6 / 49
できるならあの頃に
しおりを挟む
…たくしたち…こびます……
……じょうぶ、ぼくがは…
ーん、あれ…
身体がふわふわ浮いて揺れている。
目を開けるのもだるい。
ー私、馬車じゃなかったのかしら…
体の右側が暖かくて擦り寄ると、あの人の匂いがする。爽やかなそれでいてどこか甘い匂いー。
ー気持ちいい…
ぼんやりとした思考の中で、ユーリ様の端整な顔が見える。
なぜ抱きかかえられてるのか分からないけれど、このまま離して欲しくなくて、もっと近付きたくて、思わず彼のシャツを握ってしまう。
それに気付いたのかそれとも抱え直したのか、グッと力が入り、もっと密着する。
ー心地いい…
もしかしてこれまでのことは夢じゃないのかしらー。
マリー様のことは全てーー。
ー紹介するよ。
あの時の声が蘇り、はっきりと意識が戻る。
目の前に柔らかく笑っているあの人がいた。
「あ、ぅ…ゆーり、さま?」
「アンジェ起きた?大丈夫?馬車で気を失ったんだよ。もう家で今部屋に運んでいるところ」
「そ、そうなんですか…申し訳ございません、今降りますね」
気を失ってしまっていたのね…
最後に覚えているのは息苦しくて息苦しくて、このまま息ができなくなるのではないかという感覚だった。
思い出してしまうとまたその感覚が押し寄せてきそうで、首をさする
少し寝てたからか、気分も気持ちも幾分マシだった。
あの人は機嫌が良さそうに覗き込んできた。
「大丈夫だよアンジェは軽いから。それと?僕がアンジェを抱きしめたいだけだから、気にしないで」
ユーリ様が私の頭に頬をくっつける。
いつものスキンシップに力を抜いて、胸に頭を預ける。
この人は立場上、人に見られることが多いため、あまり外ではベタベタしない。
社交界では腕を組み腰に手を回すくらいの触れ合いだけど、本当はスキンシップが好きなお方で、2人きりの時は私を膝に座らせたり隣に座って頭を撫でたりして片時も離れなかった。
はしたないことかもしれなけれど、私もそれを心地よく思っていた。
甘やかされてドロドロに甘くされて、家族からのプレッシャーは、この人によって溶かされていた。
「軽すぎて、君を本当に抱き締めているか不安だよ」
おでこに軽くキスをされて、くすぐったくて目を細める。
この人の少しの言動でどうしようもなく心が動いてしまう。揺れた気持ちを整えようと、息を吐く。
その息も熱くなっていることが、恥ずかしくて頬を染める。
どうしようもなく優しくて、どうしようもなく酷い人。あのお方とお会いするまではこの人を迷うことなく愛していた。
私のことを真綿に包み込むように大切にしてくれて、それを全身に感じていて。慈しみあう愛情を築いていた。
ーあの頃に戻りたい、疑うことなく純粋に愛していた時に
知らなければ、今でもあの人に夢中だったのに。
泣きそうになって、目を瞑り、ただただ今は早く部屋についてほしくて力を抜いた。
……じょうぶ、ぼくがは…
ーん、あれ…
身体がふわふわ浮いて揺れている。
目を開けるのもだるい。
ー私、馬車じゃなかったのかしら…
体の右側が暖かくて擦り寄ると、あの人の匂いがする。爽やかなそれでいてどこか甘い匂いー。
ー気持ちいい…
ぼんやりとした思考の中で、ユーリ様の端整な顔が見える。
なぜ抱きかかえられてるのか分からないけれど、このまま離して欲しくなくて、もっと近付きたくて、思わず彼のシャツを握ってしまう。
それに気付いたのかそれとも抱え直したのか、グッと力が入り、もっと密着する。
ー心地いい…
もしかしてこれまでのことは夢じゃないのかしらー。
マリー様のことは全てーー。
ー紹介するよ。
あの時の声が蘇り、はっきりと意識が戻る。
目の前に柔らかく笑っているあの人がいた。
「あ、ぅ…ゆーり、さま?」
「アンジェ起きた?大丈夫?馬車で気を失ったんだよ。もう家で今部屋に運んでいるところ」
「そ、そうなんですか…申し訳ございません、今降りますね」
気を失ってしまっていたのね…
最後に覚えているのは息苦しくて息苦しくて、このまま息ができなくなるのではないかという感覚だった。
思い出してしまうとまたその感覚が押し寄せてきそうで、首をさする
少し寝てたからか、気分も気持ちも幾分マシだった。
あの人は機嫌が良さそうに覗き込んできた。
「大丈夫だよアンジェは軽いから。それと?僕がアンジェを抱きしめたいだけだから、気にしないで」
ユーリ様が私の頭に頬をくっつける。
いつものスキンシップに力を抜いて、胸に頭を預ける。
この人は立場上、人に見られることが多いため、あまり外ではベタベタしない。
社交界では腕を組み腰に手を回すくらいの触れ合いだけど、本当はスキンシップが好きなお方で、2人きりの時は私を膝に座らせたり隣に座って頭を撫でたりして片時も離れなかった。
はしたないことかもしれなけれど、私もそれを心地よく思っていた。
甘やかされてドロドロに甘くされて、家族からのプレッシャーは、この人によって溶かされていた。
「軽すぎて、君を本当に抱き締めているか不安だよ」
おでこに軽くキスをされて、くすぐったくて目を細める。
この人の少しの言動でどうしようもなく心が動いてしまう。揺れた気持ちを整えようと、息を吐く。
その息も熱くなっていることが、恥ずかしくて頬を染める。
どうしようもなく優しくて、どうしようもなく酷い人。あのお方とお会いするまではこの人を迷うことなく愛していた。
私のことを真綿に包み込むように大切にしてくれて、それを全身に感じていて。慈しみあう愛情を築いていた。
ーあの頃に戻りたい、疑うことなく純粋に愛していた時に
知らなければ、今でもあの人に夢中だったのに。
泣きそうになって、目を瞑り、ただただ今は早く部屋についてほしくて力を抜いた。
170
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~
銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。
自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。
そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。
テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。
その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!?
はたして、物語の結末は――?
幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路
今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。
すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。
ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。
それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。
そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ……
※短い……はず
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる