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7 トリアス

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膝から崩れ落ちたベリルを抱えて、トリアスは風のように館へ戻った。
誰からも見られないように自分のマントで包み込み、家令に離れを開けさせる。
自分のフェロモンがまるで爆風のように辺りに放たれるのを必死で抑えながら、しばらく事だけを告げて扉を閉めた。


自分の腕の中には、自分のΩがいる。
夢にまで見たその事に、足が震えた。



ふらりと寄った市場で、トリアスは嗅いだ事のない爽やかな新茶の様な香りを感じた。
途端、びりびりと細胞が目覚めた。
耳の先から尻尾の先まで。
ずんずんと痺れが走る。
そう、雷に打たれたように。

どこからだ。
本能の赴くままに歩き回る。
飢餓感が、大きな顎で俺を丸呑みにしたようだ。

どこだ!
どこだ!!
焦って匂いを探す。

血相を変えたトリアスに市場の買い物客は、ひっと声を上げて慌てて遠巻きになった。

そうしてトリアスは見つけた。
小柄な後姿が薬草を買っている。

新茶のような匂いが強まる。

逃がさないようにそろりそろりと近づく。
ヒジャブで隠している。
なんだろう、小型種だ。
リスか兎か?

後に立つと、ぴくりと震えて彼が振り返った。
アイスブルーの瞳がうるうると揺れている…

ああ…
体中の細胞が歓喜で騒めいた。

俺のだ。
俺の番だ。


この男を組み敷いて鳴かせてやりたい。
出来る事なら全身の血も涙も、一滴残らず貪りたい。
そんな猫科の嗜虐心にも似た渇望と、自分の腕の中に囲い込んでどろどろに甘やかしたいという気持ちが、どくんどくんと渦巻いた。
獲物を見つけたら決して逃す事のない獅子族の本能が、その男目掛けて突っ走っていく。


これは俺のだ。
俺のものだ。



がくりと揺れた体を抱える。
発情の熱が彼を責めたてている。
潤んだ目のふちは赤く染まって、半開きの口からはっはっと熱い息が漏れる。

慌ててマントに包み込む。
そうして全身のありったけの力で館に戻った。
早く。
早くしなければ。
たとえ路地でも盛ってしまう。
愛しい番を公衆の面前で犯してしまう。
他人の目に触れさせる事にゾッとしたおかげで、理性を持って部屋まで駆け込む事が出来た。

彼ははぁはぁと全身を揺すって息をしている。
熱にもがくようにトリアスの襟元をぎゅっと握りしめた。

彼も感じている!
この発情に悶えている‼︎

歓喜で声を掠れさせながらゆっくりとヒジャブを脱がす。

「俺はトリアスだ。君は?」

ばさりと縹色の髪がシーツの上に広がった。
美しい。
まるで以前見た氷の結晶のようだ。
耳が見えない。
小さいのか?
ナキウサギか、ハムスターか?

「ぼ、僕は…ベリル…」

掠れた低い声も心地良い。

ゆっくりとその服を脱がせていく。
はだけると新茶の香りが色濃くなって、トリアスの理性を薙ぎ倒す。

汗ばんで赤くなった胸に濃く色付く飾り。
なだらかな下腹から滑り降りたところにある、ベリルのモノもすでに勃ちあがっていた。

そっと下穿きを剥ぎ取ると体が反転する。
そこには傷ひとつない背中に、すっと背骨の谷が、尻の双丘に別れるまで伸びていた。

そう、尻の双丘に……

トリアスは目を見開いた。
尻尾が無い!
これは、
俺の番はヒトなのか
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