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4 ヨコジマとタテジマ
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べちゃっと泥がヒットします。
ギャハハハハと奇声をあげながら、二匹の小鬼がぴょんぴょん飛び跳ねました。
うわあぁぁぁ と隠れていた使用人達は悲鳴を呑み込みました。
あの双子は目についた者をターゲットにするからです。
「ガヴァネスなんかいらないよぉっ‼︎」
「帰れっ‼︎」
双子が次々に泥を投げます。
大きく口を開けて笑うヨコジマの顔に泥がぶしゃっと命中しました。口の中が泥いっぱいでゲホッと海老反ります。
ひゅん
どしゅっ
ひゅん
びぢゃっ
なんということでしょう。
猫が傘を騎士の盾のように押し出して、クルクル回しています。当たった泥は跳ね返されてヨコジマとタテジマにぶちあたっていました。
悪ガキ二人は泥の塊になって、ぽかーんと動きを止めました。
おぉぉぉぉう!
ハラハラドキドキ成り行きを見守っていた使用人達は思わず拍手をします。スタンディングオベーションです。
帽子ねこは傘を振って泥を飛ばすと、傘を閉じました。そして片足を引いて拍手に向かってスターの様にお辞儀をしました。
猫の小粋な帽子にも艶やかな毛皮にも、ぽっちりの泥もはねていません。
「ねこだぁ!」
泥人間になったタテジマが叫びました。
ビチビチと固まりかかった泥を飛ばして立ち上がって指差しました。あらあら人を指差してはいけませんよねぇ。
タテジマは動物が大好きです。
特に猫が好きですが、猫に好かれた事はありませんでした。
くねくねふわふわな尻尾が好き過ぎて、いつもぎゅっと握ってしまうからです。
『嫌味なガヴァネスを追い払おう』
とヨコジマに誘われて泥遊びをしたら、こんな大きな素敵な猫に会えるなんて!
タテジマの目がキラキラして笑顔が弾けました。
駆け寄るタテジマに帽子ねこは「ストップ!」と言いました。
大きな声では無いのに、ピシッと頭に刺さります。
思わず動きを止めたタテジマに、にっこり笑って「ステイ」と言いました。
「いきなり初対面のレディに迫るのははしたないですわ。泥だらけで鼻も口もわからないんですもの。綺麗になってから御挨拶を受けますわね。」
柔らかい言葉にタテジマはもじもじと三角の耳や揺れる尻尾を見ました。
「すぐ洗ってきます。
そしたらお話してくれる?」
「ええ、耳の後ろも洗ってきたら握手もして差し上げますわ」
握手。
タテジマはパッチリと帽子ねこのふうわりと丸い手を見つめました。
茶色と黒の毛が混ざり合って、ふわふわして、ピンクの肉球が覗いています。
帽子ねこは淑女ですから、肉球のお手入れはしています。
爪はきっちりと中にしまい、肉球周りのふわふわな毛もだらしなくはみ毛にならないようにきちんとカットしています。
そんな自慢の手は、明らかにタテジマを魅了しました。
ごっくん。
タテジマにとって肉球は憧れの未知なる世界なのです。
その未知な世界に触れることが出来るのです。
タテジマは傍にいたヨコジマを掴むと、慌ててお風呂場へと走り出しました。
ギャハハハハと奇声をあげながら、二匹の小鬼がぴょんぴょん飛び跳ねました。
うわあぁぁぁ と隠れていた使用人達は悲鳴を呑み込みました。
あの双子は目についた者をターゲットにするからです。
「ガヴァネスなんかいらないよぉっ‼︎」
「帰れっ‼︎」
双子が次々に泥を投げます。
大きく口を開けて笑うヨコジマの顔に泥がぶしゃっと命中しました。口の中が泥いっぱいでゲホッと海老反ります。
ひゅん
どしゅっ
ひゅん
びぢゃっ
なんということでしょう。
猫が傘を騎士の盾のように押し出して、クルクル回しています。当たった泥は跳ね返されてヨコジマとタテジマにぶちあたっていました。
悪ガキ二人は泥の塊になって、ぽかーんと動きを止めました。
おぉぉぉぉう!
ハラハラドキドキ成り行きを見守っていた使用人達は思わず拍手をします。スタンディングオベーションです。
帽子ねこは傘を振って泥を飛ばすと、傘を閉じました。そして片足を引いて拍手に向かってスターの様にお辞儀をしました。
猫の小粋な帽子にも艶やかな毛皮にも、ぽっちりの泥もはねていません。
「ねこだぁ!」
泥人間になったタテジマが叫びました。
ビチビチと固まりかかった泥を飛ばして立ち上がって指差しました。あらあら人を指差してはいけませんよねぇ。
タテジマは動物が大好きです。
特に猫が好きですが、猫に好かれた事はありませんでした。
くねくねふわふわな尻尾が好き過ぎて、いつもぎゅっと握ってしまうからです。
『嫌味なガヴァネスを追い払おう』
とヨコジマに誘われて泥遊びをしたら、こんな大きな素敵な猫に会えるなんて!
タテジマの目がキラキラして笑顔が弾けました。
駆け寄るタテジマに帽子ねこは「ストップ!」と言いました。
大きな声では無いのに、ピシッと頭に刺さります。
思わず動きを止めたタテジマに、にっこり笑って「ステイ」と言いました。
「いきなり初対面のレディに迫るのははしたないですわ。泥だらけで鼻も口もわからないんですもの。綺麗になってから御挨拶を受けますわね。」
柔らかい言葉にタテジマはもじもじと三角の耳や揺れる尻尾を見ました。
「すぐ洗ってきます。
そしたらお話してくれる?」
「ええ、耳の後ろも洗ってきたら握手もして差し上げますわ」
握手。
タテジマはパッチリと帽子ねこのふうわりと丸い手を見つめました。
茶色と黒の毛が混ざり合って、ふわふわして、ピンクの肉球が覗いています。
帽子ねこは淑女ですから、肉球のお手入れはしています。
爪はきっちりと中にしまい、肉球周りのふわふわな毛もだらしなくはみ毛にならないようにきちんとカットしています。
そんな自慢の手は、明らかにタテジマを魅了しました。
ごっくん。
タテジマにとって肉球は憧れの未知なる世界なのです。
その未知な世界に触れることが出来るのです。
タテジマは傍にいたヨコジマを掴むと、慌ててお風呂場へと走り出しました。
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