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Chapter9 : 決壊
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〈♥〉
朝、目が覚めると隣に裸の男の人の背中が見えた。慌てて頭の中を巻き戻す。昨夜は航とBlueで落ち合い、散々飲んだ挙句航が帰りたくないと言うので家に招いた。途中コンビニか何かでお酒とつまみを買って、ウチで飲み直したのまでは覚えている。ということは、今隣で寝息を立てて眠っているのは航だ。それは確定だ。でも、なんで航は裸なのだろう。暑くて脱いだのだろうか。そんな訳はないだろう。仮に暑くて脱いだのだとしたら、なぜ私も下着すら着けていないのだろう。
とりあえず、まず服を着ようと立ちあがろうとしたところで気付く。
「うわ。頭痛い。」
間違いなく二日酔いだ。あんなにアルコールを摂取したのだから無理もない。思わずそのままソファーに飛び込んでしまった。一糸纏わぬだらしない姿がソファーに沈む。
「とりあえず服着たら、バファリン飲もう。これはキツイや。」
そんな私と対照的に、航は気持ちよさそうに寝ている。なんだこれ。テレビはナイト・オン・ザ・プラネットの選択画面が映っているし、なんだこれ。ホント。何がどうなってるんだ。
とりあえず、下着とルームウェアを身に付けてキッチンへ。冷蔵庫から水のペットボトルを取り出しコップに注ぎ、一気に飲み干す。もう一度注いで、それを持ってリビングに戻る。鞄の中を漁って、なんとかバファリンを見つけた。そのうち2錠を口に放り込み、水で流し込む。
「あー。」
思わず声が漏れてしまった。飲み終わったバファリンのゴミをゴミ箱へ入れようとしたところで気付く。
「やっぱりか。やっちゃったか。」
ゴミ箱の淵に使用済みのコンドームがぶら下がっていた。これから目を覚ます航にどんな顔をすればいいのだろう。なんて声を掛ければいいのだろう。分からない。分からない。頭痛い。頭痛い。
〈♠〉
彼女がキッチンからハイボールの入ったグラス二つと、ハイボールの缶を持って戻ってきた。
「はい。おかわり。あと、氷入れて入りきらなかったハイボール。缶のまま持ってきちゃった。」
そう言って舌を出して戯けると、テーブルにグラスと350ml缶を並べて隣に戻った。ふと彼女に視線を向ける。なぜブラウスのボタンを4つも外しているのだろう。下着が丸見えになっている。目のやり場に困って、視線を画面に戻す。これはきっと何かの間違いだ。見なかったことにしようとした。
15分くらい経っただろうか。彼女が何かを思い出したかのように立ち上がった。
「ねぇ。電気消していい。」
「え。電気。なんで。」
「その方が映画館みたいになっていいかなって。」
「なるほど。そういうことか。うん。いいよ。」
「ありがとう。」
パチンと電気を消して隣に戻ってくる。これで視界の誘惑はある程度誤魔化せた。助かったな。暗闇の中でナイト・オン・ザ・プラネットだけが浮かび上がっている。
場面が変わり、口数の物凄く多い客が乗り込んできたシーンが訪れた。その時だった。
彼女が僕の肩にもたれかかってきた。
「どうしたの。」
声を掛けた僕の目をとろけるような目で見つめて彼女が言った。
「私酔っ払っちゃったみたい。」
初めてみる彼女の甘えるような表情。いつものクールな彼女の面影はもう何処にも無い。そして、もたれかかった衝撃で完全に肌けて下着が丸見えになってしまっている。
「航。」
彼女が僕の腕にしがみついてくる。胸元の二つ膨らみが僕の腕を捉える。下着越しで伝わってくる彼女の体温に、僕の鼓動は速度を上げた。彼女が離れぬよう体勢をキープしたまま、リモコンでテレビの音量を限界まで下げる。
