【完結】初恋の君を探していたが、本人と気づかずにあれやこれやとドツボにハマる話

たまとら

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結局、田舎で我に帰る

48 【完結】プラマイゼロからの始まり

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「ルツく~ん~」

馬で周りを駆け回るアメデオの声が遠くからする。


まさか…

さっきのエアカッターで、一緒に斬り飛ばしてしまったりしてないよなっ!?
ぐらぐらゆれる思考で、ラッシュは足元が崩れ落ちる気がした。

敵に何処かで監禁されて、身動き出来ないのか?

ルツを呼ぶ声。

どうした?返事が出来ないほど弱ってるのか?

抱き締めている彼は、ラッシュの胸に頭を押し当てている。
その頭をぎゅっと両腕で抱えている。
マント越しに細かい震えが伝わってくる。
怖かったのだろう…

ルツも、今ごろ怯えているかもしれない…

腕の中の彼への喜びと、ルツへの心配で、焦りがどんどん膨れ上がってくる。
怯えた彼を残して探しに行く訳にも行かない。
ルツは、ルツは無事なのか。


「ルツ君‼︎」

近くでアメデオの声がした。

途端に腕の中の彼の頭が、くん。と上がる。
服をぎゅっと握っていた手がぱっと開かれると、むしろ突き放すように。
つん。と、体を離して彼は振り向いた。


「はぁーい!」
彼が返事する。

「ルツ君!良かったぁ。」

彼はそのままアメデオに向かって走って行く。
着せたモスグリーンのマントがひらりと旗めいて、白いふくらはぎが眩しい。
そして、そのまま彼が飛び付いた。

「もう!ビビっちゃったよ‼︎勝手に突っ走っちゃダメでしょう!」

「すみません…」

しょぼんとした彼はそれでもやっぱり綺麗で…


違うっ‼︎

ラッシュは呆然と二人を見た。

「…る…つ…?」

自分でも驚く程にか細い声なのに、ルツは元気に「はい!」と振り向いた。

「ルツ…?」

「はい‼︎」

「ルツ⁈」

「はい⁉︎」


はああぁぁぁぁっ

理性が成層圏を突き抜けて。
深くて暗い穴に落ち込んだように崩れ落ちる。

どゆこと!?

どぉいぅことぉ⁉︎


彼を抱き締めたままのアメデオは小首を傾げる。

「わかってなかったの?マジで⁉︎
絶滅危惧種の森人が同じ地域に同じ年頃でいる事に、なぁ~んにも疑問が無かったの?」

アメデオの目は光ってる。
猫が鼠を見つけた時の目だ。

あんぐりと口を開けてるラッシュに思考力は無い


遠くで、
「ああ、ザナ!やっぱりザナや‼︎
ルツたんの匂いがザナとそっくりやったんで、きっとそうやと思っとりましたわぁ!」
「オベリオ…40年ぶりかなぁ…」
という、なんか気色の悪い会話が聞こえた。
アメデオがちらりと視線を向けて、新しいデータににんまりしてるが、ラッシュの頭には入っていかない。

「ぃやぁ。ルツ君が微妙に魔力で全身覆ってたの。よく見るとわかったじゃないですかぁ。
まぁ、"月の君" しか頭に無くてコレとか言ってたから、じっくり見ることも無かったんでしょうけどねぇ。」

うん。
アメデオは深層にダメージを叩き込むのが上手い。

おかげで、ようやく動き出したラッシュの頭には。
コレというアメデオの呼び水で、刷り込みのように"コレ"だの"おい"だのが巡った。
まともな奴なら、絶対お近付きにはなりたくないような俺様語録が、走馬灯の様にぐるぐる巡る。


がぁーん‼︎
という顔をしていたのだろう。

菩薩のような微笑みでアメデオは激励した。

「大丈夫。
さっきも抱き着いてくれたよね。
"コレ"だの"おい"だの"ぱんつ"だのでマイナスだったのが、きっとプラスに変わったよ!
まぁ、プラス2くらいにはなったかなぁ。」

がんば♡

拳を握った清々しい笑顔は、泣ける程にありがたい。
さすがアメデオ。
抉ることは忘れない。


マントの前をかき合わせて。
ルツはザナの声に笑顔で答えている。
そのエメラルドグリーンの瞳は、陽にさらされてキラキラしている。

綺麗だ。
そして、何故か鶸萌黄の瞳と被って見える。

ルツは、オベリオ老によって抱き上げられたザナへと走って行く。
木立の中で銀糸が踊る。

その銀糸を綺麗だと思いつつ。
麦藁色の髪が翻らないのを残念に思う。



ラッシュはしばらく二人の森人を黙って見守った。
ルツが自分を売ろうとした時の、怒りは何だったのだろう。
いや、本当はわかっている。
この気持ちは正体が知れている。
"月の君"を追い求めた。
そのジリジリした思いが、徐々にあの鈍臭い地味な姿に被って行った。
でも、蓋を開けたらどっちもルツで。
心と気持ちを引き裂かなくて良くなった。

どっちと一緒にいたいかといえば…

まあ、+-0じゃ無くて+だし。
しかも2ポイント付いてるし。
卒業迄は世話係は続くわけだし。
コレから+を増やしていけばいいんだよな。


そう、可哀想なくらいにポジティブなラッシュは➕2の評価にとりあえず満足した。




「さぁて。エストバル伯にも王様にも。
報・連・相ですよっ‼︎」

行商人はもう死体だが、徴税役人は捕縛した。
アメデオの掛け声に、皆んなは
「はいっ!」
と声をあげた。




       お終い


        ************


今まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
時々頂くメールに、どれだけ舞い上がったかは猫だけが知っております。
なんとか完結まで行けたのは、読んで頂いた方々のおかげです!
五体投地で感謝を!

次こそは笑って明るい話を‼︎
と、思っております。
ご縁がありましたから、またよろしくお願いしますʅ(◞‿◟)ʃ
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感想 8

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みんなの感想(8件)

稲葉の白うさぎ

完結おめでとうございます。
ルツくんもザナ様も無事だったことに一安心です。
ラッシュ様もホントのルツくんに会えて良かったです。
結果、良かった良かったです(笑)

機会があれば、番外編などもよろしくお願いしますm(_ _)m

2023.06.01 たまとら

ありがとうございます!
なんか、本当に、本当に、感想が嬉しかったです‼︎

機会があれば是非☆
機会があれば、またよろしくお願いします♡

(*≧∀≦*) (*´∇`*) ╰(*´︶`*)╯♡

解除
稲葉の白うさぎ

作者さま、この先怖くて未読です。
もう少し先延ばしします、すみません😢

2023.05.18 たまとら

いやいやいや、ありがとうございます‼︎
大丈夫!
もうすぐ終わります!
ちゃんと『完結』をつけますから、安心してお待ちくださいませ♡

解除
稲葉の白うさぎ

続けての投稿ですみません、このドキハラとウキワクをどうしても伝えたくて、連投してしまいました。

ふむふむ、怒りは爆誕するものなんですね。  
ひとつ勉強になりました…つっても、ラッシュ様限定かしら?(笑)

ラッシュ様が間に合ってよかったです。
さて、これから先の展開が楽しみです。

2023.05.02 たまとら

来るんですよー
なんのかんのいいながらも、ルツが結構気に入ってるわけですし。

笑っちゃいますよねー

ちなみにラッシュはなかなか怒りを爆誕させるんです(*≧∀≦*)(笑)(笑)

解除

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