なんでもいい

榊 海獺(さかき らっこ)

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Goodbye

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家から徒歩2分。家から1番近いコンビニだ。

僕がまだ幼い頃、そこは酒屋さんだった。よく父の買い物に付き合わされて足を運んだものだ。
「お菓子買ってやるから行くぞ。」
そう言って毎回連れていってくれるのはいいものの、酒屋さんにあるお菓子=おつまみなのは言うまでもない。僕の好きなお菓子はさきいかといか天になった。あと、これはお菓子とは絶対に呼べないのだが、缶詰の焼き鳥が好きだった。おっさんか。

僕が小学校に上がる頃だったか、酒屋さんがコンビニになった。フランチャイズってやつだ。○ーソンだ。運営は元の酒屋さんファミリーがメインで行う。僕らからしたら、扱い商品が増えただけでなんら変わりはなかった。強いて言うならば、僕の好きなお菓子はチョコマシュマロになった。

僕は小学2年生から野球を始めた訳だが、プロ野球チップスにどハマりした。週に何度も買いに行っていた。
そんなある日。親父が良からぬことを言い出す。
「コンビニに行くなら酒も買ってこいよ。」
当然反対した。子どもがお酒を買えないことなど、当時の僕でも知っていた。しかしながら、親父は一度言い出すと聞く耳を持たない。
「ダメ元で行ってこいよ。」
と言ってお金を渡してきた。渋々足を運び交渉をしたのだが、当然の解答が返ってきた。
「ごめんな。大人の人にしかお酒は売れないんだ。」
大変迷惑を掛けてしまった。

その後も、通ってきた児童館が近くにあったこともあり、度々お世話になった。遊戯王カードとかも買ったか。
僕が中学生になりバンドを始めてからは、児童館でライブイベントをする度に、アイスクリーム(箱入り)の差し入れをしてくれた。
「がんばってね!」
なんて言って。
もう、僕らの青春時代の想い出の地と呼んでもおかしくないくらい、がっつりお世話になった。

そんなコンビニが、今月いっぱいで営業を終了することになった。閉店だ。噂ではオーナーの奥さんが認知症の疑いがかかったとか。(あくまで噂レベルの話です。実際には違う理由かもしれません。)
僕は閉店が分かった後も何度か足を運んだ。すると、オーナーの奥さんがレジに立っている日があった。最後にちゃんと話をしたのが、4年前くらいだった。”認知症”の疑いがあると聞いた時点で、僕のことなど忘れてしまっていると思った。なので、僕はレジに品物を出す際に「お願いします。」と言った以外は無言だった。すると、、、
「今月でお店を締めることになったのよ。今までありがとうね。酒屋時代からだから、ずいぶん長いことお世話になったね。お仕事がんばってね。」

僕のことを覚えていてくれたのだ。その瞬間色んな想い出がフラッシュバックして、涙が出そうになったのは言うまでもない。
カップ焼きそばを買って、湯切りに失敗し豪快にそばをぶち撒けたユウが。凄い勢いで入店し、そのまますっ転んで膝に大怪我を負ったタクミが。当時発売して間もなかった、フライドポテトの魅力をいち早くキャッチし、児童館中に広めた大塚が。遊戯王カードでレアカードが当たり、飛び跳ねて喜んでた小山が。本当に色んな想い出が浮かんだ。
感謝してもしきれないな。


ちなみに、僕は週刊少年ジャンプを買いにあと2回は足を運ぶ。もし奥さんに遭遇したら、感謝の言葉の後でどんなリアクションをすればいいのだろうか。教えてほしい。




後日閉店の理由が業績の悪化であることが判明致しました。認知症の噂を流した張本人をとっ捕まえてやろうと調べたら、ウチの親父でした。キツく叱っておきました。すいません。
てか、俺の感動を返してくれ。笑
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