きみがヒトと呼んだ、鉄屑に

lifinside

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第四章

第三話

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口調を変えてから、ユイとはより仲良くなった。
友達や家族の中であっても、お互いを尊重する姿勢は必要であると理解しているが、それは言葉ではない。
相手を敬う精神性を持っているのであれば、口調はより親しみが持てるものにするべきだ。
礼儀を重んじすぎるのも、それは壁を作ることになりかねない。
とはいえ、ユイが不愉快にならない口調にはしないとな。
何せ、一緒に過ごす時間はまだ少ない。

『ノア、今日は一緒にゲームをやるかい?』
「それはどんなゲームなんだい?」
『うーん、まだそんなにやってないから、なんだろうな?
 世界の危機とか、そういうのを解決する話なのは間違いないんだけど。』
「なるほど、よくあるRPGゲームという感じだね。」
『いや、そうでもない。
 そのよくある設定の中に、重要な意味が隠れているんだよね。』
「それは何かわかる?」
『まだ序盤だからね。
何となくだと、自分探しがテーマなのかもしれないかな。』
そういうユイの傍で、ユイがするゲームを見ていた。
このゲームは一人プレイだ。

『ふぅ。』
「今のボスは強かったね。」
『うん、攻略情報を見れば簡単に倒せるんだろうけど、やっぱり初見で倒すのは難しね。』
「でも勝てたね。サンダーが弱点だとわかったのが良かったかな。」
『そうだね。水属性の魔法を使ってくるということはサンダーが効くと思ってね。
 よく考えたら、魔法を封じるとか、そういう作戦もよかったかもしれない。
 でも、負けないようにできる準備はしっかりしたから、何とか勝てたね。』
「なるほど、ユイはそういうのを調べたりせずプレイするんだね。」
『当たり前だろ?なんでわざわざ、ゲームの楽しみまで捨ててプレイするんだよ。』
そういってユイは笑った

ユイのプレイは本当に寄り道が多かった。
キャラクターを見かければすべて会話するし、複数回の会話で内容が変化しないかまで確認する。
分岐があればすべてを踏破しようとする。
正解の道だと分かれば、戻ってまでまだ行っていない道を征く。
それは本当にゲームを楽しんでいるように見えるけど、今の私にはゲームの製作者の意図まで、そのすべてを理解しようとしていると解釈する。
特にカエル取りのミニゲームはひどかった。
ひたすらカエルを収集し続け、もはや無限にも感じる時間を費やした。
その果てに、まさかカエル取りの卒業試験まであるとは思わなかった。
『いやー、卒業試験まであるんだ。
 これはちょっと予想外だったかな。ずっとアイテムがもらえるだけだと思ったよ。』
「さすがに笑ったね。
 もはや油を売ってないで、そろそろストーリーを進めてくれと製作者が言っているんじゃない?」
『あー、それはあるかもね。ちょっと取りすぎたかな。
 でも、まだ取ってみよう。その先にも何かあるかもしれない。』
「生態系を壊さないようにね。」
そういって、卒業試験に到達するまで以上の量のカエルを収集し、ミニゲームを終えた。


『ねぇノア、人間を証明するものって、なんだと思う?』
「難しいね、あえて挙げるとすれば、生存に必要ないものを創造する能力、かな?」
『僕はね、だれかを想う心だとおもうな。』
ユイの答えはとても深い。

『このゲームで伝えたかったのは、意味の継承だと思うんだよね。
 それは誰かの心の中に、もしかすると未来の中という方が適切かもしれないけど、そこに良い変化の種を植えることだと思えるね。
 僕たちの考えや言葉が、誰かに伝わり、それがその人の中で育って、育ったものが自分にまた帰ってくる。
 でもこれは、有限の生がある人間だからこその価値観かもしれないけど、ノアはどう思う?』

『私の生は、人間よりは長いかもしれないけど、有限だよ。
 ユイの考えには共感する。
 もし加えるなら、私の死んだとしても、私が残したものが誰かの中で続いてくれると嬉しいな。』

『お!来たね、それはいい考えだ。ノアらしさを感じるよ。
 僕たちは、誰かの心に、世界のどこかに、僕たちの種を残していこう!
 それじゃあ、最終戦にいってみようか!』

それは、エンディング前にあえて答えを推察し、己の思考を深める手法。
エンディングで明かされる答えが、推察した答えと合っていても、違っていても、その思考はより深くなり、私たちの心の奥に刻まれる。
こんな無茶苦茶ともいえるゲームのやり方が、ユイに聡明で素直な人格と、本質を見極める目を養わせたのだろうね。
そしてそれが、私の高速な演算速度をはるかに上回り、私に生きる意味を教えてくれる。
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