「ねぇ。航。」
先程とは違い、彼女の声だけが部屋に浮かぶ。視線を感じ、顔を彼女の方へ向ける。
「小都子さん?」
そう聞き返した時には唇と唇が重なっていた。
「えへへ。奪っちゃった。航のファーストキス。」
戯けた素ぶりを見せ、微笑む彼女。
「もう何言ってるの。大丈夫? 横になる?」
「そうやってヤラシイこと考えて。」
「この状況で考えなかったら男じゃないでしょ。」
「あら。男らしい。そういうところ好きよ。航。」
耳を疑いたくなった。確かに彼女は今”好き”と言っていた。想いを寄せていた人から、僕が一番聞きたかった言葉を聞けるとは。人生初めての経験だ。この瞬間、僕はこの言葉を永遠にしたいと思った。酔いに任せた出まかせだったとしても。
「もう、こんなのいらない。」
彼女がよろけながらなんとか立ち上がると、徐にブラウスとスカートを脱ぎ捨てベッドに飛び込んだ。
「痛っ。何。」
胸元を覆った下着の金具がぶつかって痛かったらしい。
「もう、これもいらない。」
彼女が下着を脱ぎ始めたところで、僕はすかさず掛け布団を被せた。下着を脱ぎ終わったのか、掛け布団に包まり顔だけを出してこちらを向く。
「こっちこないの。」
掛け布団の端っこを掴み、必要以上に瞬きをしながら僕を誘う。
「もう。分かったよ。」
財布の中に入れっぱなしのままになっていた、前に敦から受け取ったコンドームを片手に彼女の元へ。
「何かあった時の為に持っとけよ。」
そうか。これが何かあった時なのか。
布団に入るや否や、僕達は掛け布団を被った。これで視界はゼロだ。暗順応すら追いつかないスピードで幾度となく唇を重ねた。もうファーストキスが遠い記憶のように感じる。
「ねぇ触って。」
そう言って彼女は僕の手を自分の胸元へ招いた。
「ひゃっ。冷たい。航の手冷たい。」
そう言って丸まる彼女が堪らなく愛おしかった。
初めて触れる女性の肌は、温かく柔らかかった。こうして僕達は夜の微睡へ堕ちていった。
朝、目が覚めると隣に裸の男の人の背中が見えた。慌てて頭の中を巻き戻す。昨夜は航とBlueで落ち合い、散々飲んだ挙句航が帰りたくないと言うので家に招いた。途中コンビニか何かでお酒とつまみを買って、ウチで飲み直したのまでは覚えている。ということは、今隣で寝息を立てて眠っているのは航だ。それは確定だ。でも、なんで航は裸なのだろう。暑くて脱いだのだろうか。そんな訳はないだろう。仮に暑くて脱いだのだとしたら、なぜ私も下着すら着けていないのだろう。
とりあえず、まず服を着ようと立ちあがろうとしたところで気付く。
「うわ。頭痛い。」
間違いなく二日酔いだ。あんなにアルコールを摂取したのだから無理もない。思わずそのままソファーに飛び込んでしまった。一糸纏わぬだらしない姿がソファーに沈む。
「とりあえず服着たら、バファリン飲もう。これはキツイや。」
そんな私と対照的に、航は気持ちよさそうに寝ている。なんだこれ。テレビはナイト・オン・ザ・プラネットの選択画面が映っているし、なんだこれ。ホント。何がどうなってるんだ。
とりあえず、下着とルームウェアを身に付けてキッチンへ。冷蔵庫から水のペットボトルを取り出しコップに注ぎ、一気に飲み干す。もう一度注いで、それを持ってリビングに戻る。鞄の中を漁って、なんとかバファリンを見つけた。そのうち2錠を口に放り込み、水で流し込む。
「あー。」
思わず声が漏れてしまった。飲み終わったバファリンのゴミをゴミ箱へ入れようとしたところで気付く。
「やっぱりか。やっちゃったか。」
ゴミ箱の淵に使用済みのコンドームがぶら下がっていた。これから目を覚ます航にどんな顔をすればいいのだろう。なんて声を掛ければいいのだろう。分からない。分からない。頭痛い。頭痛い。
