40 / 51
第五章 白雪姫の目覚め
02 ギャルと女の子の日の過ごし方
しおりを挟む
数日後。
「でーきた。さあ、見てみ、つかさっち」
「おお……これが……私……?」
命が差し出した鏡を覗いて、つい司は一人称が私になってしまう。
鏡には、見事なギャル風少女が映っていた。
「かわいいよー。つかさっちー!」
「ちょっと盛りすぎじゃないかな……?」
「いいのいいのー。もともとつかさっちはギャルの素質あるんだからさー」
命は司をギャルメイクしたことに、大喜びしている。女体化して以来ギャル仲間に引き入れたがっていた。それが叶ってうれしいのだ。
始まりは、司が生理で鬱々としていたことだった。
『そういうときはコスメだよー』
そう言った命に強引にギャルメイクを施されたのだ。
「女の子の日だからこそ、かわいくする。テンアゲっしょ?」
「うん……そうだな。なんだか気持ちが晴れたかも……」
(あんまり意識しなかったけど……。俺ってかわいい……?)
いつもより大きく見える瞳。キラキラの唇。ほんのりピンクのほお。少し派手だとは思うが、我ながらかわいいと思える。
メイクアップセラピーというのがあったのを思い出す。病気や怪我で気持ちが沈んでいる女性に、化粧を施すことでメンタルケアを行う。女は鏡に映った自分が美しいと、健康にも希望が持てるのだ。
その意味では、命のコスメ作戦は大成功と言えた。さきほどまで下腹部の痛みと変に敏感になった神経のせいで憂鬱だった。それが、すっかり晴れやかな気分になっている。
「よーし! 折角だし出かけるよー! コスメに合うアクセ選んで、その後はオケるぞー!」
「ええ……? このまま出かけるの……?」
司は、さすがにまだギャルメイクで外出するのは恥ずかしかった。
「いーのいーの! こんなにかわいいの、見せびらかさなくてどうするよー!」
「わ……わかったから……」
ハイテンションなギャル美少女に手を引かれ、司は外出するのだった。
慣れないコスメは思った以上に大変だった。うっかり男のころと同じようにおしぼりで顔を拭きそうになる。道行く人々が振り返るのが、すごく気になる。
それでも、命と一緒に服やアクセサリーを選ぶのは楽しかった。
…………………………………………………………………………………………………………「ほんと言うとさ。最初はキャラ作りだったんだよねー」
カラオケボックスの中、歌うのが一段落した命が言う。
「え……なにが……?」
「ギャルなコスメとかアクセとか服。女になったばかりのころは……自分のキャラがわかんなくてさー……。取りあえずギャルっぽくしてたんだよねー……」
いつも明るい命の表情が、少しだけ憂いを帯びる。
(命もやっぱり……女体化して大変だったんだな……)
司はウーロン茶に口をつけながら思う。
自分も女体化した当初は、自身を見失いかけた。命たちがいたおかげで、無理に自分を見つけなくてもいいと安心できた。
「でも今はさー。ギャルな自分がすごく好き。つかさっちがいるからかな?」
ギャルな少女が大輪の花のような笑顔になる。
「そっか。俺も、ギャルな命が好きだよ」
「うん。好きだよ、つかさっち」
自然な感じで、ふたりは笑い合う。
〝好き〟が親愛なのか恋愛感情なのか、よくわからない。
司が女体化して同性になってしまって以来、わからないことだらけだ。
だが、互いにそばに居ると幸せだし、安心する。それは間違いなかった。
「でーきた。さあ、見てみ、つかさっち」
「おお……これが……私……?」
命が差し出した鏡を覗いて、つい司は一人称が私になってしまう。
鏡には、見事なギャル風少女が映っていた。
「かわいいよー。つかさっちー!」
「ちょっと盛りすぎじゃないかな……?」
「いいのいいのー。もともとつかさっちはギャルの素質あるんだからさー」
命は司をギャルメイクしたことに、大喜びしている。女体化して以来ギャル仲間に引き入れたがっていた。それが叶ってうれしいのだ。
始まりは、司が生理で鬱々としていたことだった。
『そういうときはコスメだよー』
そう言った命に強引にギャルメイクを施されたのだ。
「女の子の日だからこそ、かわいくする。テンアゲっしょ?」
「うん……そうだな。なんだか気持ちが晴れたかも……」
(あんまり意識しなかったけど……。俺ってかわいい……?)
いつもより大きく見える瞳。キラキラの唇。ほんのりピンクのほお。少し派手だとは思うが、我ながらかわいいと思える。
メイクアップセラピーというのがあったのを思い出す。病気や怪我で気持ちが沈んでいる女性に、化粧を施すことでメンタルケアを行う。女は鏡に映った自分が美しいと、健康にも希望が持てるのだ。
その意味では、命のコスメ作戦は大成功と言えた。さきほどまで下腹部の痛みと変に敏感になった神経のせいで憂鬱だった。それが、すっかり晴れやかな気分になっている。
「よーし! 折角だし出かけるよー! コスメに合うアクセ選んで、その後はオケるぞー!」
「ええ……? このまま出かけるの……?」
司は、さすがにまだギャルメイクで外出するのは恥ずかしかった。
「いーのいーの! こんなにかわいいの、見せびらかさなくてどうするよー!」
「わ……わかったから……」
ハイテンションなギャル美少女に手を引かれ、司は外出するのだった。
慣れないコスメは思った以上に大変だった。うっかり男のころと同じようにおしぼりで顔を拭きそうになる。道行く人々が振り返るのが、すごく気になる。
それでも、命と一緒に服やアクセサリーを選ぶのは楽しかった。
…………………………………………………………………………………………………………「ほんと言うとさ。最初はキャラ作りだったんだよねー」
カラオケボックスの中、歌うのが一段落した命が言う。
「え……なにが……?」
「ギャルなコスメとかアクセとか服。女になったばかりのころは……自分のキャラがわかんなくてさー……。取りあえずギャルっぽくしてたんだよねー……」
いつも明るい命の表情が、少しだけ憂いを帯びる。
(命もやっぱり……女体化して大変だったんだな……)
司はウーロン茶に口をつけながら思う。
自分も女体化した当初は、自身を見失いかけた。命たちがいたおかげで、無理に自分を見つけなくてもいいと安心できた。
「でも今はさー。ギャルな自分がすごく好き。つかさっちがいるからかな?」
ギャルな少女が大輪の花のような笑顔になる。
「そっか。俺も、ギャルな命が好きだよ」
「うん。好きだよ、つかさっち」
自然な感じで、ふたりは笑い合う。
〝好き〟が親愛なのか恋愛感情なのか、よくわからない。
司が女体化して同性になってしまって以来、わからないことだらけだ。
だが、互いにそばに居ると幸せだし、安心する。それは間違いなかった。
0
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる