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プロローグ
待っていて、攻略対象たち
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04
通学しながら、パトリシアは“攻略対象”を物色する。
(こうしてみると、わが学院はきれいどころ揃ってるよね)
生徒につけ教師につけ、美少女、美人といえるルックスの持ち主が多い。
「あ、おはようございます、パトリシアさん。早いですね」
「おはようメリーアンさん。たまにはね」
金髪碧眼の美少女が、朝日に映えてまぶしい笑顔で挨拶して来る。
メリーアン・ハインリヒだった。
クラス委員を務め、成績優秀。明るく社交的で、学園のマドンナともいえる存在だ。
(第一の攻略対象は決まりだね)
パトリシアはそんなことを思う。
「アリサ先生おはようございまーす」
「おはよう、パトリシアさん。
ちょっと背筋が丸いわよ。肩甲骨にぐっと力を入れてみなさい」
「はい。よっと」
校門で、笹穂耳と銀髪、褐色の美しい肌、そして服の上からでもわかる肉感的な体が特徴の女性教師とあいさつを交わす。
彼女はアリサ・セレッティ。
ダークエルフだが、珍しく都会住まいで、この学院の教師も務めている。担当は魔法学。
厳しいが優しい。
決して頭ごなしに叱ったり自分の考えを押し付けたりしない。
何が悪いのか、どうすればいいのか、常に改善点を見極めて的確に指摘する。生徒に対して範を垂れることのできる、教師の鏡だ。
ああ見えて、性格は子供っぽく乗せられやすいところもある。
(生徒と教師の恋愛か。なんだか背徳的でいいじゃないの)
パトリシアは、攻略のリストにアリサをくわえることとした。
「あ、リディアさんじゃないの。
おはよう」
「ああ…。パトリシアさん。
おはようございます」
教室に向かう途中で、最近見なかった顔を見かける。
おさげにしたみずみずしい黒髪と、眼鏡の向こうの紅の瞳が美しい。
そしてなにより、ブラと服では隠しきれない爆乳が目を引く美少女だ。
リディア・ノースロップ。
昨年度まで同じクラスだったが、現在は別だ。
学業成績が抜きんでて良く、前回の定期テストでは学年トップ。その前の前に至っては、全教科学年トップだったことさえある秀才だ。
他の成績優秀者が霞んで見える。
ともあれ、能力とは裏腹に、本人はとても穏やかで大人しい性格をしている。
押しに弱く、頼まれると断れない性格だとわかっている。
「あの…急ぎの用事がありますので…」
リディアはそう言うと、足早に立ち去る。
(なにかあったのか?悪いことでなければいいけど…)
パトリシアは引っかかるものを感じずにはいられないのだった。
体育の時間。
体育館の中では、フェンシングの一進一退の攻防が行われていた。
(いえ、すでに勝負はついている)
立ち合いを観察するパトリシアには確信があった。
彼女の予測は当たる。
互角に見えた勝負は、たちまち一方が畳みかける展開となっていく。
「それまで!」
審判役の生徒の号令が上がる。
一方の選手の剣が、見事相手の胸を突いていたのだ。しかも、顔に飛来した突きを見事かわしながら。
(すごい、太刀筋が全く見えなかった)
パトリシアは素直に感心する。
チェスや将棋と同じで、フェンシングは自分を守りつつ相手を追い込んでいく。
おそらく、三手前ですでにチェックメイトは決まっていたのだろう。
それぐらい完璧だったのだ。
体育館に拍手とともに、女子たちの黄色い声援が響く。
「かっこいい」「素敵」「しびれちゃう」女子たちがうっとりした表情で勝者である選手を称える。
その選手。背が175センチもあり、肩幅も広い。一見すると男かとも思えるが、マスクを外すと短いアッシュブロンドの美貌の女が現れる。
気が強そうな、いわゆるイケメン女子だ。
ターニャ・ワレンスカヤ。
ヴァナディースと呼ばれる天上人の子孫。
体が大きく、身体能力は下手な男など足元にも及ばない。
幼いころから軍人の家の中で、厳しくも愛情を注がれて育った。それゆえに、武人気質だが気配りのできる礼儀正しく優しい少女。
特に女の子に人気が高く、ファンクラブまである。
(彼女が女の子らしくしているところをあまり見ない。ちょっと興味あるかも)
パトリシアは思う。イケメン女子といっても男であるわけではない。
