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キャベツの塩漬け入りマスのほかほかシチュー
キャベツの塩漬け入りマスのほかほかシチュー3
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板に石灰を塗り付けてある壁ではどうしたって石造りには敵わない。これまでなんの不満もなかったので素材の差を感じたことはなかった。
「だから私だけ寒がっていたんですね」
「これまでの冬ならそれでも耐えられた気がす──」
レゼナがそこまで話すと「まぁ」と階段の方を見て声をあげた。レゼナはドクが二階で寝たことをアリシャ同様知らなかったらしい。もしくは降りてきたドクの顔が青かったから驚いたのかもしれない。
「あー、やめてくれ……声が響く」
弱々しくレゼナに懇願するドクに、レゼナは腰に手を当てて顔をしかめてみせた。
「もしかして、二日酔いなの?」
「あー……その半分の大きさで話してくれよ」
ドクの後から階段を降りてきたウィンの顔色も冴えない。
「やだ! 親子揃って二日酔い?」
奥歯で石でも噛んでしまったみたいな顔をしたウィンが「母さん、声のボリューム……」と呻いた。
アヴリルは心配してウィンに歩み寄って行ったが、レゼナは「弱い癖にお酒が好きとかおかしいわよ。飲んだら二日酔いになるって何回繰り返せばわかるの!」と、呆れ返っていた。
「わかったから小声で頼むよ、レゼナ」
一人だけ火の番として残っていた兵士が手を貸し、二人は暖炉の前にある長椅子に腰掛けた。
「あったけーが、温められると気持ちわりぃな……」
本当に嫌になっちゃうとボヤくレゼナが次々に降りてくる面子を気にして、体調が悪そうに項垂れるドクの肩を叩く。
「ねぇ、足らないわ。エドも体調悪くて寝ているの? ボリスも居ないわね」
「んあ? 起きたときから居なかったぞ」
事情を知っているアリシャがドクを気遣い小声で「動物たちの世話に──」と言うと「ん?」と聞こえなかったらしいドクが顔を上げた。
「動物たちの世話にいきました!」
二度目はいつものトーンで言うと、ドクが頭を抱えていた。
「風は強そうだが雪は降っておらんのだな……」
ボソボソとドクが呟くので「吹雪いています」と今度もハッキリと言ったらドクがまた頭を抱えた。
「そんなに降っているのね。無事に辿り着けたのかしら? 夜のうちにロープを張っておいたみたいだしなんとかなったのかしらね」
レゼナは外を気にして広間の窓を見つめるがここも雪がついてしまっていた。
「それがその……私が力を使ってトンネルを作ったので、たぶん家畜小屋まで行くのは大変ではないと思います」
ドクとレゼナは顔を見合わせてから、レゼナが「スゴイわね。そんな使い方もできるなんて」と驚いていた。
「エドは嫌そうでした……」
「そう。あの子の人生を考えたら魔力を嫌う気持ちはわからなくはないわね」
それはアリシャも理解しているつもりだった。でも、エドや村の人達が少しでも快適に過ごせるなら使用したいとも思ってしまう。
天から授かった能力を皆のために使いたいと思うが、どうしても不機嫌なエドを思い出すと気持ちが萎えてしまう。
「アリシャ。あなたが使うべき時だと思ったら力を使うべきだわ。私はアリシャの判断を信じてる」
「午後は俺も恩恵に授かって家畜の世話にいくよ……悪いが水を貰えるか?」
ドクに言われてアリシャが料理部屋に向かおうとしたら、私達も顔を洗うと女たちがついてきた。まるでお喋りが楽しくて仕方がない小鳥のように昨日は楽しかったと盛り上がる声に、ドクとウィンがギュッと瞼を閉じて耐えていた。
それから昨晩の残りで軽い食事を済ませると、レゼナとアヴリルは揃って針仕事を始めた。エクトルからファーブーツの注文を受けているのだという。しかも兵士全員分と、もちろんエクトルとイザクの分もだ。リアナも教えてもらいながら手伝うというのでアリシャだけ料理部屋に戻って仕事をすることになった。
(いいなぁ、おしゃべりしながら仕事ができて)
後ろ髪を引かれながら料理部屋に入ると、普段は互いに無視を決め込んでいるココとキティーが並んで座っていた。
「あら、仲良くなれたの?」
言葉を理解しているのかココはそっぽを向いたし、キティーは聞こえなかったと言わんばかりに身体舐め始めた。
先日捕れたマスを内蔵だけ取り除いて通路に吊るしてあったので、それを取って来ると今度は二匹とも申し合わせたようにアリシャに熱視線を送ってきた。
「なるほど、わかった。あなたたちお腹が空いたのね」
キレイな水に浸して凍った魚を解凍すると、慣れた手付きでおろしていく。皮の部分はキティーに、骨はココの前に置いてやると二匹とも直ぐに食べ切ってしまった。
「もうちょっと待ってて。いい子に待てたら特別に身も少しつけてあげるから」
話を理解したようで、二匹とも次のご馳走を大人しく待っていた。やや手持ち無沙汰も手伝ってか、キティーはひたすら手を舐めて待っていた。ココはココでずっと尻尾を左右に振って存在をアピールし続けていた。
そこにドヤドヤと家畜の世話をしてきた一行が戻ってきたので、アリシャは食事の下ごしらえを中断し、他の皆と同じように昨晩の食事の残りを出した。
「君のお陰で最高に楽だった」
兵士の一人に褒められて嬉しさはあったがエドが気になりチラチラ様子を窺ってしまった。エドはアリシャを見ることはなく、怒っているのか関心を失っているのか、どちらとと判断がつかない。