〈♠〉
彼女がキッチンからハイボールの入ったグラス二つと、ハイボールの缶を持って戻ってきた。
「はい。おかわり。あと、氷入れて入りきらなかったハイボール。缶のまま持ってきちゃった。」
そう言って舌を出して戯けると、テーブルにグラスと350ml缶を並べて隣に戻った。ふと彼女に視線を向ける。なぜブラウスのボタンを4つも外しているのだろう。下着が丸見えになっている。目のやり場に困って、視線を画面に戻す。これはきっと何かの間違いだ。見なかったことにしようとした。
15分くらい経っただろうか。彼女が何かを思い出したかのように立ち上がった。
「ねぇ。電気消していい。」
「え。電気。なんで。」
「その方が映画館みたいになっていいかなって。」
「なるほど。そういうことか。うん。いいよ。」
「ありがとう。」
パチンと電気を消して隣に戻ってくる。これで視界の誘惑はある程度誤魔化せた。助かったな。暗闇の中でナイト・オン・ザ・プラネットだけが浮かび上がっている。
場面が変わり、口数の物凄く多い客が乗り込んできたシーンが訪れた。その時だった。
彼女が僕の肩にもたれかかってきた。
「どうしたの。」
声を掛けた僕の目をとろけるような目で見つめて彼女が言った。
「私酔っ払っちゃったみたい。」
初めてみる彼女の甘えるような表情。いつものクールな彼女の面影はもう何処にも無い。そして、もたれかかった衝撃で完全に肌けて下着が丸見えになってしまっている。
「航。」
彼女が僕の腕にしがみついてくる。胸元の二つ膨らみが僕の腕を捉える。下着越しで伝わってくる彼女の体温に、僕の鼓動は速度を上げた。彼女が離れぬよう体勢をキープしたまま、リモコンでテレビの音量を限界まで下げる。
「ねぇ。航。」
先程とは違い、彼女の声だけが部屋に浮かぶ。視線を感じ、顔を彼女の方へ向ける。
「小都子さん?」
そう聞き返した時には唇と唇が重なっていた。
「えへへ。奪っちゃった。航のファーストキス。」
戯けた素ぶりを見せ、微笑む彼女。
「もう何言ってるの。大丈夫? 横になる?」
「そうやってヤラシイこと考えて。」
「この状況で考えなかったら男じゃないでしょ。」
「あら。男らしい。そういうところ好きよ。航。」
耳を疑いたくなった。確かに彼女は今”好き”と言っていた。想いを寄せていた人から、僕が一番聞きたかった言葉を聞けるとは。人生初めての経験だ。この瞬間、僕はこの言葉を永遠にしたいと思った。酔いに任せた出まかせだったとしても。
「もう、こんなのいらない。」
彼女がよろけながらなんとか立ち上がると、徐にブラウスとスカートを脱ぎ捨てベッドに飛び込んだ。
「痛っ。何。」
胸元を覆った下着の金具がぶつかって痛かったらしい。
「もう、これもいらない。」
彼女が下着を脱ぎ始めたところで、僕はすかさず掛け布団を被せた。下着を脱ぎ終わったのか、掛け布団に包まり顔だけを出してこちらを向く。
「こっちこないの。」
掛け布団の端っこを掴み、必要以上に瞬きをしながら僕を誘う。
「もう。分かったよ。」
財布の中に入れっぱなしのままになっていた、前に敦から受け取ったコンドームを片手に彼女の元へ。
「何かあった時の為に持っとけよ。」
そうか。これが何かあった時なのか。
布団に入るや否や、僕達は掛け布団を被った。これで視界はゼロだ。暗順応すら追いつかないスピードで幾度となく唇を重ねた。もうファーストキスが遠い記憶のように感じる。
「ねぇ触って。」
そう言って彼女は僕の手を自分の胸元へ招いた。
「ひゃっ。冷たい。航の手冷たい。」
そう言って丸まる彼女が堪らなく愛おしかった。
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