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結局、田舎で我に帰る
47 ラッシュの動揺
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その村に着いたとき。
感じた事のない魔力が、竜巻の様に轟轟と立ち上がって上空へと伸びていた。
めきめきと音を立てて、家だった物に木が生えていく
土壁も石畳の床も、椅子も。
鍋や食器さえその木の成長に突き上げられ、飛ばされて空の中でくるくる回っている。
それがガシャン、シャリンと落下する中を、嫌がる馬を攻め立ててラッシュはそこに向かった。
オベリオが動かしてくれた転移陣はとても大きく正確で、騎乗した騎士隊を一気に運べた。
しかし何の益もない田舎だけあって、その拠点は遠く、必死で馬で駆けた。
「この中にいる!」
村人からルツの家を聞いて、目指した。
その家が今やぎっしりと木が伸びて、腕さえ突っ込む隙間のない森になっている。
探索したら、この中にルツがいると、アメデオは焦った様に言った。
意識不明の者が二人。
そして敵がいると。
敵。
その言葉に焦るラッシュは、枝をかけ分けようとした
でもその木々はびくともしない。
ぎっしりとスクラムを組んで、中のモノを隠そうとしている。
「ルツ‼︎いるのかっ⁉︎」
何度か叫んだが、狭い隙間が音を消していく。
敵。
敵がっ!
焦り、じれたラッシュは荒技に出た。
「ルツッ!伏せろっ‼︎」
錐のように鋭く。
糸のように細く。
魔力に乗せて木の間に声を放つ。
それと同時に身体をバネのように反らせて、力を前に集めた。
空気を刃物にして、思いっきり突き出す。
万が一身動き出来ないルツの為に。
ルツの背よりほんの少しだけ高い所に、その圧を放った。
ギヂギヂギヂッッ
外側の幹に当たって、ソレは振動しながら切断していく
ガヂカヂカヂッッ
枝が葉が、空気の刃で切り取らればらばらと飛び散る。
切断された木々は圧に吹き飛ばされて向こうへと飛ばされていく。
同じ高さに切断されていく木々を凝視して、その中のルツを探す。
ギギギッ
ごぶっ
硬質な木とは違う湿った音がして。
見えない空気の刃はその森を抜けて行った。
丘の向こうの青空へと消えていく。
「ルツッ!どこだっ⁉︎」
ぽっかりと収穫されたエノキのような森に叫ぶ。
その中で銀色の光がふわりと揺れた。
森は中心部が空地になっている。
みっしりとした木が無くなって、日光が差し込む。
そこに光がちらちらと舞い上がる。
それは風に煽られた銀の髪だった。
その銀糸がふわふわと辺りを見回している。
大きく見開かれたエメラルドグリーンの瞳が見回している。
それが金粉をまぶしたようにキラキラと輝く。
彼だ。
"月の君"だ。
その綺麗な顔が驚いたように辺りを見回し。
ラッシュを見つけると、一瞬泣きそうに歪んで唇が震えた。
力を無くしてふらりとへたり込む。
その目はじっとラッシュを見ていた。
やがて揺れていた眼差しが、ひたりとラッシュをとらえた。
はっきりとその目に捕まって、それが喜びに溢れていくのをラッシュは見た。
「ラッシュ様ぁ‼︎」
彼が木の間を抜けて走ってくる。
木が脇に揺れて彼を通している。
し、しかも裸だっ!
木の中から飛び出してくる彼は、月というより妖精だ。
「ラッシュ様!」
いきなり抱きつかれた‼︎
あわあわしたけど、役得だからと抱き締める。
細い。柔らかい。いい匂いがするっ!
頼むぞ、毛細血管‼︎
ここで鼻血を吹いたら変質者に逆戻りだっ!
~~何故か。
今そんな考えいらんだろう‼︎
というのが溢れてくる。
現実逃避の為なのかっ!
いかん。
理性。
彼は裸だっ。
咄嗟に留め具を外してマントを着せる。
よくやった自分。
グッジョブだ、自分。
これで彼の裸は守られた!
ああ、今度こそ名前を教えて貰おう。
今度こそ、約束するのだっ!
……でも、何故彼が?
頬の熱さで頭が沸騰する。
縋りつかれた胸に腕に、熱が集まる。
熱い!じんじんと熱いっ!
だがその熱さの中で、凍りついた自分が叫ぶ。
そんなことよりルツは何処だ。
無事なのか?
見てとった、倒れた人の中に。
ルツの言ってた"干し椎茸の様なじいサマ"はいない。
どういう事だ。
俺はミスしたのか。
間に合わなかったのか。
ルツは何処だ。
無事なのか。
抱きしめた身体は、もう意識の外だった。
目が、枝という枝を睨みつける。
何処にいる。
俺は間に合ったのか?