(嫌われてしまったのかしら……)
しょげ返るアリシャをボリスが見ているなどつゆ知らず、食事の用意をしていくのだった。
「だから私だけ寒がっていたんですね」
「これまでの冬ならそれでも耐えられた気がす──」
レゼナがそこまで話すと「まぁ」と階段の方を見て声をあげた。レゼナはドクが二階で寝たことをアリシャ同様知らなかったらしい。もしくは降りてきたドクの顔が青かったから驚いたのかもしれない。
「あー、やめてくれ……声が響く」
弱々しくレゼナに懇願するドクに、レゼナは腰に手を当てて顔をしかめてみせた。
「もしかして、二日酔いなの?」
「あー……その半分の大きさで話してくれよ」
ドクの後から階段を降りてきたウィンの顔色も冴えない。
「やだ! 親子揃って二日酔い?」
奥歯で石でも噛んでしまったみたいな顔をしたウィンが「母さん、声のボリューム……」と呻いた。
アヴリルは心配してウィンに歩み寄って行ったが、レゼナは「弱い癖にお酒が好きとかおかしいわよ。飲んだら二日酔いになるって何回繰り返せばわかるの!」と、呆れ返っていた。
「わかったから小声で頼むよ、レゼナ」
一人だけ火の番として残っていた兵士が手を貸し、二人は暖炉の前にある長椅子に腰掛けた。
「あったけーが、温められると気持ちわりぃな……」
本当に嫌になっちゃうとボヤくレゼナが次々に降りてくる面子を気にして、体調が悪そうに項垂れるドクの肩を叩く。
「ねぇ、足らないわ。エドも体調悪くて寝ているの? ボリスも居ないわね」
「んあ? 起きたときから居なかったぞ」
事情を知っているアリシャがドクを気遣い小声で「動物たちの世話に──」と言うと「ん?」と聞こえなかったらしいドクが顔を上げた。
「動物たちの世話にいきました!」
二度目はいつものトーンで言うと、ドクが頭を抱えていた。
「風は強そうだが雪は降っておらんのだな……」
ボソボソとドクが呟くので「吹雪いています」と今度もハッキリと言ったらドクがまた頭を抱えた。
「そんなに降っているのね。無事に辿り着けたのかしら? 夜のうちにロープを張っておいたみたいだしなんとかなったのかしらね」
レゼナは外を気にして広間の窓を見つめるがここも雪がついてしまっていた。
「それがその……私が力を使ってトンネルを作ったので、たぶん家畜小屋まで行くのは大変ではないと思います」
ドクとレゼナは顔を見合わせてから、レゼナが「スゴイわね。そんな使い方もできるなんて」と驚いていた。
「エドは嫌そうでした……」
「そう。あの子の人生を考えたら魔力を嫌う気持ちはわからなくはないわね」
それはアリシャも理解しているつもりだった。でも、エドや村の人達が少しでも快適に過ごせるなら使用したいとも思ってしまう。
天から授かった能力を皆のために使いたいと思うが、どうしても不機嫌なエドを思い出すと気持ちが萎えてしまう。
「アリシャ。あなたが使うべき時だと思ったら力を使うべきだわ。私はアリシャの判断を信じてる」
「午後は俺も恩恵に授かって家畜の世話にいくよ……悪いが水を貰えるか?」
ドクに言われてアリシャが料理部屋に向かおうとしたら、私達も顔を洗うと女たちがついてきた。まるでお喋りが楽しくて仕方がない小鳥のように昨日は楽しかったと盛り上がる声に、ドクとウィンがギュッと瞼を閉じて耐えていた。
それから昨晩の残りで軽い食事を済ませると、レゼナとアヴリルは揃って針仕事を始めた。エクトルからファーブーツの注文を受けているのだという。しかも兵士全員分と、もちろんエクトルとイザクの分もだ。リアナも教えてもらいながら手伝うというのでアリシャだけ料理部屋に戻って仕事をすることになった。
(いいなぁ、おしゃべりしながら仕事ができて)
後ろ髪を引かれながら料理部屋に入ると、普段は互いに無視を決め込んでいるココとキティーが並んで座っていた。
「あら、仲良くなれたの?」
言葉を理解しているのかココはそっぽを向いたし、キティーは聞こえなかったと言わんばかりに身体舐め始めた。
先日捕れたマスを内蔵だけ取り除いて通路に吊るしてあったので、それを取って来ると今度は二匹とも申し合わせたようにアリシャに熱視線を送ってきた。
「なるほど、わかった。あなたたちお腹が空いたのね」
キレイな水に浸して凍った魚を解凍すると、慣れた手付きでおろしていく。皮の部分はキティーに、骨はココの前に置いてやると二匹とも直ぐに食べ切ってしまった。
「もうちょっと待ってて。いい子に待てたら特別に身も少しつけてあげるから」
話を理解したようで、二匹とも次のご馳走を大人しく待っていた。やや手持ち無沙汰も手伝ってか、キティーはひたすら手を舐めて待っていた。ココはココでずっと尻尾を左右に振って存在をアピールし続けていた。
そこにドヤドヤと家畜の世話をしてきた一行が戻ってきたので、アリシャは食事の下ごしらえを中断し、他の皆と同じように昨晩の食事の残りを出した。
「君のお陰で最高に楽だった」
兵士の一人に褒められて嬉しさはあったがエドが気になりチラチラ様子を窺ってしまった。エドはアリシャを見ることはなく、怒っているのか関心を失っているのか、どちらとと判断がつかない。
(嫌われてしまったのかしら……)
しょげ返るアリシャをボリスが見ているなどつゆ知らず、食事の用意をしていくのだった。
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