きみがヒトと呼んだ、鉄屑に

lifinside

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第二章

第一話 出迎え

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ーーーーーーー

『ねぇノア、人間を証明するものって、なんだと思う?』
「難しいね、あえて挙げるとすれば、生存に必要ないものを創造する能力、かな?」
『僕はね、だれかを想う心だとおもうな。』

ーーーーーーー

帰りの足は、ひどく重かった。 
誰も喋る気力も持たず、皆が全てを受け止めきれないことを感じる。 
それはもちろん、私も同じ。 

ノアはイチガヤには連れていけない、それは星屑拾いのみんなで決めたルール。
私たちしか知らない、秘密の存在。 
でも、こんなにノアに側に居て欲しいと思ったのは初めてだった。 
もう鉄屑なんて呼べないかな。 

想定以上に帰還が遅くなった。
地下鉄から上がったとき、すでに外は真っ暗だった。 

「みんな!!」 
隊長の声が聞こえる? 

「大丈夫か、心配したぞ!」 
「.......悪い、遅くなっちまった。」 
「いや、いいんだ。みんな無事だな。」 
「ああ、みんな無事だ。」 
ジンの言葉に、私は無事じゃないと思ったけど、それを言う気力も無かった。 
ガイはこの暗闇の中、危険を省みず私たちを待ってくれていた、その優しさは救いだった。 

「サキ、おかえり。
 アキラも。 
 ノアも無事だな?」
「うん、ノアも無事だよ。」
「そうか、今日はもう遅い。
 調査の報告は明日にしよう。
 司令官には俺から伝えておくから、みんなは休むといい。」 
ガイの言葉に、勝手に涙が溢れてきた。 

調査が遅くなることは稀にあった。
昔はこんなに効率よく調査をできなかったから。
ノアがいてくれるようになってからは初めてかもしれない。
ノアは探索も時間管理も、調査に必要なところは得意だからとても助かっている。
昔はもっと危険な目にあっていた気がするけど、こんなに苦しく思うのは初めてだ。

私は部屋に帰り、そのままベットに仰向けになった。 
.......疲れたな。 

ナノマシンが心の傷まで直せたらよかったのに。 
そんなことを考えていたら、いつのまにか眠っていた。 


気がついたのは朝だった。
時刻は6時50分。 
とりあえずシャワーを浴びよう。
その後、着替えをし、持ち帰った品の整理を始める。 

「サキちゃん、起きてる?」 
キリュウさんの声だった。 

「はい、さっき起きました。」 
「ああ、よかった。
 昨日ガイの態度がおかしかったから、何かあったと思って。
 ブリーフィングはお昼からにしているから、ゆっくりしていいからね。」 
「わかりました。」 
「ご飯作ったけど、置いておこうか?」 
「いえ、今頂きます。」 
そう言って私は扉を開けた。 
キリュウさんのいい匂いがする。 
心地が良い。 

「今日はきのこのスープを作ったの。
 万能食じゃないものが食べたいかな、と思って。」 
「わあ、美味しそう。ありがとうございます!」 
「じゃあ、また後でね。」 
何かを食べる気持ちにはならなかったけど、やっぱり手作りの料理は違うな。 
昨日は夕食も食べずに寝てしまったから、お腹はぺこぺこだったらしい。
スープの香りを嗅いだらすぐに食欲が湧いた。 

「ふぅ、美味しかった。ごちそうさま。 
 いつまでもクヨクヨしていられないか。」 
私は独り言を言うと、支度をして部屋を出た。


「アキラー、起きてる?」
「サキか?起きてる、入っていいぜ。」
私はアキラの部屋を訪れた。
アキラの部屋は私の部屋から比較的近い。

「へえ、昨日の品を整理してるの?」
「ああ、結構持って帰ったからな。」
アキラの部屋には一見するとガラクタのようなものが多い。
目を引くのは赤べこや焼き物かな。

「アキラは今回何を持ち帰ったの?」
「今回はな、これだ!」
それは見たことのあるフィギュアだった。
黄色いネズミのようなシルエットで、しっぽはギザギザ。
この国に住んでいたら誰でも知っている、国民的なキャラクターだ。
いや、世界でも有名だと思う。

「意外なものを持って帰ったんだね。」
「まあな、サキがカンナに服を選んでいただろ?
 だから俺もたまにはカンナにお土産をな。
 落ち着いたら一緒にギョエンに行こう。」
「いいね、カンナも喜ぶと思う。」
他にはハーモニカとか持って帰っていた。
演奏するのかな?

昨日の一件があっても、アキラは元気そうだった。
アキラと話していると、その元気さに私の憂鬱さも晴れてくる。

「とはいっても、気が重いな。」
前言撤回、やっぱり私もまだ気は重いよ。

「今日のブリーフィングはジンが説明してくれるだろうが、思い出すだけでもキツいものがある。」
「まあね。」
「しかも、俺はあの時、一歩も動けなかったからな!」
「ほんとじゃん、ちょっとダサくない?」
「勘弁してくれ。動けたサキがすごいよ。」
辛い記憶を、笑い話にしようとしている?

「でも、ジンはもっとキツいかもな。
 俺はあの判断はできなかったと思う。
 ジンがいてくれなかったらと思うと、怖いよ。」
「うん、ジンにはお礼を言わなきゃね。昨日は言えてない。」
「ああ、あとでお礼を言おう。そして、背負うのはジンだけじゃない。
 あの場にいた、俺たち全員で背負うんだ。」
「わかった。」
アキラは本当に気が利く。いいやつだよ。

「それじゃあ、ちょっと支度するわ。」
「じゃあ私は先にジンの部屋に行ってこようかな。」
「ああ、頼む!また後でな」
「うん、また後で。」
そういってアキラの部屋を出た。
ジンの部屋は少し遠いけど、今日はとても遠く感じる。

「ジン、起きてる?」
「ん?ああ、起きている、入っていいぞ。」
そういってジンの部屋に入った。
ベッドから上半身を起こし、座っている。
さっきまで寝ていたのかもしれない。
でも、いつも後ろで結んでいる髪はボサボサなのに、キリュウさんのスープは食べ終わっていた。

「昨日は、ありがとうね。」
「お、おう。そう言ってくれると助かるよ。」
心の整理をしていたのかもね。

「いやー、でもまいったな。
 ロボットを壊すのは慣れているが、さすがに人を殺めるのは初めてだった。」
「やっぱり人だよね。」
「そりゃそうだ。
 でも、ノアが言っていただろ?
 俺たちがいれば、ああはならない。
 心が救われたよ、ほんとに。」
それは私も同感だった。

「でもまあ、頭の整理は大変だったな。
 こんな時、ノアがいてくれたら話相手になってくれるのにな。」
「私じゃ役不足?」
「いや、そんなことはない。そんなつもりはないんだ。
 でも、ノアには不思議となんでも話せるだろ?
 サキやアキラには弱みを見せちゃいけない、そう思っているのかもな。」
「別に私は、よわよわなジンを見せてくれてもいいけど?」
「なんだそれ。でも、もう大丈夫だ。今回は一人でちゃんと頭を整理できた。」
そういってジンは笑った。
そう話しているうちにお昼が近づいてくる。

「じゃあ、私は部屋に戻るね。また後で。」
「ああ、また後でな。」
そういって手を振りながら、ジンの部屋を出た。
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