
もう一度伝えると、女性は巾着を探り銀貨を一枚出し、ポイッと投げた。アリシャは慌てて手を出し受け止めた。
「暫く世話になるから釣りはいらないわ」
はぁと腑抜けた返事をして、受け取った金を自分のポシェットに入れた。
「夕飯の時、お声がけしますね」
女性はツンと鼻を上げてスタスタと部屋に入っていった。とても華やかな雰囲気の人なのにあまりにトゲトゲしていて勿体と思ったアリシャだが、客に対して何かと思うのも無駄なので料理部屋に戻っていった。
(お供も連れないでどこから来たのかしら? それとも豪華なのは服だけ? いえ、個室に泊まるくらいだものきっとお金のある家の人よね)
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