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4 教会とベリル

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教会は不可侵である。

それは獣の国でもヒトの国でも。
ほかの森や水の国でもそう約束されている。
女神エウロパを祀り。
そして"駆け込み"というシェルターを内側に持っていた。

この世にはαとβとΩという性がある。
そのうちのΩは優秀なαを産む率が高く需要が高かった。
その為に望まない妊娠や性的虐待が横行して、遂には人身売買にまでなる事があった。

それに嘆いた女神がΩを助ける為に、教会の奥に秘密の庭を作ったと言われている。
なんとか逃げたΩが教会の敷地に一歩でも入れば、その身は教会預かりとなる。
そうなればたとえ国王でも中から引き摺り出す事は叶わない。

その為に"駆け込み"という名でも呼ばれる教会は、ベリルにとっても希望だった。

Ωを奥深くに居させるために、教会の関係者はβか訳ありのαやΩだ。
ナヴァロも番が死んだΩだ。
番に振り回される恋情も本能も、恐いくらいに知っている。




元々、ベリルはヒトの国の貴族の子息だった。
優秀なαとΩを排出する事で有名な貴族だった。
その美貌揃いもあって、国の中でも中々に際立っていた。

ベリルはそこの出来損ないだった。


縹色はなだいろの髪とアイスブルーの瞳。
まるで陶器人形ビスクドールの様な外見に、バース判定する前から、あちこちの貴族から釣書が送られてきた。
その為に幼い頃から、ベリルは音楽も歴史も護身術さえ学んだ。

案の定、判定はΩ。
このままいけば王宮からも望まれるはずだった。

でもベリルは発情期が来なかった。

αのフレアを当てられても、萎縮はするが発情しない。
そんなベリルはやがて欠陥品として一族に疎まれ始めた。

同じΩとして優しく寄り添ってくれたのはナヴァロだけだった。

ナヴァロによって教会という逃げ込める場所がある事を知った。

幼いころからの勉強で、薬草や薬作りに興味があったベリルは、ナヴァロが獣の国の教会へ派遣された時。
自分も家を出ようと決意した。
このまま旅をして、獣の国に立ち寄ってナヴァロと会う。
そして森の国まで旅をして、エルフに弟子入りして薬草を育てて薬を作りたい。

そう思って、2年前にこの国に来たのだった。
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