攻略対象者【Ｄ】は、重めの愛にへこたれない

攻略対象者【Ｄ】の戸惑い

2 Ｄ-沼にハマる

『カレイドスコープ　ラビリンス』
　　　～煌めく愛に溺れろ～

略してカレラバ。
2年ほど前に流行った乙女ゲームだ。

それは流行りを目一杯意識したＢＬゲームだった。
そもそもそこは男だけの世界だ。
産む母様も男だし。
父様も男だ。

主役のちょっと保護欲立てまくりの男の娘が、王侯貴族の通う学園で、ハイスペックイケメン達と愛を育んでいくと言う安定した内容だった。

魔法あり、魔法生物ありというファンタジックな要素のなかで、ただただ恋愛をメインにしていた。

ルートによって多少変わるけれど、ブレずにとにかく、うっふんあっはんがメインだった。

＂雑＂＂つまんねー＂＂クソげー＂と一部揶揄されながらも流行ったのは、その絵と声のおかげだった。

原画担当者が凄かった。
さらに声優陣は、あきらかに自分の趣味やん！
いや、嫌いじゃないけど。
いや、よくやったよ！

と、拳を握るほどに豪華だった。

ヒロインがあんあんと鳴き、
『気持ちいいか？』だの
『お前のここも喜んでるぞ』だのという腰にくる美声に、腐ってなくてもゾクゾクだった。

おかげでサントラからファンデスク。
はてはネットの二次小説までが嵐のように湧き立った。

雑なゲームなのに、確かに流行った。

さらに正直元が微妙なら、同人の貴腐人達は燃える。
スチルの美しさだけで、もうストーリーは錬金術さながらに組みたって行った。



三笘悠人は腐男子だった。
はっきり断言できる。
ゲイでは無い。
ただのＢＬ好きの男子高校生だった。

例によって幼馴染に逆らえず、原稿の手伝いから同人誌の販売の手伝いをしてるうちにハマった。
顔出ししない様にとコスプレしてたこどあって、もう、どハマり。
その時の推しはロボ系で、異世界系はさらりと流す程度だった。

○ックサイトでその一冊をとったのが始まりだった。
隣のブースで、どうもどうもと買ったけど。
家で開いたらもう、沼だった。


それは悪役令息の少年が、切なそうに、羨ましそうに、ヒロインと攻略対象者達のきゃっきゃ♡を見ているという絵で。
その表情に、ずっがぁぁぁん！
と、保護欲を撃ち抜かれた。


そう言えばカレラバ持ってたわ。
と、本棚から取り出した。
前は物足りなくてサラッと流して終わってたけど。

買った当初、執拗にヒロインを虐める悪役令息に＂敵＂を見て。
ざまぁされるのに、爽快感を味わっていたんだけど。

2年経って再びやってみたら、
「なんでこの子ばっかりが！」とか
「なんでそこまでするんだよっ！」
と、涙目なった。

救いは無いのかとやり込んだおかげで、二歳のＤが母親の死体に抱きついて気を失うというシーンを思い出して、自分の現状を知る事が出来たってわけだ。