なんでもいい

榊 海獺(さかき らっこ)

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さらば!

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 四月上旬。我が家のアイドル的存在だった、愛犬の”ゆず”が旅立った。実に十四年間の命だった。

 ゆずは秋田犬で、元々は保護犬として保健所に居た。我が家では妹が産まれてからというもの、常に犬を飼っていた。最初が雑種の”のん”で、次にまた雑種の”チャッピー”。その次がミニチュアダックスの”チビ”で、そして、”ゆず”。
 ゆずはチャッピーが亡くなった後で、お袋が保健所から連れてきた。
「チャッピーに似てたから。」
 理由はそんな感じだったと思う。チャッピーは秋田犬とハスキーの雑種で、ゆずが秋田犬。見た目がそっくりだったのだ。

 ゆずは四歳で我が家にやってきた。その頃僕は実家を離れていたので、遊びに行った時に触れ合う程度だった。
「なるほど。確かにチャッピーに似てるな。」
 最初の頃はそんな風にしか思っていなかった。一緒に住んでるわけではないので、愛着もそこまで湧かなかった。

 その後数年が経過した頃、一ヶ月間だけお袋に代わり散歩に行った。妹にプリンターを借りに行くついでに触れ合っていたので、この頃にはそこそこ愛着が湧いていた。チビとゆずの二匹を連れ散歩へ。ゆずが走り出すと、チビが歩幅的に付いていけないので、チビを抱えて爆走した。今思うとなかなか面白い光景だったと思う。

 そして、三年前。お袋の入院することになり、一時的にゆずを預かることになった。
(直前でチビは旅立っていた。)
 仕事終わりと土日、晴れの日も雨の日も雪の日も台風の日も散歩した。幸い僕の家の近所には大きな公園があり、そこをのんびりと歩いた。途中一緒になって走ったりなんかしちゃって。テニスボールを買ってきて一緒に遊んだりもした。犬用のフレグランスを買ってみたり、専用のシャンプーを使ってお風呂に入れたり、今思うとなかなか可愛がっていたよね。

 そんなゆずが四月に旅立った。本当は妹の結婚式でリングドッグをするはずだったんだけど、三月末頃に体調が急変し、結婚式を待たずに旅立った。正確な病名は最後まで分からなかったが、恐らく肺癌+老衰ではないかとのことだった。

 保健所で殺処分寸前で我が家にやってきて約十年。当時の彼女からしたら、こんな未来想像していなかっただろう。幸せだったかな。多少なりとも幸せを感じてくれていたらいいな。



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