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3 ボーダー夫人と傷ついた幼心
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「私、この後約束があって出掛けますの。
遠い所から来られたのですから、今日はお泊まりになって、明日お返事を頂けますかしら?」
ボーダー夫人の頭の中では、双子のタテジマとヨコジマのあまりにも素晴らしい才能に打たれて『是非お教えしたいわ!』となる計画が、エッフェル塔のように建築されていました。
つまり面接の返事を直ぐ貰わずに、ちょっと引き延ばして考えてもらおう作戦です。
帽子ねこマルルがお茶を頂きながら、あらお忙しいですのねと聞きます。
ボーダー夫人は孤児院に3人の孤児が来るのです。
と重々しく答えました。
まぁまぁまぁ、ご立派ですわぁ。というマルルに気をよくして、ボーダー夫人は誇るべき自分の行いを豊満な胸を張って述べました。
「孤児院に来るのは親と離された幼い子供ですから、"傷ついた幼心"が御座いますでしょう。
私どもはソレを解きほぐしたいのですわ」
帽子ねこのひげがぴいぃんと立ちました。
"傷ついた幼心"はリカバリーしないと大変です。
拗れて固まると夜に独り歩きしてしまいます。
その徘徊に沢山の子供が怖がって、負のパワーが増し増しで集まります。そうすると怪物のように膨れ上がって社会を脅かすモノになるのです。
建物に取り憑くとやってくる人を怖い夢に引き摺り込みます。そしてカケラでも心に入り込むと奥の奥に棘となって刺さって、大人になっても心の袋は穴が空いたままになってしまうのです。
「傷ついた幼心を解きほぐすというのは、なんて崇高で尊いお仕事なんでしょう」
帽子ねこマルルのトルコ石の様な瞳がルビーのように煌めいて、ボーダー夫人はストレートな賛辞に舞い上がりました。
マルルはとても聞き上手でした。
やんちゃな子供を社会からはみ出さないように育てるのが如何に大変か。
少ない予算の中でお世話するのがどれだけ大変か。
なのに街の人は小指一本の手助けもしないのに、ああだこうだと口出ししてくるのです。
孤児の世話より自分の子供の世話をしろと面と向かって言うお年寄りもいます。
助けないなら黙っていろ。
お金を出さないなら黙っていろ。
いつのまにか溢れる愚痴を帽子ねこは頷きながら聞いてくれます。
頷かれるたびにボーダー夫人の豊かさなお腹はふうわりと軽くなっていきます。
「頑張っておられますのね」
柔らかなその言葉を聞いて、お腹もお胸もふぉんと暖かくなりました。
酷く焦ってた気持ちがぬふぬふと消えていく様な気がしました。
目の前にあるさび猫の顔が女神のように輝いて見えました。
ボーダー夫人が今晩のナイトキャップの約束を指切りまでして出掛けると、執事がマルルをお客様用の部屋へと案内しました。
長期滞在を見込んでの庭の別邸です。
ボーダー邸はかなり広い敷地でした。
屋敷にもお客様のお部屋は幾つもありますが、庭に点在して別邸があります。
ロケーションもプライベート管理も別格なソコは、超超超高貴なお客様の為のお部屋でした。
この部屋に入って貰うという事は、長期滞在を匂わせたものです。
それをわかっていても、しれっとマルルはついていきました。
お持ちしますと言われても、自分の荷物は自分で持ちます。
だってレディのバッグには大事なものが詰まってますから。
屋敷の中からも庭のあちこちからも、視線を感じます。
御者の帽子ねこ情報に、使用人達が息をころして見ているのでしょう。
そして前方に二つ、怒りと不安で青黒く揺らいだ心が隠れているのを、マルルは感じておりました。
小川に掛かる丸木橋に来た時。
執事の顔に泥が弾けました。
びじゃっ
ぐぢょっ
泥が素敵なスーツに着弾します。
「「きゃっほおぉぉぉっ‼︎‼︎ 」」
