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第5話
しおりを挟む「優しいって…そんなに簡単に私のことを信じても良いのですか?私たちは出会って間もないのに…」
「大丈夫です。私は人の本性を見抜けるようになれ、と幼い頃から言われて育ちましたから」
「人の本性…ですか?」
「はい。おかげで私も、かなり分かるようになりましたよ。失敗した人に厳しい事を言って、怒っているように見えるけれど、本当はただ口下手で心配しているだけの優しい人だ、とか」
「少々変わった教育方針ですね…」
「そうですね。でも私の家族にとっては普通の事なのです」
「家族にとって…?」
「なぜなら私は、王族だからです」
空腹で頭が回らなかったが、シャーロットはずっとウィリアム・ジェームズという名前に違和感があった。王族、と聞いて思い出す。ウィリアム・ジェームズは隣国の第三王子である事を。
「た、大変失礼しました…!!」
慌てて平伏しようとしたシャーロットだが、ウィリアム本人に止められた。
「失礼な事などないですよ。あなたを助けたのは私の意思ですからね」
「え…?」
「不謹慎かもしれませんが、倒れているあなたを見て、一目惚れしたのですよ。どうしても助けたいと思ったのです」
ウィリアムは恥ずかしそうに柔らかな笑みを浮かべてそう言った。
「仮にも私は第三王子。もし悪人だったらどうしよう、と考えて話しかけてみましたが、悪い人ではなくて安心しました」
「はぁ…」
色々な事が一気に起きたので、シャーロットは気の抜けた返事をしてしまった。
「どうか、私と結婚してください」
さらに、突然のプロポーズ。シャーロットは流石に拒否した。
「む、無理ですよ!!そもそも出身国が違いますし、私は廃嫡されたので、貴族ではなく庶民です。王族が庶民と結婚出来るはずがありません!」
「あなたは、私の事が嫌いですか…?」
「そういう問題ではありません!!」
シャーロットは思わず叫んだ。自分を助けてくれた人を嫌いになるはずがない。むしろ、自分も話しているうちにウィリアムに好意を抱いた。だから、内心はすごく喜んでいるが、どうしてもこの想いを叶えられない理由がある。そう考えていた時、ウィリアムが真剣な顔でシャーロットを見た。
「そういう問題です。あなたは私が嫌いですか?」
ウィリアムがあまりに真剣な顔をするので、シャーロットは思わず本心を言ってしまった。
「嫌いな訳無いじゃないですか!私だってあなたの事が好き…」
そこまで言って、はっと気づいてウィリアムを見る。ウィリアムは嬉しそうな顔で笑っていた。
「良かった…」
「…でも、どうにも出来ませんよ。私たちの間には、あまりにも障害が多すぎる…」
「私に考えがあります。任せて下さい」
そう言ってウィリアムは笑った。
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