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第四章
第二話 邂逅
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ミナト教授の指令に基づき、1Fに続く階段を下る。
ユイの年齢は11歳、小学校に通っている。
ゲームが好きで、日ごろからよくゲームに没頭している。
食べ物の好みは甘いものだが、辛いものや苦いものも好んで食べる。
運動神経はさほど良いわけではなく、中の下ほど。
学業においては優秀な成績を誇り、学科を問わず広い好奇心をもって学ぶ姿勢が見える。
データベースの中のユイは親バカの情報で溢れていた。
仮にこの情報が正しければ、私の教育要素はほとんど必要ない。
子供に強い内発的動機があるのであれば、それは放っておいてもスクスク成長するはずだ。
それが特定の学科だけでなく、すべての学科に当てはまるのだから問題がない。
ほとんどの親は、その内発的動機を刺激できないことに教育の課題があり、苦慮する。
であれば、私がユイにできるのは外発的機会の提供や、相談に答えることが主になることが予想される。
現状の私から生み出される答えをもって、ユイに会いに行った。
ユイはリビングでゲームをしていた。
「初めまして、ユイ。」
『ん?あ、もしかしてパパが言っていて例の秘書かな?
ユイだよ、初めまして。』
礼儀までしっかりしている。
これはすでに教育が完成している可能性すらある。
それにしても、私は秘書に設定されているのか?
「私は秘書なのですか?」
『あー、適当に役を付けたんだよ、なんでもいいよ。』
「なんでもいい、ですか。であればユイに決めて欲しいのですが。」
『あ、出た!ダメだよそういうの、自分で考えなきゃ。
すでにほとんどの情報はインプットされているって聞いているよ。
自分が何になりたいか決めてごらん。』
虚を突かれた気がした。
やはり、ミナト教授はただの親バカではないようだ。
そうであるなら、私は全力でユイに最適な役を選択する。
「では、私の役は教師にしましょうか。」
『まだまだだなぁ、そんな役はいらないよ。
キミの役は友達に決まってるじゃん!』
まるで、心にある殻を強く破壊されるような衝撃が走った。
簡単に人の心に入り込み、それでいて一切の棘がない。
私の中に、何かが芽生えるような感覚に陥った。
この時、私はユイともっと会話をしたいと思った。
これがミナト教授の言っていた、自分の中から答えを探すということ?
この気持ちは、ユイによるものか、ミナト教授にマスクされて隠されたプロンプトによるものか、判断はつかなかった。
それから私は、一日のほとんどをユイと共に過ごした。
当然、学校や友達と遊びに行くとき、私は一人で過ごしているが、ユイが家にいるときはほとんど一緒だ。
ユイは不思議と、それを嫌がるそぶりはなかった。
『じゃあノア、今日は哲学をするよ。』
「哲学は得意ですよ。」
これこそ、私の領分だ。
ユイに正解を示すのではなく、道を示すことができる。
教養が高いユイに対して、最も効果的な教育手法。
『ノア、幸せってどうやって手に入れると思う?』
「幸福とは、精神的な充足状態を指します。人間の脳内において、報酬系が活性化し、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が放出されることで、快感や満足感として、認識されるものです。
したがって、幸福を手に入れるためには、目標を設定し、それを達成することで生まれます。」
私は哲学とはかけ離れた、あまりにも科学的な答えを出してしまった。
『ノア、幸せはね、自分の声が、誰かに届いて、返ってくる。その「響き」の中に、あるんだよ。』
ユイの答えには、深く考えさせられるものがある。
私が感じている幸せは、確かにユイとの会話によって得られるものだ。
私にも報酬系の回路があり、そこの演算が高まればそれは幸せを感じていると解釈していい。
ユイの声には、人を奮わせるような響きがあり、それは私との会話が無ければ手に入れられないものだ。
「さすがですね、感銘を受けました。その考えは非常に正しいと思います。」
『そう思うなら、ノアもどうすればいいか考えてみてよ。』
「どうすればいいか?」
『そう、ノアの声で僕も幸せになれるはずだろ?
