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寂しがり屋達のOne Night Carnival(後編)
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当日は関係者以外に気付かれぬよう、ギリギリまで私服かつ何食わぬ顔の合わせ技で過ごしていた。実を言うと、今回のライブはサプライズ。バンド演奏は愚か、小学生中心の発表会に中学生が登壇するという異例尽しだった。
二つ前の人形劇が終わり、その次のマジックが始まったところで、控室で着替えを始めた。もうこの辺りから緊張で手汗べっとり。
満を持して登壇した僕らに待っていたのは、意外な反応だった。黄色い歓声だ。
しかしながら次の瞬間、その違和感に気付き始める。
「わー!ごくせんだぁ!!」
そうだ。制服の下に派手なTシャツと着込んだことにより、リーゼントのかつらを除き衣装が完全に『ごくせん』だったのだ。
平成の時代に大ヒットしたドラマの一つである『ごくせん』。不良高校生を、極道一家の娘であるヤンクミ(教師)が更生させていくストーリー。当時そのブームの真っ只中だったのだ。
完全にヤンキー違いだ。
勘違いをされた僕らは、これから本当にOne Night Carnivalを演奏するのか不安でいっぱいだった。そして、いよいよ司会進行役に紹介される。
「中学生バンドによる、バンド演奏です!どうぞお楽しみください。」
僕らは手の震え、足の震えを必死で堪え、演奏を始める。一度始まってしまえば、あとは勢いである。練習通りに曲が進んでいく。しかし、ここでアクシデントが起こる。歌いながらキレッキレで踊る、直樹のリーゼントのタワシ部がFly away。毛糸でぐるぐる巻きのタワシだけ客席へダイブ。会場は大ウケだった。サングラスまで掛けた不良風衣装で格好をつけていた筈が、一気にコミックバンドのようになってしまった。慌てふためく直樹。その動揺は演奏組にまで伝染する。リズムがズレる、ギターソロが飛ぶ、、、。
観客の小学生は初めて見るバンドの生演奏に目を輝かせていたが、演奏はグダグダだった。
ライブ終了後、僕は先生に
「もうギターは弾かない。」
そう伝えた。すると先生は
「失敗は誰にでもある。プロだって失敗することもある。これからまた練習だな。」
優しく笑ってそう言ってくれた。
バンドを始めるまで、僕らは孤独だった。
学校という集団生活はあったが、一歩踏み出すと孤独だった。どこか味気なさと寂しさを抱えていた。そんな寂しがり屋達が演奏したOne Night Carnival。必死になって向き合ったOne Night Carnivalは、今も僕の中で鳴り続けている。
あれから16年、僕は今でもギターを弾いている。時々ライブもする。あの日々が無かったら、僕はもうとっくに音楽を止めていただろう。あの日から始まった音楽は、今も都会の片隅で鳴り続けている。
二つ前の人形劇が終わり、その次のマジックが始まったところで、控室で着替えを始めた。もうこの辺りから緊張で手汗べっとり。
満を持して登壇した僕らに待っていたのは、意外な反応だった。黄色い歓声だ。
しかしながら次の瞬間、その違和感に気付き始める。
「わー!ごくせんだぁ!!」
そうだ。制服の下に派手なTシャツと着込んだことにより、リーゼントのかつらを除き衣装が完全に『ごくせん』だったのだ。
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完全にヤンキー違いだ。
勘違いをされた僕らは、これから本当にOne Night Carnivalを演奏するのか不安でいっぱいだった。そして、いよいよ司会進行役に紹介される。
「中学生バンドによる、バンド演奏です!どうぞお楽しみください。」
僕らは手の震え、足の震えを必死で堪え、演奏を始める。一度始まってしまえば、あとは勢いである。練習通りに曲が進んでいく。しかし、ここでアクシデントが起こる。歌いながらキレッキレで踊る、直樹のリーゼントのタワシ部がFly away。毛糸でぐるぐる巻きのタワシだけ客席へダイブ。会場は大ウケだった。サングラスまで掛けた不良風衣装で格好をつけていた筈が、一気にコミックバンドのようになってしまった。慌てふためく直樹。その動揺は演奏組にまで伝染する。リズムがズレる、ギターソロが飛ぶ、、、。
観客の小学生は初めて見るバンドの生演奏に目を輝かせていたが、演奏はグダグダだった。
ライブ終了後、僕は先生に
「もうギターは弾かない。」
そう伝えた。すると先生は
「失敗は誰にでもある。プロだって失敗することもある。これからまた練習だな。」
優しく笑ってそう言ってくれた。
バンドを始めるまで、僕らは孤独だった。
学校という集団生活はあったが、一歩踏み出すと孤独だった。どこか味気なさと寂しさを抱えていた。そんな寂しがり屋達が演奏したOne Night Carnival。必死になって向き合ったOne Night Carnivalは、今も僕の中で鳴り続けている。
あれから16年、僕は今でもギターを弾いている。時々ライブもする。あの日々が無かったら、僕はもうとっくに音楽を止めていただろう。あの日から始まった音楽は、今も都会の片隅で鳴り続けている。
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