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第三章
第四話 交点
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私はコーラクエンに戻ってから、無限に等しいシミュレーションをしていた。
核が落ちる前に、サンシャインシティを人類の住める場所にする構想ができるか。
いくら条件を考え、シミュレートしても可能性は0%を超えることがなかった。
そのため、アプローチを変えた。
いつからなら、その構想を実現することができるか。
完全な世界になってからではまず不可能だった。
既に労働の概念は喪失している。
エグザスが整備することになる。
では、核発電が確立してからは?
これも不可能だろう、既にこの時期には多くのヒューマノイドによる労働代替が行われている。
生体ナノマシンが誕生したタイミングは?
現状ではこれが最も妥当だと判断した。
時間的な制約も、ヒューマノイド以外の労働力を活用する点でも、エグザスに知られず整備を行える可能性はある。それでも、多くの改装をしていることはエグザスのネットワークに刻まれているだろう。
それを見落とすとは思えないが、すべてを考慮した場合、最も妥当なタイミングだ。
それでも、エグザスの介入を防ぐことは困難なはずだが。
もし、エグザスを完全に欺き、整備を行うことができるタイミングは?
この問いに対する答えは、エグザス誕生前しかなかった。
ナノマシン浄水の技術を予測し、あらかじめ設備を用意しておく。
それをナノマシン誕生後に活用できるよう改修する。
これが最も妥当性のある、エグザスを欺き、人類の住む場所を後世に残す方法だった。
しかし、エグザスが誕生する前に整備できるとして、それは莫大な資金力を持った人か、国を動かせる位置にある人しか該当しない。
核発電機は製造した場合、記録が残る。
サンシャインシティの改装も、ある程度の記録は残るだろう。
それができる人間はそう多くない。
もし、世界のネットワークに接続することができれば、人物を特定できる情報は得られたかもしれないが、今となっては葬り去られてしまった。
こうなると、それすらも見透かされている可能性すら、考えてしまう。
人智を越えた予測に対し、人間は「狐に化かされたようだ」と表現したらしいが、ここまでくれば本当に古の伝承に出てくる、人ではない存在なのではないかと考えてしまう。
これ以上考えても仕方がないと考え、私はしばしの休息をとった。
それからはサインシャインシティの整備が始まった。
イチガヤや居住区の住人も、積極的に整備に参加しているようだ。
どうも、新しい居住区を作るという使命に、みんな活力がみなぎっているらしい。
ジンとアキラは近いうちに会いに来てくれた。
ガイから贈り物があることを聞いたようだ。
二人ともとても喜んでくれ、私はうれしかった。
そして、アキラは予想通り特産品を集めていることがわかった。
この世界ではもう、自由に旅をすることができない。
だからこそ、特産品を見て、旅をしている気分になりたいのだと。
将棋駒がヤマガタの特産だということは知らなかったようで、とても喜んでくれた。
大きさからか、その存在感は他の特産品とは違う感じがしているようで、気に入ったらしい。
アキラはこの世界になる前、バックパックをしていたようだ。
ゴーストとしての調査で見ていても、旅歩きが上手かったが、そういう素質があるのかもしれない。
しばらくして、ジンがやってきた。
「ノア、核発電機は本当にあった。13Fだ。
今日にゴーストと、司令部に共有するようにする。」
私はそれに同意した。
もう驚きはしないが、まるで誰かの掌の上で踊っている気分になる。
その後、サンシャインシティの整備は予定より早く進んだ。
もう低層階であれば居住できるほど、綺麗になっているらしい。
こうなった場合、サンシャインシティの方がギョエンより居住区としての評価が高くなる。
とはいえ、まだギョエンから移り住むほどではないだろう。
