アンタレス 『電脳世界の恋愛とは』なんて言ってる暇はない

ウエノ ワカ

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薔薇の香りと剣舞曲

29 地下水路の出来事

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 俺はフレンドの一覧表を表示させる。そもそも薄っすらとした明かるさでしか無い ⌘ 聖の衣 ⌘ の※バフの青白い光では、今居る地下水路の遠くまで照らす事も出来ず、ほぼ視界は黒で覆われていた。

  視界の中に浮かんで表示されたフレンド一覧を右に移動させてから、モフモフさん、ロビーちゃん、あと巴御前とGMスワンがログインしているか確認する。
  白い字でロビーちゃん、あとの3人がグリーンだ。たぶんグリーンはログインしてるって事だと思う。

  今思い出したけど、そういやGMスワンが家の鍵をアイテムボックスに入れておくとか言ってたよな。メールで家の座標も送るって言ってたし。とりあえずメールを開いてみようか。

 メール受信箱(空)

(空っ、なんだと?)

  普通はここでジタバタするところだが、俺は別に気にしない。なんせ最初の緊急メンテナンス後だし、きっと運営側は徹夜で作業をしてくれていたはずだからな。当然、アイテムボックスに鍵なんて物も入っているわけ無いよな。

(やっぱり無いか…… まあ、いいやっ)

「誰か居る?」

「うん、たぶん2人は居る」

  実は3人居るけど、その内の1人がGMって事は言わない方がいいかな? って気がするので、敢えて2人ってC.Cには言っておく。

「今からフレンドチャットしてみるよ。あっ、その前にパーティ組んどこ、チャットが見れるし」

「了解、よろしくね」

 俺はC.Cとパーティを組んでから、モフモフさんにチャットの申し込みを入れた。
 しかし、周りをよく見りゃトンネルみたいなアーチ型の地下水路、水路って言っても足元にチロチロと少しの水が流れているだけで、歩き難いわけではない。

 もうちょい明るければ、先の方まで見えるんだろうけどね。さっさとログアウトして、入り直してみろって言われそうだけど、ちょっとそれは違うんだよ。
 俺1人だったら、取り敢えず前か後ろかどちらかに歩いて行ってみるだろう。現状、ここにスポーンしている事はバグじゃないかって思っちゃいるけど、これこそが冒険、そう思わないか? 可愛い連れもいることだしね。

「ねぇ、返事は来た?」

  「あっいや、来ないなぁ」

「1回ログアウトしてみる? それから入り直したらちゃんとした場所に出るんじゃない?」

「そうだね、俺もそう思うんだけど。でもせっかくこの訳のわからない場所に来たんだから、ちょっと探索してみないか?」

「ラヴィさんて、全然普通の男だね」

「いや、いや、いや、いや、だってC.Cと一緒だとなんか変じゃん」

「確かにね、そもそも男キャラを選んだ時点でちょっと無理があるかなって思ったし、さっき」

「サブキャラが作れたら、今度は女の子を選ぶよ」

「ふーん、種族は何にするの?」

「エルフにしようと思ってたんだけど、C.Cを見てたらヒューマンの方がいいかなって」

「頑張れっ」

 そう言ってC.Cは笑顔を見せた。

「探索しましょう、でも何も無かったらさっさとログアウトだよ」

「うん、でっ、どっちに行く?」

「さっきマップを見たんだけど、何も表示がされていないの。もしかしたら座標とか出るかと思ったんだけど」

「俺も見てみる」

 昨日は街の南口で色々あった、だからマップに街の一部分が表示されていたんだ。もしかしたら残っているかもしれない。C.Cは今日が初めてだから、まだ何も無いだけかもしれないからな。

 ── マップは真っ黒だった。

「駄目だ、何も表示が無い。右に行ってみる?」

「モンスターとか居るかな? ラヴィさん前衛してねっ」

「わかった、C.Cは攻撃魔法ってあるの?」

「ファイヤーボールが撃てるみたい」

「了解、じゃ行くよ。後ろをついて来て」

「ホーリークロスはまだ大丈夫なの?」

「まだ大丈夫だと思うよ、昨日は10分ぐらい効いてたもん」

「わかった、でも隣でいい? ゲームだけどちょっと怖い」

 そう言われて、俺はC.Cの顔を見た。不安そうな顔をした女の子がそこに居たんだ。何かC.Cって強そうな感じがしてたから、意外だった。

 俺はついC.Cの右手を取って、手を繋いで歩き出した。もう片方の手にはショートソードを握っている。C.Cも空いた手に短いスティック、棒切れを持って歩き出した。

(モフモフさんからの返事はまだ無い、ログインはしてるみたいだけど、どうしたんだろう?)

 そう思いながら、俺とC.Cは暗い地下水路をたぶん100mぐらい進んだ。そして俺達は出くわしたんだ。

 地下水路と言えばアイツ、定番だよな。

 巨大なスライムが居た。


※バフ

ゲームの中で、魔法やアイテムを使って能力を向上させる事。
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