女体化元男子たちとの日常 学園唯一の男子生徒になったけど

ブラックウォーター

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第五章 白雪姫の目覚め

02 ギャルと女の子の日の過ごし方

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 数日後。
「でーきた。さあ、見てみ、つかさっち」
「おお……これが……私……?」
 命が差し出した鏡を覗いて、つい司は一人称が私になってしまう。
 鏡には、見事なギャル風少女が映っていた。
「かわいいよー。つかさっちー!」
「ちょっと盛りすぎじゃないかな……?」
「いいのいいのー。もともとつかさっちはギャルの素質あるんだからさー」
 命は司をギャルメイクしたことに、大喜びしている。女体化して以来ギャル仲間に引き入れたがっていた。それが叶ってうれしいのだ。
 始まりは、司が生理で鬱々としていたことだった。
『そういうときはコスメだよー』
 そう言った命に強引にギャルメイクを施されたのだ。
「女の子の日だからこそ、かわいくする。テンアゲっしょ?」
「うん……そうだな。なんだか気持ちが晴れたかも……」
(あんまり意識しなかったけど……。俺ってかわいい……?)
 いつもより大きく見える瞳。キラキラの唇。ほんのりピンクのほお。少し派手だとは思うが、我ながらかわいいと思える。
 メイクアップセラピーというのがあったのを思い出す。病気や怪我で気持ちが沈んでいる女性に、化粧を施すことでメンタルケアを行う。女は鏡に映った自分が美しいと、健康にも希望が持てるのだ。
 その意味では、命のコスメ作戦は大成功と言えた。さきほどまで下腹部の痛みと変に敏感になった神経のせいで憂鬱だった。それが、すっかり晴れやかな気分になっている。
「よーし! 折角だし出かけるよー! コスメに合うアクセ選んで、その後はオケるぞー!」
「ええ……? このまま出かけるの……?」
 司は、さすがにまだギャルメイクで外出するのは恥ずかしかった。
「いーのいーの! こんなにかわいいの、見せびらかさなくてどうするよー!」
「わ……わかったから……」
 ハイテンションなギャル美少女に手を引かれ、司は外出するのだった。
 慣れないコスメは思った以上に大変だった。うっかり男のころと同じようにおしぼりで顔を拭きそうになる。道行く人々が振り返るのが、すごく気になる。
 それでも、命と一緒に服やアクセサリーを選ぶのは楽しかった。
…………………………………………………………………………………………………………「ほんと言うとさ。最初はキャラ作りだったんだよねー」
 カラオケボックスの中、歌うのが一段落した命が言う。
「え……なにが……?」
「ギャルなコスメとかアクセとか服。女になったばかりのころは……自分のキャラがわかんなくてさー……。取りあえずギャルっぽくしてたんだよねー……」
 いつも明るい命の表情が、少しだけ憂いを帯びる。
(命もやっぱり……女体化して大変だったんだな……)
 司はウーロン茶に口をつけながら思う。
 自分も女体化した当初は、自身を見失いかけた。命たちがいたおかげで、無理に自分を見つけなくてもいいと安心できた。
「でも今はさー。ギャルな自分がすごく好き。つかさっちがいるからかな?」
 ギャルな少女が大輪の花のような笑顔になる。
「そっか。俺も、ギャルな命が好きだよ」
「うん。好きだよ、つかさっち」
 自然な感じで、ふたりは笑い合う。
 〝好き〟が親愛なのか恋愛感情なのか、よくわからない。
 司が女体化して同性になってしまって以来、わからないことだらけだ。
 だが、互いにそばに居ると幸せだし、安心する。それは間違いなかった。
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