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後宮 2
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「拝謁頂きまして、望外の喜びでございます。」
褐色の肌の金の髪の女性が声を上げた。
「わたくしはナウィ・アトルと申します。
斎王様、お会いしとうございました。」
「斎王。私をそう呼んでくださるのですか。」
「もちろんでございます。」
「貴方様は斎王様でございます。」
「お会いしとうございました。」
次々と女達が名乗りながら微笑む。
あぁ、光の中で花のようだ。
肯定されることに、緊張していたシリンはほっとした。
ゆっくり朝食をとり、いろいろ話をし、お互い寛いで笑顔が出るようになった。
「斎王様の宮は、最奥にございます。よろしければ、わたくしが案内を致したいのですが。」
「ありがとう存じます。お願いいたします。」
アトルと連れだって、光の間を後にする。
ほかの女達は、退出にお辞儀をする。
「私はこれから貴女達と暮らす事になります。わからないことも多いと思いますので、いろいろ教えて下さい。お願いいたします。」
シリンの言葉に彼女達は頬を染める。
扉が閉まると、中からくーっ!と歓声が響いた。
花園の道を歩く。よく見ると薬草が多い。
それを数えているのを見て、アトルは微笑む。
「こちらは軍事国家ですから、後宮もムダにはしておりませんの。食べれる木ノ実、傷や回復の為の薬草が植えられておりますわ。そして、わたくし達はそれの世話もしております。王は綺麗なだけの役立たずは要らぬと申されましたの。」
足元には、小川が流れている。
「斎王様でしたら、禊をなさりたいと思いまして。」
小さな建物を指差した。
「あの中には、湧き出る泉がございます。泉の縁は浅くなっておりますから、禊にはちょうどいいと存じます。」
こんなに緑の濃い所で泉に浸かるのは、さぞかし気持ちいいだろうなぁ。
「王が人目に晒されないようにと建物を建てましたから、いつでもゆっくりなされますわ。」
悪戯をするようにクスリと笑う。
とても美しくて、魅力的な女性だ。
「光の間は、たまに商人や騎士が参りますが、そこから他に踏み込むことはございません。最奥に入れるのは、王のみです。」
「…王は、貴方様の世話をするのに、男は駄目だとおっしゃいました。これから神殿から送られてくる側仕え達は、きっとかなりお年を召されていると思います。」
「わたくしは、もうここで十年すごしました。姫が入れ替わりいらっしゃいますが、わたくしが一番長いのです。皆、疲れてしまわれて…。」
「ですから、嬌を競ったり、意地悪をしたりするほどに熱い者はおりませんの。ご安心下さいませね。」
とつとつと語る彼女の目から汲み取って、テュールに先に行って部屋の窓を開け放つように言いつける。
小鹿のように走り去る背中に、アトルはうなずく。一瞬目が光る。
周りに誰かの目が無いか、阿吽の呼吸で探る。
コレが後宮。
「誰も信じてはいけません。テュールも。あの子の真心は真実。でも斎王様の知らない下法が御座います。」
聞こえるか聞こえないかの囁きが耳に入ってくる。
「わたくし達は貴方様をお慕いしております。でもわたくしの心を沈めて、その身を害するかもしれません。神殿の者でも、わたくしですら、信じてはいけません。」
ふっと雲が流れて陽が翳る。
じっと見つめ合うと、シリンはゆっくり頷いた。
褐色の肌の金の髪の女性が声を上げた。
「わたくしはナウィ・アトルと申します。
斎王様、お会いしとうございました。」
「斎王。私をそう呼んでくださるのですか。」
「もちろんでございます。」
「貴方様は斎王様でございます。」
「お会いしとうございました。」
次々と女達が名乗りながら微笑む。
あぁ、光の中で花のようだ。
肯定されることに、緊張していたシリンはほっとした。
ゆっくり朝食をとり、いろいろ話をし、お互い寛いで笑顔が出るようになった。
「斎王様の宮は、最奥にございます。よろしければ、わたくしが案内を致したいのですが。」
「ありがとう存じます。お願いいたします。」
アトルと連れだって、光の間を後にする。
ほかの女達は、退出にお辞儀をする。
「私はこれから貴女達と暮らす事になります。わからないことも多いと思いますので、いろいろ教えて下さい。お願いいたします。」
シリンの言葉に彼女達は頬を染める。
扉が閉まると、中からくーっ!と歓声が響いた。
花園の道を歩く。よく見ると薬草が多い。
それを数えているのを見て、アトルは微笑む。
「こちらは軍事国家ですから、後宮もムダにはしておりませんの。食べれる木ノ実、傷や回復の為の薬草が植えられておりますわ。そして、わたくし達はそれの世話もしております。王は綺麗なだけの役立たずは要らぬと申されましたの。」
足元には、小川が流れている。
「斎王様でしたら、禊をなさりたいと思いまして。」
小さな建物を指差した。
「あの中には、湧き出る泉がございます。泉の縁は浅くなっておりますから、禊にはちょうどいいと存じます。」
こんなに緑の濃い所で泉に浸かるのは、さぞかし気持ちいいだろうなぁ。
「王が人目に晒されないようにと建物を建てましたから、いつでもゆっくりなされますわ。」
悪戯をするようにクスリと笑う。
とても美しくて、魅力的な女性だ。
「光の間は、たまに商人や騎士が参りますが、そこから他に踏み込むことはございません。最奥に入れるのは、王のみです。」
「…王は、貴方様の世話をするのに、男は駄目だとおっしゃいました。これから神殿から送られてくる側仕え達は、きっとかなりお年を召されていると思います。」
「わたくしは、もうここで十年すごしました。姫が入れ替わりいらっしゃいますが、わたくしが一番長いのです。皆、疲れてしまわれて…。」
「ですから、嬌を競ったり、意地悪をしたりするほどに熱い者はおりませんの。ご安心下さいませね。」
とつとつと語る彼女の目から汲み取って、テュールに先に行って部屋の窓を開け放つように言いつける。
小鹿のように走り去る背中に、アトルはうなずく。一瞬目が光る。
周りに誰かの目が無いか、阿吽の呼吸で探る。
コレが後宮。
「誰も信じてはいけません。テュールも。あの子の真心は真実。でも斎王様の知らない下法が御座います。」
聞こえるか聞こえないかの囁きが耳に入ってくる。
「わたくし達は貴方様をお慕いしております。でもわたくしの心を沈めて、その身を害するかもしれません。神殿の者でも、わたくしですら、信じてはいけません。」
ふっと雲が流れて陽が翳る。
じっと見つめ合うと、シリンはゆっくり頷いた。
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