なんでもいい

榊 海獺(さかき らっこ)

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我が家の愛車は手のひらサイズ

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うちの親父は昔から車が好きだった。


僕がまだ幼かった頃、我が家には三台の車があった。親父の車、お袋の車、僕の車の三台。なぜ幼少期に自分の車があるのかって? 別に裕福な家庭に育った訳ではない。そう。車の正体はミニ四駆だ。

うちの親父は車が好きで、プラモデル好きだ。今思うと、親父がミニ四駆にハマるのは必然だったように思う。
きっかけはアニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』だった。完全にハマり虜になった僕は、親父にミニ四駆をせがんだ。
「運動会で頑張ったら買ってやるよ。」
無愛想な親父がぶっきらぼうに言ったその言葉に奮い立った僕は、決死の覚悟で運動会に挑んだ。もう、実力の120%は出ていたような気がする。

無事運動会が終わり、僕はミニ四駆を買って貰える日を、今か今かと待ち望んでいた。そんな僕に予期せぬ事態が襲う。
「ほら。買ってきたぞ。」
実際に店頭に買いに行くのを心待ちにしていた僕に、親父がミニ四駆を買ってきた。
まさか自分でマシンを選べないとは思ってもいなかった。僕が初めて手にしたミニ四駆は『ファイターマグナム』だった。当時は、アニメ『レッツ&ゴー』の全盛期。僕らの間では、やれマグナムだ、ソニックだ、トライダガーだ、アニメのメインキャラクターが使用しているマシンが人気で、僕もそちらのマシンが欲しかった。ソニックが欲しかった。それが、ファイターマグナムだ。(ファイターマグナムファンの皆様すいません。)それでもなんとか愛着を見出すべく努力した。その結果、周りにファイターマグナムを持っている友達が居ないことを、プラスに捉えるようになっていた。”これは僕だけのマシンだ。”なんて思って。
ちなみに僕がファイターマグナムを手にしたのと同時に、親父とお袋もミニ四駆を購入していた。親父はストラトベクターで、お袋はブーメランテンだった。


先日、家の掃除をしていたらお袋のブーメランテンが出てきた。よくよく見てみると、明らかに親父の手が加えられ、かなりの軽量化が施されていた。そりゃ速いわけだ。夫婦円満の秘訣はここにあったのかもしれない。


さて。実は今、再びミニ四駆ブームが来ている。僕と同世代の人間が大人になり、自由に使えるお金を資金に、各々のマシンを作り上げている。大会だって開催されているくらいだ。中には、自分の子どもと一緒に楽しんでいる人も居る。なんとも羨ましい限りだ。先日僕も一台ミニ四駆を購入してみた。今は便利なことに、モーターまでセットになった物が千円前後で販売されている。そのセットを購入し、帰宅後組み立てみる。少しずつ甦る記憶。手先が器用ではない為少々苦戦はしたが、なんとか組み上げることが出来た。久々に組み立てるミニ四駆はなかなか楽しかった。このことを知ったら、親父もやりたがるだろうか。こういった親孝行もアリかもしれないな。

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