女の子らしい部分はあるはずだ。それを見てみたいと思うのだ。
何はともあれ、パトリシアは“攻略対象”の女の子たちを堕とすべく、行動を開始するのだった。
通学しながら、パトリシアは“攻略対象”を物色する。
(こうしてみると、わが学院はきれいどころ揃ってるよね)
生徒につけ教師につけ、美少女、美人といえるルックスの持ち主が多い。
「あ、おはようございます、パトリシアさん。早いですね」
「おはようメリーアンさん。たまにはね」
金髪碧眼の美少女が、朝日に映えてまぶしい笑顔で挨拶して来る。
メリーアン・ハインリヒだった。
クラス委員を務め、成績優秀。明るく社交的で、学園のマドンナともいえる存在だ。
(第一の攻略対象は決まりだね)
パトリシアはそんなことを思う。
「アリサ先生おはようございまーす」
「おはよう、パトリシアさん。
ちょっと背筋が丸いわよ。肩甲骨にぐっと力を入れてみなさい」
「はい。よっと」
校門で、笹穂耳と銀髪、褐色の美しい肌、そして服の上からでもわかる肉感的な体が特徴の女性教師とあいさつを交わす。
彼女はアリサ・セレッティ。
ダークエルフだが、珍しく都会住まいで、この学院の教師も務めている。担当は魔法学。
厳しいが優しい。
決して頭ごなしに叱ったり自分の考えを押し付けたりしない。
何が悪いのか、どうすればいいのか、常に改善点を見極めて的確に指摘する。生徒に対して範を垂れることのできる、教師の鏡だ。
ああ見えて、性格は子供っぽく乗せられやすいところもある。
(生徒と教師の恋愛か。なんだか背徳的でいいじゃないの)
パトリシアは、攻略のリストにアリサをくわえることとした。
「あ、リディアさんじゃないの。
おはよう」
「ああ…。パトリシアさん。
おはようございます」
教室に向かう途中で、最近見なかった顔を見かける。
おさげにしたみずみずしい黒髪と、眼鏡の向こうの紅の瞳が美しい。
そしてなにより、ブラと服では隠しきれない爆乳が目を引く美少女だ。
リディア・ノースロップ。
昨年度まで同じクラスだったが、現在は別だ。
学業成績が抜きんでて良く、前回の定期テストでは学年トップ。その前の前に至っては、全教科学年トップだったことさえある秀才だ。
他の成績優秀者が霞んで見える。
ともあれ、能力とは裏腹に、本人はとても穏やかで大人しい性格をしている。
押しに弱く、頼まれると断れない性格だとわかっている。
「あの…急ぎの用事がありますので…」
リディアはそう言うと、足早に立ち去る。
(なにかあったのか?悪いことでなければいいけど…)
パトリシアは引っかかるものを感じずにはいられないのだった。
体育の時間。
体育館の中では、フェンシングの一進一退の攻防が行われていた。
(いえ、すでに勝負はついている)
立ち合いを観察するパトリシアには確信があった。
彼女の予測は当たる。
互角に見えた勝負は、たちまち一方が畳みかける展開となっていく。
「それまで!」
審判役の生徒の号令が上がる。
一方の選手の剣が、見事相手の胸を突いていたのだ。しかも、顔に飛来した突きを見事かわしながら。
(すごい、太刀筋が全く見えなかった)
パトリシアは素直に感心する。
チェスや将棋と同じで、フェンシングは自分を守りつつ相手を追い込んでいく。
おそらく、三手前ですでにチェックメイトは決まっていたのだろう。
それぐらい完璧だったのだ。
体育館に拍手とともに、女子たちの黄色い声援が響く。
「かっこいい」「素敵」「しびれちゃう」女子たちがうっとりした表情で勝者である選手を称える。
その選手。背が175センチもあり、肩幅も広い。一見すると男かとも思えるが、マスクを外すと短いアッシュブロンドの美貌の女が現れる。
気が強そうな、いわゆるイケメン女子だ。
ターニャ・ワレンスカヤ。
ヴァナディースと呼ばれる天上人の子孫。
体が大きく、身体能力は下手な男など足元にも及ばない。
幼いころから軍人の家の中で、厳しくも愛情を注がれて育った。それゆえに、武人気質だが気配りのできる礼儀正しく優しい少女。
特に女の子に人気が高く、ファンクラブまである。
(彼女が女の子らしくしているところをあまり見ない。ちょっと興味あるかも)
パトリシアは思う。イケメン女子といっても男であるわけではない。
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