アンタレス 『電脳世界の恋愛とは』なんて言ってる暇はない

ウエノ ワカ

文字の大きさ
28 / 50
薔薇の香りと剣舞曲

28 私達のアイコン

しおりを挟む
「光の守護の恩寵を……ホーリークロス」

 俺が呪文を唱えた瞬間、俺を中心に直径10mぐらいの青白い光の魔方陣が足元から浮かび上がり、残像を残して俺たちを包み込んだ。

 青白い光に俺とC.Cは包まれて、初めてお互いの姿を見る事が出来た。

(わ、わ、わ、わわわわっ! ローブの中から覗く可愛らしいお顔、青白い光のせいで何色かはわからない髪が無造作に片側に寄せられておっきな目)

「100点!」

「はいっ?」

(エルフしか見てなかったけど、ヒューマンの女の子もマジ可愛いじゃん。彼女にするならこんな娘こが理想だよ……)

「君は45点ぐらいだね」

「えっ?」

「青い光のオーラの補正込みで大甘判定ですけど」

(はぁ? てんめぇ、ちょっと可愛いからって何言ってやがんだっ)

「冗談ですよっ、でもいきなり見た目で点数をつけたりするのは女性にとって失礼だと思った事はないの?」

(えっ。正論過ぎて突き刺さったし。そっ、そうだよね、こんな当たり前な事が分からなくて調子に乗ってネカマを語るなんて馬鹿だよ俺)

「ごめんなさい、もうしません」

「凹んじゃった? 別にいいのに私100点だったし。というか、ラヴィさん」

「何?」

「わかりやすい人だねっ」

(俺って顔にでるタイプなのかな? ロビーちゃんにも似たような事を言われたし)

「そう見える? 他の人にもそう言われたし」

「なんだかいい人なのはわかるよ。でもすぐ騙されそう。ネカマなのに全然他の人を騙せ無い所かとかさ」

(いきなり初対面で的確なご指摘です)

「ほら、黙っちゃった、そんなとこよ」

「いちいちごもっともで、返す言葉もありません」

「こらこらっ、なんでしょげちゃうの。元気出さなきゃ。ネカマでしょっ!」

(いや、男でしょって言わないか?)

「ラヴィさんはわかって無いみたいだから、教えてあげる」

(手取り足取り2人きりで何を?)

「あのねぇ、変な期待をしないの。すぐスケベな顔になるんだから。もう真面目な話、いい?」

「はいっ、大丈夫ですっ復活!」

(なんでもお見通しだよ、この人。すごい)

「ラヴィさんの名前は結構広まっているんだよ。私は電子掲示板のゲーム板で見たし、このエメラルド鯖以外の鯖の板でも話題に上がってたよ」

(この人の前じゃ、ネカマは無理だな。普通に話そうか)

「そうなんですか。嬉しいやらなんやら」

「君がこの鯖に居るから、私はこの鯖を選んだの。この意味がわかる?」

(ネカマの俺をいたぶりたいのかな?)

「あのね、君だけだと思う? ネカマが他に居ないと思ってるの? ねぇ」

「いるかもね、わかんないけど」

「わからないように上手に自分を偽って、ゲームの中で女の子を演じている、それって窮屈だと思った事はない? 仲が良くなったフレンドにバレないように頑張って、でもいつバレてしまうかっていうプレッシャーに押しつぶされそうになった事はない?」

(えっあるよ。それは、そんな事たくさんあったよ俺)

「なんでそんな事わかるんだ? C.C.君もなのか?」

 C.Cが一回息を吸って、俺の目を見た。

(これ以上言うなってことか?)

「ラヴィさん、君はネカマのアイコンになったの。アンタレスの中で、堂々とネカマ宣言した私達ネカマの希望。って言い過ぎかもしれないけど、ネカマのラヴィ、あなたが居るからみんなこの鯖を目指して来る。だから、頑張ってネカマをやってね。挫けないで欲しい」

 ── そう言ってC.Cが俺に近づいて

「えっ、おとこ! ?」

(俺の人生初のくちづけが、ゲームの中の美少女に奪われたーーわわわったぶん、でも男子っ!)

「あはははははっ、私が男なんて一言も言ってないじゃん。なんで涙目になってんのよ、せっかく励ましてあげたのに~」

(絶対嘘だっ! 目の前の女の子は可愛いっ、そうだ俺は大丈夫なはずだっ!)

「はぁはぁはぁはぁ、胸がドキドキする」

「んっ、初めてだったんだ。よしっ!」

「何がよしっ! だよっ。複雑~」

「さぁ、そろそろ動きましょう。こんな地下水路さっさと出ないとね」

「誰も来ないし、これってバグじゃないのかな?」

「ラヴィさん、昨日一緒に居た人とフレンド登録してる?」

「あっそうか、INしてるか見てみるよ。はいっていたら、チャットで話してみる」

「うん、お願い」

(C.Cって、女の子にしか見えないや。違和感がなくて、でも女の子として自分の意見が言えて、本当に素敵な人だな)

 俺はフレンドのウインドゥを開いて、ログインしている人がいないか確認を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

処理中です...