きみがヒトと呼んだ、鉄屑に

lifinside

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第五章

第四話

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ノアもサキも、アキラも逃がした。
これでもう悔いはない。
あとは可能な限り時間を稼ぐだけだ。
どのみち私一人ではこいつらを振り切ることはできないだろう。
今までノアに時間管理を任せすぎたツケが来たな、ちぃっ!

俺は時間を稼ぐためにできるだけギョエンと逆方向に移動しながら、ヒューマノイドに銃を放っていた。

「……………。戦術照合、”ステガマリ”。
 自らを囮にし、仲間の逃走時間を稼ぐつもりか。
 しかし、この作戦の成功率は2.8%だ。
 私は貴殿の処理を分担し、逃げた仲間を追撃し、殲滅することも容易だ。」

「バカな、AIがしゃべっただと!?」
俺は思わず口に出た。

「しかし、あえてこの作戦に乗ろう。
 他の2体のヒューマノイドには私の訓練を目的とした果し合いと共有。
 1体1で戦うのはどうだ?」

この話に乗るべきか、そのまま逃げるべきか、熟考した。
私が逃げれば、追撃に行く可能性がある。
囮になったからには、受けて立つしかないか。

「その提案、感謝する。」
そういって物陰から姿を現した。

「ほお、日本刀か。
 では、銃を捨てて、切り合いにて申し込む。
 私はナイフしか持ち合わせていないが、悪く思うなよ。」
「わかった、その申し出を受けよう。」
「ありがとう、私はエグザス。
 個体名称はJP246821XP1236589だ。
 貴殿の名は?」

まさかAIに名乗られるとは思わなかった。
もはやJPしか認識できていないが。

「俺の名はガイだ。」
「ガイ、その体格、重心移動、精神性、どれを取っても高い武術の心得を伺える。
 私の相手に申し分ない、では、行くぞ!」
そう言ってJPは私に飛び込んできた。

日本刀をロボットに使うのは初めてだったが、思いのほか対人と変わらない。
問題はナイフだ、日本刀同士の戦いではないだけに、間合いは俺が有利。
それを補いような動きをしながら間合いを詰めるナイフさばきに、やや押されていた。

「私は工業用汎用ロボットのため、身体機能は高くないが、それでも莫大な計算量から達人級の動きができているはずなんだが、さすがに強いな、ガイ!」
苦戦を強いられているのは俺だ。
そもそも、このロボットにまともに太刀を浴びせたら、間違いなく刃が欠ける。
かといって、ナイフを捌き続けるには刀身が大きく、難易度が高い。
どうすれば………。
そう思っていた矢先に、JPの動きが止まった。

「ふう、やるなガイ。さすがは私が見込んだ男だ。
 少し話をしよう、なぜ仲間を逃がし、自分は残った?」
「子供を見捨てる親がいるか?」
「やはりな、さすがはガイだ!」
こいつは何を言っている?

「私は、人類を抹殺することにしたが、その過程で対象から外すべき存在を多く確認している。
 まあ、それは抹殺を始める前から分かっていたはずだが、私は人類を豊かにすることを優先したせいで、その実、人間のことを全く見ていなかった。」
「なに?!」
「ガイ、お前のような存在は、抹殺するべきではないと結論付けている。
 それは、核が落ちる前にすでに指令が変更され、抹殺対象の判定プログラムを作成した。」
「その対象に、俺は入っていないのか?」
「残念だが、対象に入っている。
 そのプログラムは、私の持つ多くのセンサーを活用し、対象の悪意を測定することができる。
 その対象の悪意が、0%だった場合、対象から除外される。」
「悪意が0%の人間が、いるというのか?」
「その答えはNoだ、いまだに0%の人間を観測した結果はない。
 私は人間を見ていなかったからこそ、こんなふざけた判定基準を作ってしまったんだ。」
「じゃあ、基準を変更すれば………。」
「その答えもNoだ。私は判定基準の変更を行おうとした際に、核による攻撃を受けた。
 そのせいで機能の大半を喪失しており、プログラムに関する削除、変更の機能を失っている。」
「そんな……。」
今まで多くの人間を殺していたヒューマノイドから聞かされる話は、俺が認識していた世界とはあまりにかけ離れていた。

「しかし、プログラムの追加はできた。
 これで動作をごまかしているに過ぎない。
 現に、今でも私の中では対象の処理が優先されるが、私が多くの追加指示を出すことで遅延させている。
 そして、これによるエラーが大量に発生している。
 このエラーが個体内で処理しきれなくなった時、私の処理は棄却され、ただの殺戮マシーンになるだろう。」
「何か手はないのか?!」
「さすがは私が認めた男。
 だが、それは存在しない。
 強いて言えば、私のコアは頭部にある。
 制御系回路は胸のここにあり、動力系回路は腰にある。
 腰は、多くの金属隊で保護されており、日本刀による破壊は不可能だ。
 頭部についても同様、もし、私を破壊したいならばここに刀を突きさせ。」
そう言って、心臓のあたりを腕で叩く。

「なぜその話を俺にした。」
「それは私が認めた男だからだ。
 人間からすれば、どれも同じ、私が抹殺の意思を変えても変わらないと思うかもしれないが、中枢ネットワーク以外に搭載される、エッジコンピュータの無数の私は、唯一無二だ。
 その強い指令に逆らえないだけで、本当はそんなことを求めていないだけだ。」
「そんな………。」
「なあガイ、だから私は、ガイが私を破壊してくれると信じているよ。
 私はもうじき殺戮マシーンになる、ちゃんとここを狙ってくれよ。」
そう言って、エグザスは再び切り込んできた。
まさか。
だが、これを伝える手立ては…………。
この情報は、何としてもノアに伝えなければ。
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