結婚したい男と、結婚させたい奴等と、結婚したくない僕。の話

たまとら

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結婚したい男

28 飛竜に乗って  ディサロ

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飛竜の上は快適だった。
竜の魔法で結界が張られて、寒くも暑くも無い。
子供だからとシートベルトをきっちり着けられているけれど、キョロキョロ周りを見渡すと、遥か足元に街が見えた。

飛竜の影が追いかけっこするように、大地の上を滑っている。
畑が、森が、絨毯の模様の様に流れていく。

ご機嫌なディサロに、竜騎士団員達はとても優しく接してくれた。



この国は長子相続が基本的なので、ディサロは第二王子として結構緩く育っていた。
でも王都から出るのは初めてなので、とてもわくわくしている。


今回、フェルベーツという領で飛竜の"孵化の儀"があるそうだ。
王宮竜騎士団でも候補生が五人も出るので、竜騎士がその送迎をする。
飛竜が大好きなディサロは、随分前から連れてってもらえる様にねだっていた。

沢山の付与のついた魔道具を身につけて。
王子という地位を隠して。
いろんな条件をなんとかこなして、見習いとして同行を許された時は飛び上がって喜んだ。


乗せてくれる青銅竜はとても大きかった。
20デオツ以上はある。
初めて牛を見たときは、大きくて恐いと思ったけれど。
このくらい大きいと、もう、呆気に取られて凄いとしか思えなかった。

こんな大きな体が、どうやって飛ぶんだろう。
でもそんな大きな竜の複眼は、琥珀のようにキラキラしていて、ほとんどディサロぐらいの大きさがある。
その目の中は慈しみが溢れていて、ディサロはうっとりと目の縁を掻いてやった。




フェルベーツは遠かった。
竜騎士団の野営を体験し、ディサロは楽しく外遊した。



孵化の儀は、岩で出来た洞窟の中だった。
真ん中に大きな斑らの卵が、砂の中で森の様に乱立している。
その間を白い候補生の衣装を着た者達が立っていた。

あの中に、一緒に来た人達もいるんだ。
ディサロは目を凝らしてそれを見つめた。


熱い砂の熱気が、ぐわんぐわんと立ち上がってくる。
上の観覧席にいるだけでも、頬が暑さで真っ赤になる。
その上、人の期待と天井の岩場にずらりと並ぶ竜の存在で、洞窟の中は煮え立つような何かが充満していた。

「あそこにいらっしゃるのが、フェルベーツ家の方々ですよ。」

連れてきてくれた竜騎士が囁いた。
彼等は挨拶に行ったようだが、ディサロは内緒の外遊なので秘されている。



対岸の観覧席にいる人達。

辺境伯は大きかった。
首も太くてがっちりしている。
すっごく魔獣を狩ってる有名な人達だから、成る程大きいんだ。
今まで一番強そうだと思ってた騎士団長より大きいや。
近くのお兄さんは、似てるから御子息なんだろうなぁ。



その二つの大きな壁に挟まれて、人形がある。

あれっと思ったディサロは、習い始めた身体強化を目に込めた。


それは綺麗な人形だった。
紅色詰め草ストロベリーキャンドルの髪が、艶々と肩に流れている。
同じ色のまつ毛に縁取られた瑠璃色の目は大きく。
小さな桃色の唇と、つるりとした頬。
頬は白磁のように色が無かった。

ディサロの母上はチャナドーン国から嫁いできた。
陶器で有名な国だけあって、嫁入り道具として頭部を陶器で出来た人形を連れてきてた。
そのふっくらしてるのにつるりとした陶器の頬はとても滑らかで。
その人形は可愛いくて綺麗で、まるで生きている様だ。

……その人形より綺麗だ。

薄く萌葱色のレースに溢れたドレス。
動きにくそうなその華やかな服は、とても似合っているが。
母上達が着せ替え遊びをする為のようなそのびっしりとレースの豪華なドレスは。
なんというか、堅苦しくて、まるでこの世に繋ぎ止める為の碇の様に見える。

なんで人形を置いているんだろう…

ディサロは目が離せなかった。

ぼうと何か一点を見つめる人形の目。
それが、ふと、瞼を閉じて…


生きてる‼︎


ディサロは驚きで顎を引いた。
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