囚われの斎王は快楽に溺れる  竜と神話の王国

たまとら

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王城  ガーデン

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銀の髪はテュールの想いを込めてすきこまれ、艶が光を反射するようだ。
ここしばらく入浴後の手入れを念入りにし、顔に果肉を貼ったりマッサージしていたりしていたおかげでつるつるの上に艶々している。
衣装はシミひとつない。
織物工房から届けられたソレは、防護の魔法を付与されて、百合の意匠で華やかで品が良い。

テュールは満足のため息を吐いた。

完璧だ。
自分の主を完璧に仕上げた満足感が込み上げる。


後宮では、宮の主達が、それぞれに着飾っていた。
ある者はその豊満な肢体を曝け出し、ただ宝石で飾り立て、薄く透ける布で覆っている。アトルは瞳と同じ色の光沢のあるドレスで、存在感を出していた。
自分の故郷の衣装で美しく飾っている。
眩い色の奔流が、人の目を引く。

 美しいです。と、皆を見て微笑んだ斎王に、女達は頬を染めて喜んだ。


長いこと囲い込んでいたラグナロワがゼオライトとして、ガーデンパーティーを開催いた。
百人程度なら入り切れる大広間ではなく、いつも馬上試合や兵の模擬戦をみせる庭を飾りつけたのだ。

斎王との婚姻も初夜性交という実務だけだったので、あらゆる国から人が来た。

そこで、いつもは出る事のない後宮から側妃達も接待として駆り出されている。
久しぶりの外に彼女達は頬を上気させ、楽しそうに人をもてなしている。


「あ、あそこに!」

誰とはなしに指差した向こう。
視界すれすれの辺りの空に、キラリと輝くものが認められた。

翼竜が視界に現れた。華やかで輝かしい姿であるということをラグナロワは認めた。
コンゴウはゆっくりと舞っている。
その姿は、確かに見るものに影響を与える。

ラグナロワは知っていても翼竜が自分に衝撃を与える事を認めた。

唖然と上を向く各国の大使の表情にも、ソレが伺える。

竜が突然、翼を折り畳み、一条の光となって空を真っ逆さまに落ちていく。

そしてあわやというところで、苦もなく翼を広げ再び上昇をはじめた。

歓喜が太陽のように発散されている。

荒々しい空中サーカスのような飛翔は、飛べる喜びに沸き立っている。

そしてみるものには、恐るべき能力を突きつけている。

コンゴウは、ゆっくりとパーティ会場を通過して、放牧場に降り立った。



「皆様、後でゆっくりと翼竜を愛て下さい。」


ラグナロワに腰に手を回され、シリンは連れ回された。
斎王としての微笑みを顔を張り付けてすごす。
斎王としての教育の賜物で、挨拶される国も大使も特産品まで答えられる。

「斎王、お久しぶりです。」
しっとりしたテノールがシリンを呼び止めた。
そこにはナカツクニの宰相であるミヤモトがたっていた。
優雅に礼をする。
ナカツクニは武よりも知に秀でた国だ。
以前からバーキュライトと親交があり、ミヤモトは顔馴染みだった。
ミヤモトの黒い瞳には、微かに痛みの色がある。

理路整然としたミヤモトをラグナロワは少し苦手にしていた。

「神話の翼竜について、お聞きしたいと思っておりました。」

真っ直ぐ切り込んだ言葉に、ざわめいていた会場が静まる。
そう、誰もが欲している情報だ。

招かれている客全てがラグナロワを持ち上げ、翼竜の話をしようとする。
どのくらいの数か。
その能力は。
命令に従うのか。
売ってもらえるのか。
などなど。

「我が国は、バーキュライトと同じくらいに古いので、神話についての文献は多いのですよ。 ……たとえば、黄金竜とか。」

口元に笑を貼り付けるミヤモトに、ラグナロワはにやりと笑う。

「ほう、面白いな。貴殿の国に行けば、ソレを読ませて貰えるか?」

「勿論で御座います。いつなりと。
もちろん飛んでいらっしゃいますでしょうな。おもてなしをする為にどのくらいの隊列かをお聞きしても?」

翼竜はどのくらいいる。
隊列を組めるくらいいるのか。

探り合いの中で、シリンはラグナロワの肩に手を置く。

「王よ。私を迎え入れて頂いても、式も挙げておりません。」

少し拗ねた口調を乗せて会話に割り込む。

「私はハネムーンとして、二人で行ってみたいです。」

「斎王、せめて護衛を付けないとソレは無理だぞ。」

「せっかくの旅行を邪魔されたくありません。
せめて翼竜二頭くらいで、あちこち回って見たいです。」

甘えるように体を擦り付ける。
ミヤモトの目が丸く見開かれる。

ラグナロワはにいっと笑った。

シリンの腰をぎゅっと抱くと甘やかせるように頷く。

「我らを入れて竜3頭。ソレならばこの国も無防備になるまい。よいぞ。ソレで旅行にまいろう。」

甘えたように見せて、翼竜の情報を切らせる。
バーキュライトの為の事だが、他国はゼオライトの王の為だと思うだろう。

シリンは甘い毒を滴らせた笑を浮かべる。
会場の者達は、今までに無いその笑に見惚れていた。


        第一部、終わり


 *************

拙いモノを読んで頂き、誠にありがとうございます。
このたび、いわゆる、当て逃げに会いました。
まるで中世の馬上槍試合のように、ブレーキもかけずにこっち目掛けて直進してくる車って怖いものですね。
思わずハンドル切って逃げました。
そう、私は負けました。
おかげでミラー一つで済んだけど、敗北感です。
でもね、田舎の住宅地で対面通行なのよ!
自分が図太い人間だと確信してたのに、なんかメンタル↓でダダ下がりです。
 ちょっとお休みします。
俺様粘着体質の王様がとりあえず黄金竜が育つまで、あちこち連れまわされる感じを次に書く感じです。
 しばらくごめんなさい。

ありがとうございました^ - ^
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