13 / 17
攻略対象者【D】の戸惑い
11 D-は溺愛する
しおりを挟む
「にぃに」
も一回言ってー
「にぃに」
…天使かっ!
ここに天使が降臨したぞっ‼︎
感動のあまり仰け反って転げ回るデュークを見て、ユアンがきゃっきゃと笑う。
昇天せんばかりのデュークに、従者達の目は生温い。
「にぃに♡」
死ぬ。
キュン死にするっ‼︎
母様ありがとう。
僕にユアンを残してくれて。
ゲームのデュークよ、おまえは馬鹿だ。
今、デュークは日々キュンに生きていた。
寝返りをうつユアン。
はいはいをするユアン。
つかまり立ちをするユアン。
転んで頭を打たないように、リュック型の頭カバーを従者と縫った。
ユアンの為に羽をつけて天使にした。
おかげでほとんど無かった裁縫の腕が、かなり上達したのは言うまでもない。
よちよちしたお尻が振られて、鼻血ものに可愛い。
はじめデュークの熱狂を苦笑で見ていたジョコモも、ウィレムと共に今ではユアンに夢中だ。
こんなに愛されたユアンが、僻んだ悪役令息にならない!
はず。だ。
デュークは余計なフラグは少しでも折ろうと窓をみる。
学園に入学するまでに、折って折って折るのだ!
真夜中、湖の上にはぽっと灯がともる。
前世でもエンバーミングというものがあったが、母様の遺体は"ナントカ魔法"で綺麗なままらしい。
つまりあの納棺堂のなには、何代も前の爺さん婆さんの遺体もあるわけで。
その中に通うおやぢは、ある意味賞賛出来る。
その狂気とも言える一点集中な愛は、デュークの体にも脈々と流れてるようで、ちょっと気味悪い。
あれからおやぢはいっさい目を合わせない。
すれ違っても抜け殻のようにぼうっとしている。
冬の幽霊というやつで、正直面倒くさい。
しっかりせいやっ‼︎
と、揺さぶりたかったが、子育てのエネルギーが減るから我慢して耐えた。
そして、もう限界だ。
夜明け前。
紺から紫に色を変えた空は、向こうに紅蓮のオレンジ色を隠している。
ゆらゆらとした灯が、島から水面に滑り降りて、船着場へと向かってきた。
男の影が、ゆるゆると舟から降りる。
そのままゆるゆると、館へと向かった。
デュークは眠い目を擦りながらベッドから這い出ると、両頬を叩いて気合いを入れた。
公爵はふらふらと館に戻ってくる。
二階のプライベートフロアへと階段を登って来た時。
デュークは立ち塞がった。
こんな顔してたのか…。
と、腹の中で思った。
げっそりと窶れたその男は、まじゾンビだった。
無精髭と隈と生気のない目。
まだ夜明け前の廊下の灯は薄暗く点っている。
そこに立ち塞がった子供は、愛するシーレそっくりで、公爵は棒立ちになった。
常夜灯を反射してキラキラした髪が取り巻く顔は、眩しい程に整っている。
そしてエメラルドのような瞳が、真っ直ぐこっちを見ていた。
まるで断罪の天使が降臨したようだ。
「お久しぶりです。父様。」
自分が父親の顔を忘れてたように、こいつも俺がわからないだろう。
と、挨拶してみた。
すっごく驚いた顔をされたので、やっぱりなって思った。
「あなたが放ってたうちにユアンは大きくなりました。」
そう言うと、おやぢは訝しげに首を傾げた。
おいおい、ユアンって名前がわからないのか?
まじ最低。
「母様そっくりの顔で、にぃに♡と呼んでくれます。」
母様そっくりに反応して、おやぢはびくりとこっちをみた。
初めてはっきり目が合う。
「このまま育てば母様そっくりになります。
あなたのことは会ってもいないから、"知らないおじさん"って言うんでしょうね。」
母様の声色で"知らないおじさん"と言う。
おやぢの目が、瞬いた。
も一回言ってー
「にぃに」
…天使かっ!
