帽子ねこマルルはコンパニオンですの

たまとら

文字の大きさ
5 / 6

5 当てが外れたヨコジマ

しおりを挟む
タテジマはあまりおつむがよろしくないの。
何度泣いても騙されちゃう。
もうぴゆあっぴゅあな激チョロボーイよ。
多分いっしょにお腹にいる時に、信じる心と疑う心をたして2で割るはずなのにきっちり分けっこしたんだと思うわ。

おばさんのガヴァネスは初めベタベタにタテジマを可愛がる。
そしてそのうち虐めるようになるの。
タテジマは自分が悪いってごめんなさいするけど、おばさんの目はギンギラよ。見てごらんなさい。
タテジマは綺麗な顔してる。
泣かせたい虐めたいって奴がいる事に、タテジマは一生気付かないと思うわ。
そんなおばさんはたいがいワタシを無視するかゴマをするかだ。共犯者に取り込むつもりだろうけど冗談じゃ無い。
タテジマはワタシの片割れだもの。

だからワタシは戦った。
次々と追い出してやった。

やっと静かになったと思ったら、ナニこの状況?
次のガヴァネスだと言って妖怪みたいなデッカい猫が来た。

はぁ?
人が猫に習うの?
ネズミの捕り方?
ばっかじゃなぁい‼︎
‥って思ったけどなんか違ってた。

追い出してやろうと泥団子を投げ付けたら迎撃された。
しかも「私が必要そうですわね」という、なんか上から目線で本採用になってしまった。ムカつく。

猫好きのタテジマは喜んだけど、ワタシは無茶苦茶面白くない。

だってあいつはさび猫だ。
縞も三毛でもない、泥はねしてるようなさび猫なのだ!


帽子ねこマルルは
「やだわ。って羽を毟られたナメクジが、井戸の石垣を伝ってるみたいな感じよぉ。背中の毛がもずもず逆だっちゃうわ。私はマルルよ。せぇんせぇいじゃなくてそう呼んでね」
とふにゃんと笑った。鞭も持って無い。
もうタテジマはうっとりだ。
でも相手はガヴァネスで猫なのよ。
文字通り猫を被ってるかも知れないわ。

『素敵な尻尾ね。掴んだら気持ちいいかしら』と囁いた。
尻尾。くねくねした尻尾。
もうタテジマは握手してもらった安心感で、マルルの尻尾に釘付けだ。

そうよ。ぎゅっと握ってギャッとなって、ボーダー家から出てけばいいんだ!


タテジマがその尻尾を掴もうとした途端、顔面に掌底が入った。
爪の出てない掌はふにゃんとした肉球だ。
ソレが顔面に当たって、タテジマの髪がびゅわって立った。
攻撃よりもご褒美になってるわ。
タテジマはその手を両手で掴んですりすりすりすりしてる、もうデレデレ。
マルルはしゅるりと手を抜き取ると、マニュキアを施した爪を一本出してちっちっちっと揺らしました。

「いけません。猫にとって尻尾はプライベートで大切なものなのよ。ソレをいきなりギュッはとぉっても破廉恥な事なのよ。あなただっていきなりおちんちんを掴まれたらどう思うかしら?」

ワタシは淑女ヅラした猫がおちんちんと言ったのに驚いた。
タテジマはそんな極悪非道な変態行為を自分がしていたのに驚いた。

「ごめんなさい。もうしません!」

素直なタテジマに、マルルは目を細くして笑った。

それ以来タテジマは外で見る普通の猫にも、紳士のように声掛けして、いつのまにか猫に取り囲まれるようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

ヒロインは修道院に行った

菜花
ファンタジー
乙女ゲームに転生した。でも他の転生者が既に攻略キャラを攻略済みのようだった……。カクヨム様でも投稿中。

処理中です...