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第二章
第三話 希望の花
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最初に外出許可をもらったのは私とアキラだった。
とはいっても、誰も断ることはない。
調査に行った次の日は、ほとんど私とアキラが居住区に行くことが恒例になっているから。
「あ~、はやくカンナに会いたいわ~。」
「はは、カンナも待っているだろうよ。」
なんだかんだいって、アキラもカンナに会うのを楽しみにしている。
というより、居住区やイチガヤ拠点の全員が、カンナのことが好きだ。
トウゴウさんがカンナを希望の子といったけど、それは間違いじゃない。
カンナはAIと人類の戦争が始まる直前に生まれ、喋ることもできないうちに核爆弾が落ちた中を生き残った少女だ。
それは奇跡、カンナの存在自体が希望の結晶といっても過言ではない。
「もうすぐギョエンだな。居住区まで走るぞ、サキ!」
「了解!」
地下鉄の湿った空気から、地上へ。
そこには綺麗な大自然が広がっていた、それがギョエン。
草木はその勢いを失わず、庭園の橋や石にまで緑が生い茂っている。
これだけ荒廃した世界で、ここまで自然が残存しているのも、奇跡なのかな。
住んでいるのは近くの体育館なのだけど、ギョエンの恩恵は大きかった。
まず、放射能や酸性雨の影響を受けているのに、なかなか枯れない植物。
これはギョエン全体にナノマシンが投入されていて、実際には破壊と修復が繰り返されている状況らしい。
だから、ギョエンなら植物を植えても育つ、唯一の屋外農場ができている。
もうすこしすれば、柿が実るかな?
秋はクルミやドングリも拾えるようになって、いくらか食事がおいしくなる。
ギョエンのナノマシンシステムは、核が投下される前にすでに整備されていたものらしいと、ヨシダさんが言っていた。
今はヨシダさんがメンテナンスをしてくれている。
私たちの体もそう、屋外で活動すると放射能の影響を受ける。
ナノマシンは傷だけじゃなく、放射能で破壊された細胞も直す。
ヨシダさんは、体に浸透して、破壊された細胞の代わりなっていると言っていたけど、同じかな。
そして、酸性雨を貯めた池、生活水にもならないはずのこの水が、湧き水のように飲用できることも大きい。
まあ、基本は体育館の横にプールがあって、そこでナノマシン浄水した水を活用しているけど、時折ギョエンの池の水を飲む人がいる。
ギョエンはまさしく、神に守られている土地と呼べる、というかそう呼ぶ人が多い。
その機能は人間を抹殺しようとしたAIが作ったものなんだよね。
でも、ギョエンの神秘的なところが、居住区の人の生きる活力にも繋がっていると思う。
体育館まではギョエンを抜ける必要があるけど、たまに空に偵察ドローンが飛んでいることがある。
居住区の人も基本は外出禁止だし、私たちも地上にいる時間はできるだけ短くしないといけない。
もし見つかったら、ヒューマノイドの群れが襲ってくるかもしれない。
ギョエンを抜ける。
そこには崩壊した都市の残骸が広がっていた。
私とアキラは空を見る。
「ドローンは、いないようだな。」
鳥一匹もいない空を見て、アキラがつぶやいた。
「よし、中に入ろう。」
これは、ドローンがいた場合、居住区がバレてしまうことを警戒して決めたルールだ。
ドローンを見かけるのは、ほとんど地下鉄から上がったときだけど、念には念を込めて。
体育館の中に入ったら、すぐそばの壁にカンナがいた。
「さきおねえちゃん!」
よし!私の名前を最初に呼んだな!
アキラは何も思っていないかもしれないけど、ここは負けられない。
「カンナ~~~~!」
そうして私は走ってくるカンナを抱きしめる。
ああ、かわいい。
白のワンピースに、白のサンダル。そして白のカンカン帽を被っている。
室内で帽子を被っている理由は、私が見つけたこの帽子を気に入っているからだ!
カンナはカンカン帽を自分の名前が付いた帽子だと思っている。
「久しぶりだね、元気にしてた?」
「うん、げんきだよ。あきらおにいちゃんもげんきにしてた?」
「ああ、俺も元気だぞ!」
久しぶりに会えた喜びに微笑むカンナは尊い。
カンナのためなら、危険な調査も何度だってできる。
「今日はプレゼントがあるよ!」
「え!ぷれぜんと?」
そういって私は黄色の花柄のワンピースを見せた。
「うわ~~~、かわい~~~。」
ああ、そのリアクションだけで保存食3杯は食べられる。
「俺もプレゼントがあるぞ?」
そういってアキラは黄色いキャラクターのフィギュアを見せた。
「これはだれ?」
「名前か?うーん、そういえば覚えてないな。チュウチュウ?」
「ちゅうちゅう?」
それは絶対に違うと思ったけど、私もなぜか思い出せなかった。
もう、チュウチュウでいい。
「あと、花の種も持ってきたよ。」
そういって、何種類かの種と球根を見せた。
「うわあ、おおきいたね。」
「これはね、球根っていうの。」
「へえ~、じゃあうえてみよー。」
そういってカンナは外に出た。
先に居住区に来たことを告げたかったけど、まあいいか。
カンナがてくてく歩く姿を追いながら、空を警戒する。
危険な目に巻き込むわけにはいかない。
アキラはいつもの3倍くらい空を見る。
「かんなばたけに、とうちゃく!」
ギョエンにはカンナ畑と呼ばれる、小さな農園があった。
これは小さいカンナでもできる仕事として、植物や野菜の管理を担当しているため作られたもの。
実際は外に出たくない大人たちに押し付けられた仕事でもあるけど、本人はいつも張り切って世話をしてくれているので個人的な感情は水に流した。
カンナは種をまき、球根は穴を掘って埋めさせた。
近くにあるトマト畑にはまだいくつかトマトが残っている。
「そういえばカンナ、この間にくれたトマト、おいしかったよ!」
「ありがとう、またいる?」
「いるいる、持って帰っていい?」
「いいよ、じゃあとってくるね。」
そういってトマトを収穫するカンナを見てアキラが言った。
「カンナも本当なら、小学校に入るくらいの年齢かな。」
「そうだと思う。正確な年齢はわからないけど、たぶん6歳くらいだよね。」
カンナは生まれたときからこの灰色の世界に住んでいるので、他の世界を知らない。
だから悲観もしないし、毎日を自分なりに精一杯生きている。
私たちは、いつもカンナから学ばされる。
とはいっても、誰も断ることはない。
調査に行った次の日は、ほとんど私とアキラが居住区に行くことが恒例になっているから。
「あ~、はやくカンナに会いたいわ~。」
「はは、カンナも待っているだろうよ。」
なんだかんだいって、アキラもカンナに会うのを楽しみにしている。
というより、居住区やイチガヤ拠点の全員が、カンナのことが好きだ。
トウゴウさんがカンナを希望の子といったけど、それは間違いじゃない。
カンナはAIと人類の戦争が始まる直前に生まれ、喋ることもできないうちに核爆弾が落ちた中を生き残った少女だ。
それは奇跡、カンナの存在自体が希望の結晶といっても過言ではない。
「もうすぐギョエンだな。居住区まで走るぞ、サキ!」
「了解!」
地下鉄の湿った空気から、地上へ。
そこには綺麗な大自然が広がっていた、それがギョエン。
草木はその勢いを失わず、庭園の橋や石にまで緑が生い茂っている。
これだけ荒廃した世界で、ここまで自然が残存しているのも、奇跡なのかな。
住んでいるのは近くの体育館なのだけど、ギョエンの恩恵は大きかった。
まず、放射能や酸性雨の影響を受けているのに、なかなか枯れない植物。
これはギョエン全体にナノマシンが投入されていて、実際には破壊と修復が繰り返されている状況らしい。
だから、ギョエンなら植物を植えても育つ、唯一の屋外農場ができている。
もうすこしすれば、柿が実るかな?