感じた事のない魔力が、竜巻の様に轟轟と立ち上がって上空へと伸びていた。
めきめきと音を立てて、家だった物に木が生えていく
土壁も石畳の床も、椅子も。
鍋や食器さえその木の成長に突き上げられ、飛ばされて空の中でくるくる回っている。
それがガシャン、シャリンと落下する中を、嫌がる馬を攻め立ててラッシュはそこに向かった。
オベリオが動かしてくれた転移陣はとても大きく正確で、騎乗した騎士隊を一気に運べた。
しかし何の益もない田舎だけあって、その拠点は遠く、必死で馬で駆けた。
「この中にいる!」
村人からルツの家を聞いて、目指した。
その家が今やぎっしりと木が伸びて、腕さえ突っ込む隙間のない森になっている。
探索したら、この中にルツがいると、アメデオは焦った様に言った。
意識不明の者が二人。
そして敵がいると。
敵。
その言葉に焦るラッシュは、枝をかけ分けようとした
でもその木々はびくともしない。
ぎっしりとスクラムを組んで、中のモノを隠そうとしている。
「ルツ‼︎いるのかっ⁉︎」
何度か叫んだが、狭い隙間が音を消していく。
敵。
敵がっ!
焦り、じれたラッシュは荒技に出た。
「ルツッ!伏せろっ‼︎」
錐のように鋭く。
糸のように細く。
魔力に乗せて木の間に声を放つ。
それと同時に身体をバネのように反らせて、力を前に集めた。
空気を刃物にして、思いっきり突き出す。
万が一身動き出来ないルツの為に。
ルツの背よりほんの少しだけ高い所に、その圧を放った。
ギヂギヂギヂッッ
外側の幹に当たって、ソレは振動しながら切断していく
ガヂカヂカヂッッ
枝が葉が、空気の刃で切り取らればらばらと飛び散る。
切断された木々は圧に吹き飛ばされて向こうへと飛ばされていく。
同じ高さに切断されていく木々を凝視して、その中のルツを探す。
ギギギッ
ごぶっ
硬質な木とは違う湿った音がして。
見えない空気の刃はその森を抜けて行った。
丘の向こうの青空へと消えていく。
「ルツッ!どこだっ⁉︎」
ぽっかりと収穫されたエノキのような森に叫ぶ。
その中で銀色の光がふわりと揺れた。
森は中心部が空地になっている。
みっしりとした木が無くなって、日光が差し込む。
そこに光がちらちらと舞い上がる。
それは風に煽られた銀の髪だった。
その銀糸がふわふわと辺りを見回している。
大きく見開かれたエメラルドグリーンの瞳が見回している。
それが金粉をまぶしたようにキラキラと輝く。
彼だ。
"月の君"だ。
その綺麗な顔が驚いたように辺りを見回し。
ラッシュを見つけると、一瞬泣きそうに歪んで唇が震えた。
力を無くしてふらりとへたり込む。
その目はじっとラッシュを見ていた。
やがて揺れていた眼差しが、ひたりとラッシュをとらえた。
はっきりとその目に捕まって、それが喜びに溢れていくのをラッシュは見た。
「ラッシュ様ぁ‼︎」
彼が木の間を抜けて走ってくる。
木が脇に揺れて彼を通している。
し、しかも裸だっ!
木の中から飛び出してくる彼は、月というより妖精だ。
「ラッシュ様!」
いきなり抱きつかれた‼︎
あわあわしたけど、役得だからと抱き締める。
細い。柔らかい。いい匂いがするっ!
頼むぞ、毛細血管‼︎
ここで鼻血を吹いたら変質者に逆戻りだっ!
~~何故か。
今そんな考えいらんだろう‼︎
というのが溢れてくる。
現実逃避の為なのかっ!
いかん。
理性。
彼は裸だっ。
咄嗟に留め具を外してマントを着せる。
よくやった自分。
グッジョブだ、自分。
これで彼の裸は守られた!
ああ、今度こそ名前を教えて貰おう。
今度こそ、約束するのだっ!
……でも、何故彼が?
頬の熱さで頭が沸騰する。
縋りつかれた胸に腕に、熱が集まる。
熱い!じんじんと熱いっ!
だがその熱さの中で、凍りついた自分が叫ぶ。
そんなことよりルツは何処だ。
無事なのか?
見てとった、倒れた人の中に。
ルツの言ってた"干し椎茸の様なじいサマ"はいない。
どういう事だ。
俺はミスしたのか。
間に合わなかったのか。
ルツは何処だ。
無事なのか。
抱きしめた身体は、もう意識の外だった。
目が、枝という枝を睨みつける。
何処にいる。
俺は間に合ったのか?
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