押してダメなら引いてみるけど、恋ってやつは後戻りはできない。

たまとら

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学園の欺瞞工作

2 ルゥティル 涙ちょちょぎれる

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「ねぇ。」

ちゅっ

「だから。」

ちゅっ

「僕が帰るための希望をくれないか」

ちゅっ

「君が待っていると思ったら」

ちゅっ

「八面六臂で戦って見せる。
そして帰ったら、家に婚約を願おう」

ちゅっ

「君が欲しい。夜に会ってくれないか」

ちゅっ


ダメよダメよも恋のうち。
イヴァニス嬢はうっとり見惚れている。


ルゥティルはポケットから紙を出して"行く"と単語を載せた。
二つ折りして紙に魔力を流すとステルスを付与して飛ばした。


ご覧の通りこの学園は恋が咲き乱れている
それは寮自体は勿論制服にも完全防護が付与されているからだ。
いちゃついても制服を脱がす事は出来ない。スカートの中に手も突っ込めないというハードモード仕様の為に、最終エッチには至らないという気やすさで恋の花があちこちで咲くのだ。
そこで認められた者が1UPして家族へ挨拶して無事婚約していく。

気楽な恋愛遊戯と楽しむ者の中で思春期ホンモン全開の男にとって、それはえぐいくらいに生殺しだった。
そんな男はあれやこれやとチャンスを狙う。とりあえずやっちゃえばこっちのものだと思ってるからだ。
放課後に、夜に、寮を抜け出すと言うことはつまりそういう事なのだ。



今、ルゥティルがお気に入りとして観察してるのは5人。
そのうちイヴァニス嬢はダントツだった。
その美貌も尖り具合もエッジがききまくっていたのだ。
他人にへつらわず他人を貶めず、群れを作らない。そんな彼女は野生の獣か栗のイガのようにツンツンしていた。
あちこちからのアプローチアタックの中で我かんぜずにしれっといる彼女をルゥティルはリスペクトしていた。
彼女が恋に堕ちる所が見たい‼︎
と張り付きを強化した程だ。

ロマンチック告白タイムが成功した時、いつものように男の家柄や生活習慣や性癖、パンツの柄に至るまで探るべきだった。
ちょうどその時に他の推しっコが三角完成ドロドロハピエンに突入してハラハラワクワクに目が眩んでしまったのだ。

「君の元に帰るよすがが欲しい」

どんな薄っぺらい小説のセリフだと思う言葉にイヴァニス嬢はうっとりしている。
"野営訓練"という騎士科以外では馴染みのない単語と雰囲気に飲み込まれてしまったようだ。
なし崩しに約束が決まっていく。

……分かってる?
制服脱いで夜に寮を抜け出す約束だぞ。
後戻り出来ない約束だぞ。


二人がその場を去ってからしばらくして、ルゥティルはゆっくりと動き出した。
膝がガクガクする。
涙で視界が滲み始めた。

なんてこったぁ、あのイヴァニス嬢が。
人の追唱に笑わない孤高のイヴァニス嬢が
アウトな毒牙にかかってしまう!
しかも西辺境と言いやった‼︎

ルゥティルは走り出した。

なんとかしなければ‼︎

えぐえぐと溢れる涙が水球となって後ろにこぼれていく。
庭を突っ切って並木道を横切って、牧場の柵を飛び越えてルゥティルは走る。


うわあぁぁぁぁん

「テオドアっ!テオドアぁぁっ
助けてえぇっ」

べそべそ泣きながらルゥティルは走った。

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