それは、たまにサキが報告してくれる柿やドングリを食べた話が証明している。
いくらギョエンより快適だといえ、植物が自生しているギョエンのメリットを捨ててまで移住する必要はない。
万能食だけで満足できる人間がいれば別だが、やはり生きるための力は心に宿る。
普段とは違う食べ物を食べることも、生きる上では重要だろう。
ただ、サンシャインシティにある博物館に行く人は少なくないらしい。
ギョエンの施設もそうだが、文化的なものに触れることもまた、生きる力になるのだろう。
私はサンシャインシティの整備に参加することはなく、時間がある限り偵察機の調査を行っていた。
私の持っているセンサーは、せいぜい20mしか範囲がない。
空まで監視するには、目視しかなかったが、日々空を眺め偵察機を監視した。
わかったことは3つある。
1つ目は雨の日は偵察機が現れないこと、これは想定通りだ。
2つ目は偵察機がくるのはおおよそ3日に1度、そして20分程度の飛行で通り過ぎる。
その偵察は規則正しく、ほとんどが同じ軌道を描き飛行している。
まるで、決められた偵察ルートを周回しているだけのように。
そして3つ目、偵察機はドローンしか現れない。
犬型偵察機は観測することがなかった。
特性を考えるに、エグザスの偵察範囲がもっとも広いのはドローンだろう。
犬型偵察機はドローンより行動範囲が狭いはずだ。
そうすれば、エグザスの拠点はそれなりに遠くにあると推察できる。
この情報はサンシャインシティの移住計画に、より期待をもたらした。
そうしているうちに、肌寒い気温に変わっていく。
私はサンシャインシティ周辺の警戒から、イケブクまで調査範囲を伸ばした。
サンシャインシティでの調査を報告すると、ジンが過去にシンジュクで犬型偵察機を確認していることを教えてくれた。
もし、調査範囲を伸ばして犬型偵察機が確認できれば、エグザスの拠点位置を割り出せるかもしれない。
それを確かめるための調査だ。
結論は、シイナマチまで観測範囲を広げれば、犬型偵察機を確認できた。
シンジュクとシイナマチ、この両方に任意の距離を合わせていくと、交点はナカノになる。
もしかすると、ナカノにはエグザスの拠点があるかもしれない。
そうしているうちに、冬はやってきた。
2050年12月31日
ゴーストのメンバーがコーラクエンにやってきた。
「今年もお疲れ様でした~~!」
アキラの乾杯で宴が始まる。
「いやー、本当に進展があったねー、今年は。」
サキも思い出に浸っているようだ。
いつの時代でも、12月31日はその年を振り返るらしい。
「やっぱりさ、ノアが仲間になってくれてからだいぶ変わったよな。」
ジンがそう言う。
「全然ちがう、調査でもなんでも、ノアがいてくれると精神的にも、効率的にも良いことしかないよ。
生まれる余裕が違うね。サンシャインシティの整備も一緒にやって欲しかった気持ちはあるけどな~。」
「そうはいうな、ノアはノアにしかできないことをやってくれたんだ。
俺たちだけでは、一生を掛けてもナカノが怪しいなんて見つけられないかもしれないぞ?」
アキラとジンが嬉しそうに会話する。
確かに、毎日空を見続ける作業は並みの人間では務まらない。
私は、自分の仕事の成果で喜んでくれるメンバーが嬉しかった。
「いやー、本当にあの時、ノアを見つけてよかったよ。
これは俺たちの一番の奇跡かもな。」
アキラがそう言う。
私はコーラクエンで考え事をしていた時にアキラに出会い、そこからゴーストの仲間になった。
「ノアと出会ってもう2年?3年になるっけ?」
「2年だ、正確にはアキラと出会って816日になる。」
「もう2年か、あっという間だよな。
なんかもう、ずっと一緒にいる気がしてくる。」
「そうね、思っているより短かったって感じはする。」
私も、生きる意味を見出せず、さまよっていたところをアキラに見つけてもらえて、本当に良かった。
何もできず、何をしていいかわからない、そんな狭間にいた期間だった。
「そういえば、ノアはたまにユイって人の名前を出す時があるよね?