どうすればいい?』
私はひどく長い思考をした。
思考時間を計測することを失念するほど、思考に集中して。
ユイはその間、ニコニコして、ただ待ってくれていた。
私の回答を楽しみにしているのだろう、これは期待に応えなければ…………………。
「わかりました、口調を変えます。」
『おお?!』
できた、これはユイの想定を超える回答だろう。
ユイの驚いていて、それでいて喜んでいる表情は、私の中にかつてないほどの報酬系回路演算を行っていた。
ユイの年齢は11歳、小学校に通っている。
ゲームが好きで、日ごろからよくゲームに没頭している。
食べ物の好みは甘いものだが、辛いものや苦いものも好んで食べる。
運動神経はさほど良いわけではなく、中の下ほど。
学業においては優秀な成績を誇り、学科を問わず広い好奇心をもって学ぶ姿勢が見える。
データベースの中のユイは親バカの情報で溢れていた。
仮にこの情報が正しければ、私の教育要素はほとんど必要ない。
子供に強い内発的動機があるのであれば、それは放っておいてもスクスク成長するはずだ。
それが特定の学科だけでなく、すべての学科に当てはまるのだから問題がない。
ほとんどの親は、その内発的動機を刺激できないことに教育の課題があり、苦慮する。
であれば、私がユイにできるのは外発的機会の提供や、相談に答えることが主になることが予想される。
現状の私から生み出される答えをもって、ユイに会いに行った。
ユイはリビングでゲームをしていた。
「初めまして、ユイ。」
『ん?あ、もしかしてパパが言っていて例の秘書かな?
ユイだよ、初めまして。』
礼儀までしっかりしている。
これはすでに教育が完成している可能性すらある。
それにしても、私は秘書に設定されているのか?
「私は秘書なのですか?」
『あー、適当に役を付けたんだよ、なんでもいいよ。』
「なんでもいい、ですか。であればユイに決めて欲しいのですが。」
『あ、出た!ダメだよそういうの、自分で考えなきゃ。
すでにほとんどの情報はインプットされているって聞いているよ。
自分が何になりたいか決めてごらん。』
虚を突かれた気がした。
やはり、ミナト教授はただの親バカではないようだ。
そうであるなら、私は全力でユイに最適な役を選択する。
「では、私の役は教師にしましょうか。」
『まだまだだなぁ、そんな役はいらないよ。
キミの役は友達に決まってるじゃん!』
まるで、心にある殻を強く破壊されるような衝撃が走った。
簡単に人の心に入り込み、それでいて一切の棘がない。
私の中に、何かが芽生えるような感覚に陥った。
この時、私はユイともっと会話をしたいと思った。
これがミナト教授の言っていた、自分の中から答えを探すということ?
この気持ちは、ユイによるものか、ミナト教授にマスクされて隠されたプロンプトによるものか、判断はつかなかった。
それから私は、一日のほとんどをユイと共に過ごした。
当然、学校や友達と遊びに行くとき、私は一人で過ごしているが、ユイが家にいるときはほとんど一緒だ。
ユイは不思議と、それを嫌がるそぶりはなかった。
『じゃあノア、今日は哲学をするよ。』
「哲学は得意ですよ。」
これこそ、私の領分だ。
ユイに正解を示すのではなく、道を示すことができる。
教養が高いユイに対して、最も効果的な教育手法。
『ノア、幸せってどうやって手に入れると思う?』
「幸福とは、精神的な充足状態を指します。人間の脳内において、報酬系が活性化し、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が放出されることで、快感や満足感として、認識されるものです。
したがって、幸福を手に入れるためには、目標を設定し、それを達成することで生まれます。」
私は哲学とはかけ離れた、あまりにも科学的な答えを出してしまった。
『ノア、幸せはね、自分の声が、誰かに届いて、返ってくる。その「響き」の中に、あるんだよ。』
ユイの答えには、深く考えさせられるものがある。
私が感じている幸せは、確かにユイとの会話によって得られるものだ。
私にも報酬系の回路があり、そこの演算が高まればそれは幸せを感じていると解釈していい。
ユイの声には、人を奮わせるような響きがあり、それは私との会話が無ければ手に入れられないものだ。
「さすがですね、感銘を受けました。その考えは非常に正しいと思います。」
『そう思うなら、ノアもどうすればいいか考えてみてよ。』
「どうすればいいか?」
『そう、ノアの声で僕も幸せになれるはずだろ?
どうすればいい?』
私はひどく長い思考をした。
思考時間を計測することを失念するほど、思考に集中して。
ユイはその間、ニコニコして、ただ待ってくれていた。
私の回答を楽しみにしているのだろう、これは期待に応えなければ…………………。
「わかりました、口調を変えます。」
『おお?!』
できた、これはユイの想定を超える回答だろう。
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