攻略対象者【D】は、重めの愛にへこたれない

たまとら

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攻略対象者【D】の戸惑い

12 D-癇癪を起こす

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「うじうじぐずぐずいつまでやってるんですか。
ご飯も食べず、寝ることもせず。
死ぬ気ですか。

言っときますけどね、死んでも母様は喜びませんよ。大事な子供をほっぽって何しとんじゃ馬鹿野郎!
って殴られるだけですからね。」

言ってるうちに涙が出てきた。
そりゃそうだよ。
デュークだって三歳児。
まだまだ大人が必要だ。

「親に見放された子供は、他の貴族に馬鹿にされるんですよ。
母様そっくりのユアンが、他の馬鹿にいぢめられるんですよ!
それでもいいんですかっ!」

おやぢは目を大きく見開いた。
やっと腐った脳みそに目の前の子供が自分とシーレの子供だって沁みたみたいだ。

遅いよ。

おまえなんか。
おまえなんか。

「もう知らない!
父様なんかどっかのおじさんだからね!
ユアンがどんなに可愛いか教えてあげないからねっ。
ユアンを見せてなんかやらないからねっ」


理路整然とああ言おうこう言おうと組み立ててたのに、三歳児の慟哭に引き摺られて支離滅裂に喚いていた。

へくへくとしゃくりあげながら思い切り喚く。



騒ぎを聞きつけた執事のウィレムがいつの間にか側にいて、地団駄を踏んでいるデュークを抱き上げた。

ウィレムの目が、呆然としている公爵を冷たく見返す。

「旦那様。後ほどお話がございます。」

ウィレムの低い声に、公爵はびくりと揺れた。




ウィレムはあやすように揺すり上げながら、デュークをベッドに連れて行った。

そっと毛布を掛けて頭を撫でる。

右から転がってきたユアンがぴったりくっついてきた。
そう、潰す心配が無くなってから、二人は子熊のようにくっついて寝ている。

赤ん坊のちょっと高い体温と鼓動が、呪文のように眠りへと連れて行く。
キリキリしていた心が、ゆっくり落ち着いていく。

……ごめんね。ウィレム。
この癇癪は八つ当たりだね。

公爵家のトップが放置していたから、長男が虐待しても誰も止められなかった。
そうやってるうちに、それが普通になっていった。

優しいウィレム。
その優しさを折ったのはゲームのデューク。

でも今は間違え無いからね。


そう思いながら、ユアンを抱きしめたままデュークはうとうとと眠りに沈んでいった。
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