ユイはノアとどういう関係なの?」
サキの質問に少し驚く。
確かに、ゴーストのメンバーにもほとんどユイのことを話していなかった。
これを話せば、私の真実を知られてしまう。
だが、今まで築き上げてきた信頼関係があれば、そこにリスクは無いだろう。
そう思い、私はユイと、私について話をすることを決意した。
核が落ちる前に、サンシャインシティを人類の住める場所にする構想ができるか。
いくら条件を考え、シミュレートしても可能性は0%を超えることがなかった。
そのため、アプローチを変えた。
いつからなら、その構想を実現することができるか。
完全な世界になってからではまず不可能だった。
既に労働の概念は喪失している。
エグザスが整備することになる。
では、核発電が確立してからは?
これも不可能だろう、既にこの時期には多くのヒューマノイドによる労働代替が行われている。
生体ナノマシンが誕生したタイミングは?
現状ではこれが最も妥当だと判断した。
時間的な制約も、ヒューマノイド以外の労働力を活用する点でも、エグザスに知られず整備を行える可能性はある。それでも、多くの改装をしていることはエグザスのネットワークに刻まれているだろう。
それを見落とすとは思えないが、すべてを考慮した場合、最も妥当なタイミングだ。
それでも、エグザスの介入を防ぐことは困難なはずだが。
もし、エグザスを完全に欺き、整備を行うことができるタイミングは?
この問いに対する答えは、エグザス誕生前しかなかった。
ナノマシン浄水の技術を予測し、あらかじめ設備を用意しておく。
それをナノマシン誕生後に活用できるよう改修する。
これが最も妥当性のある、エグザスを欺き、人類の住む場所を後世に残す方法だった。
しかし、エグザスが誕生する前に整備できるとして、それは莫大な資金力を持った人か、国を動かせる位置にある人しか該当しない。
核発電機は製造した場合、記録が残る。
サンシャインシティの改装も、ある程度の記録は残るだろう。
それができる人間はそう多くない。
もし、世界のネットワークに接続することができれば、人物を特定できる情報は得られたかもしれないが、今となっては葬り去られてしまった。
こうなると、それすらも見透かされている可能性すら、考えてしまう。
人智を越えた予測に対し、人間は「狐に化かされたようだ」と表現したらしいが、ここまでくれば本当に古の伝承に出てくる、人ではない存在なのではないかと考えてしまう。
これ以上考えても仕方がないと考え、私はしばしの休息をとった。
それからはサインシャインシティの整備が始まった。
イチガヤや居住区の住人も、積極的に整備に参加しているようだ。
どうも、新しい居住区を作るという使命に、みんな活力がみなぎっているらしい。
ジンとアキラは近いうちに会いに来てくれた。
ガイから贈り物があることを聞いたようだ。
二人ともとても喜んでくれ、私はうれしかった。
そして、アキラは予想通り特産品を集めていることがわかった。
この世界ではもう、自由に旅をすることができない。
だからこそ、特産品を見て、旅をしている気分になりたいのだと。
将棋駒がヤマガタの特産だということは知らなかったようで、とても喜んでくれた。
大きさからか、その存在感は他の特産品とは違う感じがしているようで、気に入ったらしい。
アキラはこの世界になる前、バックパックをしていたようだ。
ゴーストとしての調査で見ていても、旅歩きが上手かったが、そういう素質があるのかもしれない。
しばらくして、ジンがやってきた。
「ノア、核発電機は本当にあった。13Fだ。
今日にゴーストと、司令部に共有するようにする。」
私はそれに同意した。
もう驚きはしないが、まるで誰かの掌の上で踊っている気分になる。
その後、サンシャインシティの整備は予定より早く進んだ。
もう低層階であれば居住できるほど、綺麗になっているらしい。
こうなった場合、サンシャインシティの方がギョエンより居住区としての評価が高くなる。
とはいえ、まだギョエンから移り住むほどではないだろう。
それは、たまにサキが報告してくれる柿やドングリを食べた話が証明している。
いくらギョエンより快適だといえ、植物が自生しているギョエンのメリットを捨ててまで移住する必要はない。