秋はクルミやドングリも拾えるようになって、いくらか食事がおいしくなる。
ギョエンのナノマシンシステムは、核が投下される前にすでに整備されていたものらしいと、ヨシダさんが言っていた。
今はヨシダさんがメンテナンスをしてくれている。
私たちの体もそう、屋外で活動すると放射能の影響を受ける。
ナノマシンは傷だけじゃなく、放射能で破壊された細胞も直す。
ヨシダさんは、体に浸透して、破壊された細胞の代わりなっていると言っていたけど、同じかな。
そして、酸性雨を貯めた池、生活水にもならないはずのこの水が、湧き水のように飲用できることも大きい。
まあ、基本は体育館の横にプールがあって、そこでナノマシン浄水した水を活用しているけど、時折ギョエンの池の水を飲む人がいる。
ギョエンはまさしく、神に守られている土地と呼べる、というかそう呼ぶ人が多い。
その機能は人間を抹殺しようとしたAIが作ったものなんだよね。
でも、ギョエンの神秘的なところが、居住区の人の生きる活力にも繋がっていると思う。
体育館まではギョエンを抜ける必要があるけど、たまに空に偵察ドローンが飛んでいることがある。
居住区の人も基本は外出禁止だし、私たちも地上にいる時間はできるだけ短くしないといけない。
もし見つかったら、ヒューマノイドの群れが襲ってくるかもしれない。
ギョエンを抜ける。
そこには崩壊した都市の残骸が広がっていた。
私とアキラは空を見る。
「ドローンは、いないようだな。」
鳥一匹もいない空を見て、アキラがつぶやいた。
「よし、中に入ろう。」
これは、ドローンがいた場合、居住区がバレてしまうことを警戒して決めたルールだ。
ドローンを見かけるのは、ほとんど地下鉄から上がったときだけど、念には念を込めて。
体育館の中に入ったら、すぐそばの壁にカンナがいた。
「さきおねえちゃん!」
よし!私の名前を最初に呼んだな!
アキラは何も思っていないかもしれないけど、ここは負けられない。
「カンナ~~~~!」
そうして私は走ってくるカンナを抱きしめる。
ああ、かわいい。
白のワンピースに、白のサンダル。そして白のカンカン帽を被っている。
室内で帽子を被っている理由は、私が見つけたこの帽子を気に入っているからだ!
カンナはカンカン帽を自分の名前が付いた帽子だと思っている。
「久しぶりだね、元気にしてた?」
「うん、げんきだよ。あきらおにいちゃんもげんきにしてた?」
「ああ、俺も元気だぞ!」
久しぶりに会えた喜びに微笑むカンナは尊い。
カンナのためなら、危険な調査も何度だってできる。
「今日はプレゼントがあるよ!」
「え!ぷれぜんと?」
そういって私は黄色の花柄のワンピースを見せた。
「うわ~~~、かわい~~~。」
ああ、そのリアクションだけで保存食3杯は食べられる。
「俺もプレゼントがあるぞ?」
そういってアキラは黄色いキャラクターのフィギュアを見せた。
「これはだれ?」
「名前か?うーん、そういえば覚えてないな。チュウチュウ?」
「ちゅうちゅう?」
それは絶対に違うと思ったけど、私もなぜか思い出せなかった。
もう、チュウチュウでいい。
「あと、花の種も持ってきたよ。」
そういって、何種類かの種と球根を見せた。
「うわあ、おおきいたね。」
「これはね、球根っていうの。」
「へえ~、じゃあうえてみよー。」
そういってカンナは外に出た。
先に居住区に来たことを告げたかったけど、まあいいか。
カンナがてくてく歩く姿を追いながら、空を警戒する。
危険な目に巻き込むわけにはいかない。
アキラはいつもの3倍くらい空を見る。
「かんなばたけに、とうちゃく!」
ギョエンにはカンナ畑と呼ばれる、小さな農園があった。
これは小さいカンナでもできる仕事として、植物や野菜の管理を担当しているため作られたもの。
実際は外に出たくない大人たちに押し付けられた仕事でもあるけど、本人はいつも張り切って世話をしてくれているので個人的な感情は水に流した。
カンナは種をまき、球根は穴を掘って埋めさせた。
近くにあるトマト畑にはまだいくつかトマトが残っている。
「そういえばカンナ、この間にくれたトマト、おいしかったよ!」
「ありがとう、またいる?」
「いるいる、持って帰っていい?」
「いいよ、じゃあとってくるね。」
そういってトマトを収穫するカンナを見てアキラが言った。
「カンナも本当なら、小学校に入るくらいの年齢かな。」
「そうだと思う。正確な年齢はわからないけど、たぶん6歳くらいだよね。」
カンナは生まれたときからこの灰色の世界に住んでいるので、他の世界を知らない。
だから悲観もしないし、毎日を自分なりに精一杯生きている。
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