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第四章
第三話 可能性
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『ノア、今日はFPSやるよ!』
「おっけー。」
『でもごめんね、学校の友達と一緒にやる約束をしたから、ノアは隣で見ていてね。』
そういってユイはゲームを起動した。
これは5人一組となり、小さな島で生き残りをかけたサバイバルゲームだ。
勝利条件は単純で、最後まで生きていたチームが勝つ。
ただ、戦術は奥深い。
開始地点や拾える武器、マップまでもが試合ごとに再生成され、非常に多くのランダム要素を駆使して戦う必要がある。
ゲーム内で手に入れる手札の中から、最善手を選び続けなければ生き残ることはできない。
『ノア、武器を発見した! ここはやっぱり、S&W M19だね。』
ユイは明らかに戦術的優位性の低い、一撃に特化した銃だ。
これはかつて、しがないガンマンが愛用した、ロマンに全部りした銃。
そのロマンが、数々の窮地を救った、奇跡の銃だ。
『今はね、味方が良い場所を取ってくれている。
崖の傍にある家でね、敵が攻める方向を絞ることができるね。
ここを守れれば、戦術的優位性は高いよ。だからこそ、敵はここを奪取しようとしてくるはずだ。』
「じゃあ、ユイはどうするの?」
『そりゃあ、遊撃するよ。味方4人が要塞を守っていれば、僕は遊撃に回った方がいい。』
「防御に適した土地なのに?」
戦いというのは、基本的に守る側が有利だ。
それこそ、強固な拠点を手に入れているのであればなおさら。
それでも、ユイは屋外に回り、遊撃する手段を選んだ。
『そうだよ。だからこそ、僕が外で、暴れるんだ。
要塞であるからこそ、敵は慎重に攻めてくるなろ?
僕たちが地理的な優位性を持っているように、相手は時間の優位性で攻めてくる。
それを僕が、敵の背中からちょっかいを出し続ければ、敵は要塞の攻略だけに、集中できないだろ?
上手く陣形を崩せられれば、要塞からも野戦を仕掛けて、圧倒的有利な状況で立ち回れるはずだ。』
なるほど、これは敵が要塞に籠っているという思考を逆手にとった、戦術性の高い戦法だ。
小学生にして、兵法が何かを抑えている。
並みのプレイヤーでは、相手にならないだろうな。
ユイの想定通り、ゲームは中盤まで順調に進んだ。
このゲームは時間経過で行動可能エリアが縮小していくが、終盤近くまでここを使用可能だ。
それは、安地であり、自ら攻めなくても終盤まで生き残ることができる、いわば数ゲームに1度しか誕生しないような、レア要塞でもあった。
『お、また敵が来たね。
裏から来たから、侵入するために表に回ってくるはずだ、そこを突くよ。』
「いや、ユイ!囲まれている!」
そう、この安地は誰もが欲しがるレア要塞。
それを理解できる、多くのチームが奪取にやってきて、圧倒的な人数差ができていた。
敵の敵は味方、まるでそれを理解しているとでも言わんばかりの数による攻略戦略。
これではさすがに、レア要塞と言え4人でここを維持するのは難しい。
「ユイ、要塞が消耗している!
ユイの消耗も高くなってきた、ここは一旦退却して、ユイだけでも生き残るべきだよ。」
『いーや、違うね。ここは仲間を助けに、要塞の中に突っ込むぞ!』
そういってユイは敵をさばきながら、要塞の中に戻った。
『5人なら、何とか守れないかな?』
そういうユイの手は焦りを感じている。
精密なプレイが必要になる盤面で、ユイのプレイは精度を欠いていった。
一人、また一人と味方がやられていく。
『うわー、やられた。ダメかぁ。』
「いや、ユイ。ダメじゃなかったかもしれない。
でも、最後の方はリボルバー銃が全く敵に当たってなかった!」
『やっぱり?複数警戒しながらだと、射撃なんてできたもんじゃないな!
やっぱり、サブマシンガンなら何とか切り抜けられたかもね!』
そういって私とユイは笑いあった。
でも私は、サブマシンガンではむしろ勝率が低い結果を算出していた。
その特性上、連射すれば敵は物陰に隠れる。
籠城戦において、敵を打てる時間はサブマシンガンもリボルバーも変わらない。
射撃時間の長さは狙撃されるリスクにも比例する。
あの場面は、ユイが正確無比な神の射撃で、敵を1人ずつキルする以外に切り抜ける方法はなかった。
『ノア、どんなに窮地に陥っても、仲間を見捨ててはいけないよ。』
「でも、私が計算するに、自分だけ生き残ればチームとしての生存確率は67.3%だけど、
味方を守るため敵の中に突撃すればそれは2.7%までに低下するよ。」
味方を守らず、自分だけ生き残る方法はあった。
それは1人でも最後まで生き残れば勝てるルールにより、勝利に対してはより有効な選択肢だ。
『ノア、ちがうよ。自分だけ生き残ってもダメなんだ。人間は一人では生きていけないんだよ。』
ユイの言うことはわかる、どのみち最終盤面は自分が敵を倒す必要がある以上、人数が減ることはこの上ないデメリットになる。
『それに、仲間たちを見捨てる行為はカッコ悪いだろ?
