攻略対象者【Ｄ】は、重めの愛にへこたれない

攻略対象者【Ｄ】の戸惑い

9 Ｄ-育てる

子育てって大変だあ。

中身は高校生でも身体は幼児。
おかげでがっつり昼寝するようになった。

デュークは夜中にユアンが泣くと駆けつける。
そっと背中を摩って子守唄を歌う。
オムツは不浄石というもので、さくっと吸収してさらっとしているから、寂しくて泣いたんだと思う。

貴族は夜は一人で寝かせる。
ナニーもつかない。
それが常識らしいけど。

この子は母様を知らないんだ。
寂しいんだよ。
と、まず情に訴えた。
そして一緒に寝たいと訴えたら、言葉を濁された。

そりゃ、こんな小さいの。
寝返りで潰したら怖いよね。

そこで広いベッドの上で簡単な柵を作ってその横で寝ることを提案した。

父親に見向きもされない可哀想な兄弟が身を寄せ合う…。
を、アプローチした。

そして、なんとか隣で寝てる。
夜中にぐずっても抱きしめてトントンしてあげれる。

世話をするナニーさんと仲良くなって、世話の仕方も教えてもらった。
湯冷しがいいと言われて厨房へも行った。
厨房の人達は、はじめ戦々恐々としていたが、徐々に慣れてくれた。


はっはっは。
駄目おやぢよ。
屋敷を掌握するのは俺だ。

もちろん家令のジョコモとも仲良くする。

ジョコモは随分しっかりした（当たり前だ。中身は高校生だ。）幼児に、いろいろ話してくれる。

一般的に五歳になったら、家庭教師を付けて剣や魔法や勉強を学び始める。
そうして王立学園への入学に備えていく。

だからそれまで子育てして、魔法の容量を大きくして。
基礎体力もつけておかなくてはいけない。
俺の目標はユアンが尊敬の目で
『兄様、凄い♡』と、言ってくれる事だ。



ユアンがだう♡と、笑う。
可愛い。

この可愛いさはこの国一番じゃないか？
従者達もうんうんと頷くので、可愛い自慢は続く。
（可愛いデュークが可愛いユアンにデレる姿にきゅんとされている事に気が付かない。はっきり言おう。二人はそっくりだ）

報告に来たがおやぢに逃げられたジョコモに、前から疑問に思ってる事を聞いた。


おやぢは女々めめしい。
あ、男しかいない世界では男々めめしいか？

どう見ても母様に依存している感じだ。

同性って、どっちが攻めでどっちが受けになるんだろう。
ほら、デュークは長男だし。
根本女の子が好きだったから、攻め一択だ。

料理人のゴリマッチョは、庭師のヒョロ男君と結婚して、子供を産んでる。
どう見てもヒョロ男君が受けで産むと思ってた。

攻めと受けって、どう決まるの？



そんなおませなお子様の疑問に、恥じらいもせずにジョコモは教えてくれた。

「成り行き。」

おやぁ？

仲良くする時に、なんとなく決まるんだって。
強いとか、筋肉とかは関係無く。
なんかそうなっちゃうんだって。
交互に子供を産む時もあるから、二人でただただそうなるんだって。

うん。
わかったようでわからない。

まぁいい。

とにかくデュークとしては、ユアンを可愛い弟に育てて、大事にしてくれる人と結ばれて欲しい。

うっかりフラグに引っかからないように、攻略対象のＡ・Ｂ・Ｃに近寄らない。



ユアンが指をしゃぶってる。
べとべとの涎が口の周りに垂れている。
はじめはお口に上手くインしなかった。
成長にうっとりする。

ぎゅっと拭いたら痛いから、そおっと拭う。
きゃう♡
と笑って、ねとって濡れた指が顔の前に来たから、パクリと咥えた。
そのまま唇を尖らせてぷっぷと吹いてやる。

それがくすぐったいのか、ユアンはきゃわわっと声を上げた。

……可愛い。
尊い。