万能食だけで満足できる人間がいれば別だが、やはり生きるための力は心に宿る。
普段とは違う食べ物を食べることも、生きる上では重要だろう。
ただ、サンシャインシティにある博物館に行く人は少なくないらしい。
ギョエンの施設もそうだが、文化的なものに触れることもまた、生きる力になるのだろう。
私はサンシャインシティの整備に参加することはなく、時間がある限り偵察機の調査を行っていた。
私の持っているセンサーは、せいぜい20mしか範囲がない。
空まで監視するには、目視しかなかったが、日々空を眺め偵察機を監視した。
わかったことは3つある。
1つ目は雨の日は偵察機が現れないこと、これは想定通りだ。
2つ目は偵察機がくるのはおおよそ3日に1度、そして20分程度の飛行で通り過ぎる。
その偵察は規則正しく、ほとんどが同じ軌道を描き飛行している。
まるで、決められた偵察ルートを周回しているだけのように。
そして3つ目、偵察機はドローンしか現れない。
犬型偵察機は観測することがなかった。
特性を考えるに、エグザスの偵察範囲がもっとも広いのはドローンだろう。
犬型偵察機はドローンより行動範囲が狭いはずだ。
そうすれば、エグザスの拠点はそれなりに遠くにあると推察できる。
この情報はサンシャインシティの移住計画に、より期待をもたらした。
そうしているうちに、肌寒い気温に変わっていく。
私はサンシャインシティ周辺の警戒から、イケブクまで調査範囲を伸ばした。
サンシャインシティでの調査を報告すると、ジンが過去にシンジュクで犬型偵察機を確認していることを教えてくれた。
もし、調査範囲を伸ばして犬型偵察機が確認できれば、エグザスの拠点位置を割り出せるかもしれない。
それを確かめるための調査だ。
結論は、シイナマチまで観測範囲を広げれば、犬型偵察機を確認できた。
シンジュクとシイナマチ、この両方に任意の距離を合わせていくと、交点はナカノになる。
もしかすると、ナカノにはエグザスの拠点があるかもしれない。
そうしているうちに、冬はやってきた。
2050年12月31日
ゴーストのメンバーがコーラクエンにやってきた。
「今年もお疲れ様でした~~!」
アキラの乾杯で宴が始まる。
「いやー、本当に進展があったねー、今年は。」
サキも思い出に浸っているようだ。
いつの時代でも、12月31日はその年を振り返るらしい。
「やっぱりさ、ノアが仲間になってくれてからだいぶ変わったよな。」
ジンがそう言う。
「全然ちがう、調査でもなんでも、ノアがいてくれると精神的にも、効率的にも良いことしかないよ。
生まれる余裕が違うね。サンシャインシティの整備も一緒にやって欲しかった気持ちはあるけどな~。」
「そうはいうな、ノアはノアにしかできないことをやってくれたんだ。
俺たちだけでは、一生を掛けてもナカノが怪しいなんて見つけられないかもしれないぞ?」
アキラとジンが嬉しそうに会話する。
確かに、毎日空を見続ける作業は並みの人間では務まらない。
私は、自分の仕事の成果で喜んでくれるメンバーが嬉しかった。
「いやー、本当にあの時、ノアを見つけてよかったよ。
これは俺たちの一番の奇跡かもな。」
アキラがそう言う。
私はコーラクエンで考え事をしていた時にアキラに出会い、そこからゴーストの仲間になった。
「ノアと出会ってもう2年?3年になるっけ?」
「2年だ、正確にはアキラと出会って816日になる。」
「もう2年か、あっという間だよな。
なんかもう、ずっと一緒にいる気がしてくる。」
「そうね、思っているより短かったって感じはする。」
私も、生きる意味を見出せず、さまよっていたところをアキラに見つけてもらえて、本当に良かった。
何もできず、何をしていいかわからない、そんな狭間にいた期間だった。
「そういえば、ノアはたまにユイって人の名前を出す時があるよね?
ユイはノアとどういう関係なの?」
サキの質問に少し驚く。
確かに、ゴーストのメンバーにもほとんどユイのことを話していなかった。
これを話せば、私の真実を知られてしまう。
だが、今まで築き上げてきた信頼関係があれば、そこにリスクは無いだろう。
そう思い、私はユイと、私について話をすることを決意した。
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