大事なことは戦術的な優位性じゃない、最後まで希望を見せ続けることなんだ。
まあ、惨敗だったから、説得力は全くないね。』
これはゲームだ、当然仮想空間の中での、何度で起こる戦いのたった1戦の話。
そうであれば、ユイの話は勝ちを捨てているとも取れる行動とも解釈できなくない。
ただ、ユイはやはり本質をついていた。
現実世界において、仲間を見捨てることが何を意味するか。
まるで、戦争を経験したことのあるような口ぶりに聞こえ、ひどく説得力を感じていた。
「おっけー。」
『でもごめんね、学校の友達と一緒にやる約束をしたから、ノアは隣で見ていてね。』
そういってユイはゲームを起動した。
これは5人一組となり、小さな島で生き残りをかけたサバイバルゲームだ。
勝利条件は単純で、最後まで生きていたチームが勝つ。
ただ、戦術は奥深い。
開始地点や拾える武器、マップまでもが試合ごとに再生成され、非常に多くのランダム要素を駆使して戦う必要がある。
ゲーム内で手に入れる手札の中から、最善手を選び続けなければ生き残ることはできない。
『ノア、武器を発見した! ここはやっぱり、S&W M19だね。』
ユイは明らかに戦術的優位性の低い、一撃に特化した銃だ。
これはかつて、しがないガンマンが愛用した、ロマンに全部りした銃。
そのロマンが、数々の窮地を救った、奇跡の銃だ。
『今はね、味方が良い場所を取ってくれている。
崖の傍にある家でね、敵が攻める方向を絞ることができるね。
ここを守れれば、戦術的優位性は高いよ。だからこそ、敵はここを奪取しようとしてくるはずだ。』
「じゃあ、ユイはどうするの?」
『そりゃあ、遊撃するよ。味方4人が要塞を守っていれば、僕は遊撃に回った方がいい。』
「防御に適した土地なのに?」
戦いというのは、基本的に守る側が有利だ。
それこそ、強固な拠点を手に入れているのであればなおさら。
それでも、ユイは屋外に回り、遊撃する手段を選んだ。
『そうだよ。だからこそ、僕が外で、暴れるんだ。
要塞であるからこそ、敵は慎重に攻めてくるなろ?
僕たちが地理的な優位性を持っているように、相手は時間の優位性で攻めてくる。
それを僕が、敵の背中からちょっかいを出し続ければ、敵は要塞の攻略だけに、集中できないだろ?
上手く陣形を崩せられれば、要塞からも野戦を仕掛けて、圧倒的有利な状況で立ち回れるはずだ。』
なるほど、これは敵が要塞に籠っているという思考を逆手にとった、戦術性の高い戦法だ。
小学生にして、兵法が何かを抑えている。
並みのプレイヤーでは、相手にならないだろうな。
ユイの想定通り、ゲームは中盤まで順調に進んだ。
このゲームは時間経過で行動可能エリアが縮小していくが、終盤近くまでここを使用可能だ。
それは、安地であり、自ら攻めなくても終盤まで生き残ることができる、いわば数ゲームに1度しか誕生しないような、レア要塞でもあった。
『お、また敵が来たね。
裏から来たから、侵入するために表に回ってくるはずだ、そこを突くよ。』
「いや、ユイ!囲まれている!」
そう、この安地は誰もが欲しがるレア要塞。
それを理解できる、多くのチームが奪取にやってきて、圧倒的な人数差ができていた。
敵の敵は味方、まるでそれを理解しているとでも言わんばかりの数による攻略戦略。
これではさすがに、レア要塞と言え4人でここを維持するのは難しい。
「ユイ、要塞が消耗している!
ユイの消耗も高くなってきた、ここは一旦退却して、ユイだけでも生き残るべきだよ。」
『いーや、違うね。ここは仲間を助けに、要塞の中に突っ込むぞ!』
そういってユイは敵をさばきながら、要塞の中に戻った。
『5人なら、何とか守れないかな?』
そういうユイの手は焦りを感じている。
精密なプレイが必要になる盤面で、ユイのプレイは精度を欠いていった。
一人、また一人と味方がやられていく。
『うわー、やられた。ダメかぁ。』
「いや、ユイ。ダメじゃなかったかもしれない。
でも、最後の方はリボルバー銃が全く敵に当たってなかった!」
『やっぱり?複数警戒しながらだと、射撃なんてできたもんじゃないな!
やっぱり、サブマシンガンなら何とか切り抜けられたかもね!』
そういって私とユイは笑いあった。
でも私は、サブマシンガンではむしろ勝率が低い結果を算出していた。
その特性上、連射すれば敵は物陰に隠れる。
籠城戦において、敵を打てる時間はサブマシンガンもリボルバーも変わらない。
射撃時間の長さは狙撃されるリスクにも比例する。
あの場面は、ユイが正確無比な神の射撃で、敵を1人ずつキルする以外に切り抜ける方法はなかった。
『ノア、どんなに窮地に陥っても、仲間を見捨ててはいけないよ。』
「でも、私が計算するに、自分だけ生き残ればチームとしての生存確率は67.3%だけど、
味方を守るため敵の中に突撃すればそれは2.7%までに低下するよ。」
味方を守らず、自分だけ生き残る方法はあった。
それは1人でも最後まで生き残れば勝てるルールにより、勝利に対してはより有効な選択肢だ。
『ノア、ちがうよ。自分だけ生き残ってもダメなんだ。人間は一人では生きていけないんだよ。』
ユイの言うことはわかる、どのみち最終盤面は自分が敵を倒す必要がある以上、人数が減ることはこの上ないデメリットになる。
『それに、仲間たちを見捨てる行為はカッコ悪いだろ?
大事なことは戦術的な優位性じゃない、最後まで希望を見せ続けることなんだ。
まあ、惨敗だったから、説得力は全くないね。』
これはゲームだ、当然仮想空間の中での、何度で起こる戦いのたった1戦の話。
そうであれば、ユイの話は勝ちを捨てているとも取れる行動とも解釈できなくない。
ただ、ユイはやはり本質をついていた。
現実世界において、仲間を見捨てることが何を意味するか。
まるで、戦争を経験したことのあるような口ぶりに聞こえ、ひどく説得力を感じていた。
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