女体化元男子たちとの日常 学園唯一の男子生徒になったけど

ブラックウォーター

文字の大きさ
33 / 51
第四章 感染爆発再び

05 隔離された場所へ

しおりを挟む
「通してくれ! 東金一佐が、隔離施設の視察に来られた!」
 体格のいい女性の一等陸尉が、大きな声で警衛に告げる。
「はっ! お気をつけ下さい! 感染はかなり重篤です!」
 防護服を身につけた一団が、ゾロゾロとエアテントに入って行く。その中には、変装した司もいる。完全な違法行為だ。隔離区画に入る、いかなる根拠も権限もないのだ。
「ごほっ! ごほごほっ! 苦しい……」
「誰か……誰か……お薬を……」
「息が……できない……。お母さん……助けて……」
 中は、さながら地獄だった。
 ひっきりなしに誰かが咳き込む声が聞こえる。司はさすがに怖くなる。だが、すぐに自分を奮い立たせる。
 女の子たちを救うために、なんでもすると決めた。今怖じ気づいたら、自分は男をやめるしかない。
「ここだ」
 ひとつの隔離区画で、東金が足を止める。
 一宮岬。佐倉圭。酒々井連。八千代優輝。大多喜命。
 目当ての名前は同じ部屋の表札に書かれている。同じ寮で発症したのだから、一緒に隔離しておくのが合理的なのだろう。
 長身ボーイッシュな少女、岬が横たわるベッドに近づく。
「岬、俺がわかるか?」
「けほけほ……! え……司……?」
 防護服のゴーグルをのぞき込んだ岬が、驚いた様子になる。
 意を決した司は、防護服のフードを外しにかかる。
「なにを……? ごほっ……司……だめだ……!」
 衰弱している身体で、岬は必死に制止しようとする。だが、少年にためらいはない。
 フードとゴーグルを外し、笑顔を向ける。
「うん……? おいそこ! なにをやってる!? 正気か!?」
 こちらに気づいた看護師が慌てふためく。事情を知らなければ、仰天ものの暴挙だったろう。
「いいんだ! 私が責任を持つ!」
 東金が大声で被せる。
 看護師が渋々引き下がる。美魔女な一佐の、人望の勝利だった。
「岬。すぐ助けてやる。絶対治るから。ちょっとごめんな」
 司は笑顔で、少女に顔を近づけていく。
「司……。んんん……」
 岬が涙を流しながら、キスを受け入れる。涙はうれしさのものか悲しみのものか、司にはわからなかった。
 あまりほめられない行為とは思いながらも、唾液を口いっぱい吐き出し岬の口に流しこでいく。
「また、後でな」
 そう言って、岬のそばを離れる。
 次は命だった。ギャルな少女は、すでに意識を保つことさえしんどいらしい。
「セックス……させてくれるんだろ……? 約束守れよな……」
 そう言って深く唇を重ね、唾液を流し込む。
 今度は優輝のそばに立つ。
「俺には優輝が必要だ。俺を置いて行くなよな……」
 すでに呼吸器無しでは息さえままならない。ゆるふわ系少女は信じられないほど苦しそうだった。深くキスをする。少しでも安心できればいいと。
 その隣は圭だった。
「市原……くん……どうして……?」
「佐倉を助けるためだ。いいから任せろ……」
 圭は、唇を重ねられても目立った反応を示さなかった。それほど弱っているらしい。
 最後は連だった。見るからに顔色が悪く、このままでは危険なのがわかる。
「戻ってこい酒々井……。また、ふたりで古本屋を漁ろう……。ゲームでやられっぱなしのまま終わりは嫌だぜ……」
 聞こえていない様子の連にキスし、唾液を送り込む。
「すんだか?」
「はい」
 神妙な様子の東金に、司はできるだけ明るく答える。
「祈りますか、市原君?」
「祈りなんか必要ないでしょ。ただ、信じるだけです」
 まだ保身を諦め切れない様子の君津に、微笑んで応じる。
「君を隔離しなければならない。いいな?」
「もちろんです。行きましょう」
 司は東金に連れられ、エアテントの別の区画を目指す。
(これで良かったんだよな)
 結果がどうあろうと後悔はない。自分はやりたいようにやった。やるべきと思ったことを。少年は、不思議と充実した気分だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...