戦いの雄叫びを上げて二つの影が飛び出すと、汁気たっぷりの泥がマルルに向けて投げつけられました。
遠い所から来られたのですから、今日はお泊まりになって、明日お返事を頂けますかしら?」
ボーダー夫人の頭の中では、双子のタテジマとヨコジマのあまりにも素晴らしい才能に打たれて『是非お教えしたいわ!』となる計画が、エッフェル塔のように建築されていました。
つまり面接の返事を直ぐ貰わずに、ちょっと引き延ばして考えてもらおう作戦です。
帽子ねこマルルがお茶を頂きながら、あらお忙しいですのねと聞きます。
ボーダー夫人は孤児院に3人の孤児が来るのです。
と重々しく答えました。
まぁまぁまぁ、ご立派ですわぁ。というマルルに気をよくして、ボーダー夫人は誇るべき自分の行いを豊満な胸を張って述べました。
「孤児院に来るのは親と離された幼い子供ですから、"傷ついた幼心"が御座いますでしょう。
私どもはソレを解きほぐしたいのですわ」
帽子ねこのひげがぴいぃんと立ちました。
"傷ついた幼心"はリカバリーしないと大変です。
拗れて固まると夜に独り歩きしてしまいます。
その徘徊に沢山の子供が怖がって、負のパワーが増し増しで集まります。そうすると怪物のように膨れ上がって社会を脅かすモノになるのです。
建物に取り憑くとやってくる人を怖い夢に引き摺り込みます。そしてカケラでも心に入り込むと奥の奥に棘となって刺さって、大人になっても心の袋は穴が空いたままになってしまうのです。
「傷ついた幼心を解きほぐすというのは、なんて崇高で尊いお仕事なんでしょう」
帽子ねこマルルのトルコ石の様な瞳がルビーのように煌めいて、ボーダー夫人はストレートな賛辞に舞い上がりました。
マルルはとても聞き上手でした。
やんちゃな子供を社会からはみ出さないように育てるのが如何に大変か。
少ない予算の中でお世話するのがどれだけ大変か。
なのに街の人は小指一本の手助けもしないのに、ああだこうだと口出ししてくるのです。
孤児の世話より自分の子供の世話をしろと面と向かって言うお年寄りもいます。
助けないなら黙っていろ。
お金を出さないなら黙っていろ。
いつのまにか溢れる愚痴を帽子ねこは頷きながら聞いてくれます。
頷かれるたびにボーダー夫人の豊かさなお腹はふうわりと軽くなっていきます。
「頑張っておられますのね」
柔らかなその言葉を聞いて、お腹もお胸もふぉんと暖かくなりました。
酷く焦ってた気持ちがぬふぬふと消えていく様な気がしました。
目の前にあるさび猫の顔が女神のように輝いて見えました。
ボーダー夫人が今晩のナイトキャップの約束を指切りまでして出掛けると、執事がマルルをお客様用の部屋へと案内しました。
長期滞在を見込んでの庭の別邸です。
ボーダー邸はかなり広い敷地でした。
屋敷にもお客様のお部屋は幾つもありますが、庭に点在して別邸があります。
ロケーションもプライベート管理も別格なソコは、超超超高貴なお客様の為のお部屋でした。
この部屋に入って貰うという事は、長期滞在を匂わせたものです。
それをわかっていても、しれっとマルルはついていきました。
お持ちしますと言われても、自分の荷物は自分で持ちます。
だってレディのバッグには大事なものが詰まってますから。
屋敷の中からも庭のあちこちからも、視線を感じます。
御者の帽子ねこ情報に、使用人達が息をころして見ているのでしょう。
そして前方に二つ、怒りと不安で青黒く揺らいだ心が隠れているのを、マルルは感じておりました。
小川に掛かる丸木橋に来た時。
執事の顔に泥が弾けました。
びじゃっ
ぐぢょっ
泥が素敵なスーツに着弾します。
「「きゃっほおぉぉぉっ‼︎‼︎ 」」
戦いの雄叫びを上げて二つの影が飛び出すと、汁気たっぷりの泥がマルルに向けて投げつけられました。
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