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女神の血脈
2 ネティ 脱出
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外は混乱していた。
神殿の方から煙と人の叫び声が上がっている。わぁわぁと波のような怒鳴り声と、焦げ臭い匂い。剛竜が大型の荷車を引いて、ガラガラと走り抜けて行く。
竜のない人は自分で荷車を引きながら、やはりアリの行列のように早足に通り過ぎていく。
この国以外の人々が、この街が封鎖される前に出ようとしている。
ネティはマジックバッグを肩にかけると、その流れの中に飛び込んだ。
結界で封鎖される前に街の出口に着く。
でも検問はすでに厳しい。
ネティは兵と組みになっている魔術士に髪色を解かれたが、その下は金色だったので止められることはなかった。
いや、止められなかったのはこの顔のおかげかもしれない。
髪を茶色に染め直し、フードを深く被る。
ネティの顔には青紫色の鮮やかなアザがある。
それはほとんど右半分を覆うように付いている。
よくよくみれば、魔法陣や、呪いを伺えるような規律制のある型だけれど、誰も子供の傷ましいアザをしげしげとみてはこない。
ネティは14歳になる。
頬にぱさぱさとかかる茶色い髪を口の端でふっと吹き上げた。
本当は銀色で綺麗なのに……。
ネティは銀髪銀目をしている。
そのために8歳の時拐われた。
優しそうな女の人と友達になって、街を回るサーカスを案内してもらった。
足高ピエロや、空中ブランコに夢中になっているうちに寝てしまって…。
暗い箱の中で目を覚ました。
「いいですか。」
綺麗な顔なのに、怒りでこめかみをピクピクさせたスノトラが言葉を飾らずに説教してきた。
銀髪銀目は斎王と同じで珍しいこと。
他国の貴族や金持ちが、金に糸目を付けずに欲しがっていること。
ペットならともかく、奴隷として売られたらどんな生活が待っているか。
むろん、二度とここには帰って来れない。
ご飯が貰えないとか、縛って殴られるとか、犬よりも扱いが悪いとか、あちこち切り刻まれて実験されるとか。
とにかくネティは泣いて謝った。
そして、本物の斎王様が現れて…。
「ネティ。私の大事なネティ。この国におまえがいることを、知られてしまった。」
そう言いながら、僕の長くてふさふさした髪をバッサリ切ってしまった。
そして、魔法で金色にしてしまった。
平凡な僕の唯一の自慢だった銀髪が無くなってしまった。
「ごめんよ、ネティ。でも、成人までは我慢しておくれ。」
自分と同じ、いやもっとキラキラする銀色の瞳で見つめられると、頭の奥で何かがじんじん疼いて引き摺り込まれそうだ。
うん、うん、頷く僕に、斎王様は額にキスをしてくれた。
そして、その桃色の唇をちょっと尖らせて何かを唱えると……。
ネティの意識が戻った時、鏡の向こうにアザのある顔があった。
指を這わせてもツルツルして、痛みも無い。
でも、はっきりついたアザは人目につき、会う人は目を逸らす。
『成人して、本当に好きな人に会ったら消えるからね。コレはおまえを守る約束のアザなんだ。』
スノトラが僕の頭を撫でながら言った。
………本当に好きな人って無理だよ。
斎王様もスノトラもすんごく綺麗だから、そんな事が言えるんだ。
僕みたいな平凡な奴に、いやこんな顔になって格落ちした奴に、好きな人なんて無理に決まってる。
8歳の僕はそう思ったけど、これはバツかなって、我慢した。
神殿の方から煙と人の叫び声が上がっている。わぁわぁと波のような怒鳴り声と、焦げ臭い匂い。剛竜が大型の荷車を引いて、ガラガラと走り抜けて行く。
竜のない人は自分で荷車を引きながら、やはりアリの行列のように早足に通り過ぎていく。
この国以外の人々が、この街が封鎖される前に出ようとしている。
ネティはマジックバッグを肩にかけると、その流れの中に飛び込んだ。
結界で封鎖される前に街の出口に着く。
でも検問はすでに厳しい。
ネティは兵と組みになっている魔術士に髪色を解かれたが、その下は金色だったので止められることはなかった。
いや、止められなかったのはこの顔のおかげかもしれない。
髪を茶色に染め直し、フードを深く被る。
ネティの顔には青紫色の鮮やかなアザがある。
それはほとんど右半分を覆うように付いている。
よくよくみれば、魔法陣や、呪いを伺えるような規律制のある型だけれど、誰も子供の傷ましいアザをしげしげとみてはこない。
ネティは14歳になる。
頬にぱさぱさとかかる茶色い髪を口の端でふっと吹き上げた。
本当は銀色で綺麗なのに……。
ネティは銀髪銀目をしている。
そのために8歳の時拐われた。
優しそうな女の人と友達になって、街を回るサーカスを案内してもらった。
足高ピエロや、空中ブランコに夢中になっているうちに寝てしまって…。
暗い箱の中で目を覚ました。
「いいですか。」
綺麗な顔なのに、怒りでこめかみをピクピクさせたスノトラが言葉を飾らずに説教してきた。
銀髪銀目は斎王と同じで珍しいこと。
他国の貴族や金持ちが、金に糸目を付けずに欲しがっていること。
ペットならともかく、奴隷として売られたらどんな生活が待っているか。
むろん、二度とここには帰って来れない。
ご飯が貰えないとか、縛って殴られるとか、犬よりも扱いが悪いとか、あちこち切り刻まれて実験されるとか。
とにかくネティは泣いて謝った。
そして、本物の斎王様が現れて…。
「ネティ。私の大事なネティ。この国におまえがいることを、知られてしまった。」
そう言いながら、僕の長くてふさふさした髪をバッサリ切ってしまった。
そして、魔法で金色にしてしまった。
平凡な僕の唯一の自慢だった銀髪が無くなってしまった。
「ごめんよ、ネティ。でも、成人までは我慢しておくれ。」
自分と同じ、いやもっとキラキラする銀色の瞳で見つめられると、頭の奥で何かがじんじん疼いて引き摺り込まれそうだ。
うん、うん、頷く僕に、斎王様は額にキスをしてくれた。
そして、その桃色の唇をちょっと尖らせて何かを唱えると……。
ネティの意識が戻った時、鏡の向こうにアザのある顔があった。
指を這わせてもツルツルして、痛みも無い。
でも、はっきりついたアザは人目につき、会う人は目を逸らす。
『成人して、本当に好きな人に会ったら消えるからね。コレはおまえを守る約束のアザなんだ。』
スノトラが僕の頭を撫でながら言った。
………本当に好きな人って無理だよ。
斎王様もスノトラもすんごく綺麗だから、そんな事が言えるんだ。
僕みたいな平凡な奴に、いやこんな顔になって格落ちした奴に、好きな人なんて無理に決まってる。
8歳の僕はそう思ったけど、これはバツかなって、我慢した。
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