ここに天使が降臨したぞっ‼︎
感動のあまり仰け反って転げ回るデュークを見て、ユアンがきゃっきゃと笑う。
昇天せんばかりのデュークに、従者達の目は生温い。
「にぃに♡」
死ぬ。
キュン死にするっ‼︎
母様ありがとう。
僕にユアンを残してくれて。
ゲームのデュークよ、おまえは馬鹿だ。
今、デュークは日々キュンに生きていた。
寝返りをうつユアン。
はいはいをするユアン。
つかまり立ちをするユアン。
転んで頭を打たないように、リュック型の頭カバーを従者と縫った。
ユアンの為に羽をつけて天使にした。
おかげでほとんど無かった裁縫の腕が、かなり上達したのは言うまでもない。
よちよちしたお尻が振られて、鼻血ものに可愛い。
はじめデュークの熱狂を苦笑で見ていたジョコモも、ウィレムと共に今ではユアンに夢中だ。
こんなに愛されたユアンが、僻んだ悪役令息にならない!
はず。だ。
デュークは余計なフラグは少しでも折ろうと窓をみる。
学園に入学するまでに、折って折って折るのだ!
真夜中、湖の上にはぽっと灯がともる。
前世でもエンバーミングというものがあったが、母様の遺体は"ナントカ魔法"で綺麗なままらしい。
つまりあの納棺堂のなには、何代も前の爺さん婆さんの遺体もあるわけで。
その中に通うおやぢは、ある意味賞賛出来る。
その狂気とも言える一点集中な愛は、デュークの体にも脈々と流れてるようで、ちょっと気味悪い。
あれからおやぢはいっさい目を合わせない。
すれ違っても抜け殻のようにぼうっとしている。
冬の幽霊というやつで、正直面倒くさい。
しっかりせいやっ‼︎
と、揺さぶりたかったが、子育てのエネルギーが減るから我慢して耐えた。
そして、もう限界だ。
夜明け前。
紺から紫に色を変えた空は、向こうに紅蓮のオレンジ色を隠している。
ゆらゆらとした灯が、島から水面に滑り降りて、船着場へと向かってきた。
男の影が、ゆるゆると舟から降りる。
そのままゆるゆると、館へと向かった。
デュークは眠い目を擦りながらベッドから這い出ると、両頬を叩いて気合いを入れた。
公爵はふらふらと館に戻ってくる。
二階のプライベートフロアへと階段を登って来た時。
デュークは立ち塞がった。
こんな顔してたのか…。
と、腹の中で思った。
げっそりと窶れたその男は、まじゾンビだった。
無精髭と隈と生気のない目。
まだ夜明け前の廊下の灯は薄暗く点っている。
そこに立ち塞がった子供は、愛するシーレそっくりで、公爵は棒立ちになった。
常夜灯を反射してキラキラした髪が取り巻く顔は、眩しい程に整っている。
そしてエメラルドのような瞳が、真っ直ぐこっちを見ていた。
まるで断罪の天使が降臨したようだ。
「お久しぶりです。父様。」
自分が父親の顔を忘れてたように、こいつも俺がわからないだろう。
と、挨拶してみた。
すっごく驚いた顔をされたので、やっぱりなって思った。
「あなたが放ってたうちにユアンは大きくなりました。」
そう言うと、おやぢは訝しげに首を傾げた。
おいおい、ユアンって名前がわからないのか?
まじ最低。
「母様そっくりの顔で、にぃに♡と呼んでくれます。」
母様そっくりに反応して、おやぢはびくりとこっちをみた。
初めてはっきり目が合う。
「このまま育てば母様そっくりになります。
あなたのことは会ってもいないから、"知らないおじさん"って言うんでしょうね。」
母様の声色で"知らないおじさん"と言う。
おやぢの目が、瞬いた。
1
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
俺は完璧な君の唯一の欠点
一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。
そんな彼にも、唯一の欠点がある。
それは、平凡な俺に依存している事。
平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる