押してダメなら引いてみるけど、恋ってやつは後戻りはできない。

たまとら

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ルゥティルと愉快な仲間たち

7 ぱぱの葛藤

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『大変なの‼︎帰ってきて』

ホルストは荒ぶった。

フェラノベリア家からの魔報。
家紋入りの便箋だけで、封蝋どころか封筒さえない魔報。
それは愛するベリアルと家礼が如何に慌てたかが現れている。

ホルストは書類を投げ捨てて立ち上がると、文官どもが縋ってきた。

「文句あるなら退職届を出すぞっ‼︎」

叫びを浴びせて振り切ると、執務室から飛び出した。


ルゥティルは末の子だ。
妻に似て無茶苦茶可愛い。
その可愛いルゥティルが、一歳を過ぎた頃から具合が悪くなった。
小さな体が熱ではぁはぁ苦しむのは心が絞られる。
あらゆる神に祈ったが、徐々に起きれる時間は減っていった。

ぱぱ。
と、苦しくても笑顔を見せる健気さに屋敷中が泣いた。
長子のアリスティルも毎晩神様に祈っているというのに、一向に良くならない。


何があった⁉︎
大変ってなんだ‼︎

ルゥティルはもう3日も熱で起き上がれない。乾いた唇に蜂蜜を塗り、果実水を飲ませていたが…

ひくっと喉が鳴った。
いつのまにか泣いていた。

なんだ⁉︎
何が起こった⁉︎
ああ、神様。
あの子を召さないでください。
私の元から連れてかないでください。
ああ涙で前が見えない。


屋敷について手綱を渡して飛び降りた。

走る。
貴族とか立場とか頭に無かった。

ルゥティル。
どこだルゥティル‼︎
間に合え!
頼む‼︎間に合ってくれ!


バンと扉を開けた途端に、ホルストは膝から崩れた。


そこには天使が頬をぱんぱんにご飯を食べていた。
可愛い。
可愛い過ぎて目が潰れてそうだ‼︎

不思議そうに『ぱぱ?』と言う天使に、ホルストの涙は決壊した。

崩れ落ちたホルストにベリアルとアリスティルが駆け寄る。
良かったね!と抱き合う家族に涙が止まらない。

やがて落ち着くと、そこに気になる物体があった。


可愛いルゥティルの隣に見知らぬ小僧がいるのだ。
何故かピッタリくっ付いて。
あろう事かルゥティルのスプーンを持ってない方の手が、小僧の服を握りしめている。

居心地悪そうにもじもじするその小僧を、ホルストは全身全霊で睨みつけた。

アレか、妻が言ってた風舞花を操れる子供か。
それが何故ルゥティルの隣にいるのだ!
可愛さにやられたのか⁉︎
狙ってるのか⁉︎
ぎりぎりと圧を込めたのに、小僧の様子は変わらなかった。



ルゥティルは魔素欠乏症だった。
魔力を使う器官は誰にでもあるが、生まれた時は小さくて成長とともに育っていく。
その成長を歪ませたり器官を壊したりしないように。五歳未満の子供は魔力を当てないように育てていく。
人は大気にある魔素を吸収して、自分の魔力に変えていくのだ。

稀に魔力器官が生まれつき大きい子がいる。そんな子は魔素を大量に必要とする。

王都は結界が張られて魔素が薄い。
ルゥティルは母乳の頃は足りていた魔素が、徐々に吸収より消費が上回って慢性的栄養失調になっていたそうだ。
それが風舞花の魔力を吸収して、ほらこんなに艶々と元気だ。

なんて健気なんだろう‼︎
足りない魔力を補おうと魔物の魔力を吸収するなんてぇ!
ホルストの涙と鼻水は止まらない。
それでもテオドアの服を掴むルゥティルの手を睨みつけた。

なんだぁ!初めて見たのを親だと思うヤツかぁ⁉︎
感謝はするけどそれとは別だぞぉ!
ぱぱは許さないぞぉ‼︎

血圧上がりっぱなしのホルストを煽るかのように妻は告げた。

「ルゥティルを魔素の濃い西辺境で静養させようと思うの」

ホルストの涙は再び決壊した。
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